第305話 ホロスコープ星国 ルシス編 パート17
「あなたがルシスさんなのですね」
「そうです。私が監禁されているルシスです」
私は笑顔で答えた。
「監禁されているような環境には見えませんが、なぜ、この豪邸に監禁されているのですか?」
ヴァンピーは、ドラキュンとまともに話していないので、現状を把握しようと思った。
「この町へ不法侵入未遂と、ドラキュンさんへの暴行容疑で監禁されました」
私は、悲痛な表情で訴える。
「どうして、不法侵入しようとしたのですか」
ヴァンピーは優しく問いかける。
「ゲリちゃんが身分証を持っていなかったのです。なので、小柄な狼に変身して、町へ侵入しようとしたのです」
私は真実を述べる。
「そのような事情があったのですね。でも、きちんと事情を説明すれば、町に入る許可が出たと思います」
ヴァンピーは侵入理由よりも、狼変身できることのが気になっているが、とりあえず、不法侵入の件の話を進める。
「ごめんなさい。反省はしています。それに、その件はドラキュンさんからは許しを得ることができました」
「反省しているのなら、私から何も言うことはありません。それに、ドラキュンから許しを得ているなら問題もないです。しかし、許しをもらったのに、なぜ?ドラキュンに暴行を働いたのですか?」
「あれは、事故なのです。ゲリちゃんは喜びのあまりに私に抱きつこうとしたのです。しかし、ゲリちゃんは、自分の力をコントロールすることができないのです。なので、私はゲリちゃんの抱きつきを咄嗟に避けてしまいました。私が避けたので、側に居たドラキュンさんに抱きついてしまったのです。その結果、ドラキュンさんはゲリちゃんのベアハッグの餌食になってしまい意識を失いました。決して、ドラキュンさんを襲ったのではありません」
私は必死に説明をした。
「わかりました。ドラキュンの部下が誤解をして、豪邸に監禁したと言うことで、よろしいでしょうか?」
「はい」
「私が、あなた方の身元保証人になります。なので、町に入る正式な許可を得ることができると思います。そして、不運な事故でのドラキュンへ暴行は、ドラキュンが何も訴えてはいないので、罪に問われることはありません。すぐに、この豪邸から釈放できるように手続きをしてきます」
ヴァンピーはゲリが狼に変身できること、そして、豪邸を一夜にして作り上げた私の正体のことを調べたかったが、まずは、私とゲリの釈放を優先した。
「ありがとうございます」
私は素直にお礼を述べた。
ヴァンピーは、すぐにドラキュンの屋敷に戻った。
「極楽ですわ」
全身エステを受けているドラキュンが至福の笑みを浮かべている。
「ドラキュン、ルシスさんから話を聞いてきたわよ。すぐにルシスさん達を釈放をするのよ」
「えっ!ルシスさんを拘束した覚えはないわ。部下が勝手に拘束したのよ」
ドラキュンは、ゲリのベアハッグを喰らっていたので、後のことは、何も把握していない。
「それなら、釈放でいいよね」
「もちろんですわ。それと、ウルフキングを捜索するのは危険だと伝えておいてね」
「どういうことなの?」
ヴァンピーはゲリがウルフキングの妹であることを知らない。
「ゲリさんは、ウルフキングの妹さんみたいなのよ。そして、ウルフキングを探しに、この町に立ち寄ったみたいなの」
「そうなのね。それで、狼に変身することができるのね」
ヴァンピーは納得した。
「ウルフキングことフレキさんは、王の森へ向かったと思うのよ。ラードーンが支配する王の森へ行くのは危険だから、私は、王の森へ行くのを反対したのですわ」
ドラキュンは私たちのことを心配しているのである。
「ウルフキング・・・フレキ・・・フェニちゃんが話していた、一緒に旅をしていた女性のことね」
ヴァンピーはフェニからフレキのことを聞かされている。
「ルシスさんは、何者なのかしら?」
ヴァンピーがドラキュンに尋ねる。
「私も知らないわ。しかし、ただの亜人ではないと思うわ。あの可愛さは魔王級だと私は睨んでいるのよ」
ドラキュンの視点はあくまで可愛さ重視なのである。
「そうね。あなたの意見は参考として受け止めておくわ」
これ以上ドラキュンと話しても無駄と感じたヴァンピーは、再び私が監禁されている豪邸へ向かった。
「ゲリちゃん、お食事にしましょうよ」
「うん」
私は豪華な食堂に料理を用意した。今日の昼ごはんは、チーズインハンバーグにポテトフライを添えた簡単な料理である。しかし、この世界では食べることができない料理なのであった。
「おいしそうなのだぁ」
ゲリは目を爛々と輝かせてチーズインハンバーグを見ている。
「どうぞ召し上がってください」
「いただきまーす」
『ドンドン・ドンドン』
ドアをノックする音がした。私は監視モニターで玄関の前を確認した。ドアを叩いているのがヴァンピーだと分かったので、ドアの鍵を解除した。
「ルシスさん、入るわよ」
ヴァンピーは、一声かけて豪邸に入ってきた。
「ヴァンピーさん、私たちは、今からお昼ご飯を食べるのです。なので、用事があるのなら、食事の後にしてもらってもいいですか?」
「いいわよ。それにしても、すごくいい匂いがするのね」
バンバーグの風味がヴァンピーの食欲を誘い込む。
「ヴァンピーさんも一緒に食べますか?」
「いいのかしら?」
「はい。たくさんあるので問題はありません」
私は収納ボックスから、ヴァンピーの分のチーズインハンバーグを取り出したのであった。
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