第45話 王都パート1
翌朝、私たちはブラカリの町を出た。目指すは王都のジンジャーである。王都への道のりは、特に危険はない。ブラカリの町で、魔獣除けの魔石も購入したので魔獣と遭遇することなく、日が暮れる頃には、無事に王都に着くことができたのである。
王都ジンジャーへ入る門は行列ができている。王都を目指すものは多いのだろう。しかし、私たちは伯爵様の娘の護衛なので、別の門から入ることができた。それは貴族専用通路である。
「亜人の子がいるのか・・・王都では気をつけた方がいいぞ。パースリの町の件で、一部の者は、亜人などの他種族へのあたりが強くなっている。特に教会地区には行かない方がよい」
門兵が忠告してくれた。
「ご忠告ありがとうございます」
私たちは、王都ジンジャーへ入ると、アメリア様と別れて宿屋へと向かった。
「今日はもう遅いので、明日もでも冒険者ギルドに行きましょう」
「そうだな。今日はゆっくりと休むとするか」
「はい。そうですね」
翌朝、私が目を覚ますと、もうすでにみんなは起きていた。
「ルシス、起きたのか」
「おはようございます。トールお姉ちゃん、早いですね。いつもなら、まだ寝ているのに」
「今日は特別な日だからな」
「そうですよ、ルシスちゃん。私もなかなか眠れなかったわ」
「そうなんですね」
みんなは緊張しているみたいだ。伯爵夫人からの推薦状はあるが、実際にCランク冒険者になれるかはわからない。しかし、Cランク冒険者になることは冒険者として憧れである。
Cランク冒険者になると、まず冒険者証がゴールドになる。そして、冒険者証に星が3つ付くのである。それが、C3冒険者の証である。星が2つになると、C2冒険者、1つになるとC1冒険者である。この国にはCランク冒険者は、5組しかいないらしい。
「出かけましょう」
ロキさんが静かに言った。
「ああ・・・」
私たちは冒険者ギルドへ向かった。
王都の冒険者ギルドは、かなり大きな作りになっている。そして、すぐそばには商業ギルドも並んでいる。
「ついに来ましたね
「ああ」
「あの時は、ひどい扱いだったよね」
「そうだな」
「今もあの時と変わらないと思うから、気を引き締めて行きましょう」
いつになく、真剣な眼差しのトールさん、以前に何かがあったのだろうか。
私たちは、冒険者ギルドに入った。冒険者ギルドに入ると大きなホールになっていて、中にはたくさんの冒険者がいる。私たちは奥にある受付に向かった。
「よそ者が、何しにきた」
1人の冒険者が絡んできた・・・が無視して受付に向かった。
「おい、亜人もいるじゃないか。ここから出ていけ」
周りの冒険者たちも騒ぎ出した。
「よそ者だけじゃなく、亜人もいるのか」
「出ていけ」
「ギルドを汚すな」
私たちは、罵声を浴びながらも受付へ向かった。
「ギルドマスターに、この推薦状を渡して欲しい」
ロキさんは、怒りを抑えながら受付の男性に推薦状を渡した。
「ここは王都のギルドである。よそ者が持っていきた推薦状などギルドマスターに渡すことはできないわ」
「これは、ディーバ伯爵夫人の推薦状です。それでも、渡してもらえないのですか?」
「よそ者に、エルフ、亜人・・そんな冒険者パーティーに対応するつもりはない。すぐに立ち去れ!」
「帰れー」
「王都に入ってくるな」
周りの冒険者がさらに、騒がしくなる。
「ドーーーーン」
トールさんが激しく受付のテーブルを叩いた。受付の男性はビックリして腰をぬかす。
「早く、ギルドマスターを呼べ」
周りの冒険者は、トールさん迫力に負けて静かになる。
「騒がしいね。何かあったのかしら」
「フレイ様、このよそ者が推薦状をフレイ様に渡せと暴れています」
「その推薦状を見せてもらいましょう」
「フレイ様、よそ者が持って来た推薦状など相手にする必要ありません」
「お前は私に命令するのか」
「いえそれは・・・」
受付の男性は渋々、ギルドマスターのフレイに推薦状を渡した。
「ほーCランク冒険者への推薦状ですか!」
「よそ者が、Cランクだと・・」
「そんなことは、認めるな」
また、冒険者たちが騒がしくなってきた。
「ギルマス、そいつらをCランク冒険者に任命するのか?」
少し小柄な男性がギルマスに話しかけた。
「そうですね、この推薦状を読む限りでは、実績は問題ないと思います」
「どんな実績があるんだ」
「キマイラの討伐、パースリの町の解放、そしてその時には、ゴブリンキングを倒しているわ。それにオークパレードを殲滅し伯爵の娘さんを助けているわ」
「それは、本当なのか」
「ラディッシュの町のギルマスからの推薦状なので間違いはないはずです」
「しかし、よそ者に、エルフ・亜人のパーティーだ。王都でのCランクは認めないぞ」
「決めるのは私の権限よ」
「周りを見ろよ誰も納得してないぜ」
「そうだ、そうだ」
「そんな実績は嘘に決まっている」
「俺たちは騙されないぞ」
「亜人は帰れ」
「出ていけ」
「しかし、この者たちは、パースリの町・キャベッジの町・ラディッシュの町を救っている。君たち冒険者より、この国に貢献しているではありませんか」
冒険者たちは、おとなしくなる。
「ほんとに、あいつらに、そんな実力があるのか」
「なら、どうやったら納得するのですか」
「簡単なことだ。俺ら確かめてやる。だからここの闘技場で俺たちと戦え」
「ラスパの皆さんはどうしますか」
「望むとこだ」
「威勢がいいな。俺が誰だか知っているのか」
「金玉の鳥のフンだろ」
「殺してやるぞ」
金玉とは金烏玉兎というパーティーのことである。金玉はC1冒険者のパーティーであり、王都最強とも言われている。しかし、最強なのはリーダーのソールと仲間のマーニの2人の女性である。このパーティーは、この2人が固定メンバーであとのメンバーは助っ人として加入している。今の金玉のメンバーは先程の男のバッカスとゾーイという女性らしい。
「バッカス、よそ者ごときにバカにされて情けないわ」
「うるせぇー、ゾーイ。俺1人で叩きのめしてやる」
「油断はダメよ。金玉のメンバーとして、負けは許されないからね」
「ああ、わかっている」
「双方とも決闘を認めたので決闘を開催しましょう。決闘の方式は、3対3のチーム戦で行います。どちらかの冒険者2名が戦闘不能、または、降参したら決闘は終了です。また、危険と感じたら、ギルマス権限で決闘は中止します」
「わかりました」
「わかったぜ」
「それでは、1時間後に闘技場に来てください」
「やっぱり、王都の冒険者の邪魔が入りましたね」
「ああ、そうだな。簡単にはCランクには上がれないとはわかっていたが・・」
「勝てそうにないのですか?」
「ああ、難しいな。もし、ソールとマーニの2人が出てきたら、俺らでは勝てないだろう」
「あのバッカスはかなりの強敵です。バッカスは神の子と言われる生まれながらに神から能力を授かってる能力者です。詳しい能力は知りませんが、バッカスに近づくと戦闘不能になるらしいです。そして、ゾーイという女性は支援魔法のスペシャリストです。誰が出てきても勝ち目は低いと思うわ」
「諦めるのですか」
「バカを言うな。絶対に勝ってやる。それに、自分の実力を試すいい機会だ」
「そうだねトール。私たちがどれだけ強くなったか、証明する時がきましたね」
「私も参加したいです」
「そうだな。それなら、俺とロキそしてルシスで参戦しよう」
「わーい」
「ポロン悪いな」
「よいですわ。私はみなさんの応援していますわ」
「悪いがルシス、今回は俺たちへのスキルアップの支援魔法はなしでいくぜ。自分の実力を試したいからな」
「はい、わかりました。私は相手の支援魔法を防ぐことに努めます」
「頼んだぞ」
私たちは作戦を練り闘技場に向かった・・・
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