第437話 スカンディナビア帝国編 パート25


 「ジャイアント様、落ち着いてください。冒険者達が私たちの仲間割れを誘発しているのだと思います」



 ゴリアテは必死に叫ぶ。



 「脳筋デクの棒には何を言っても無駄です。魚を食べないから人の話もまともに聞き入れることができないのです」



 小ルシス2号は調子に乗ってジャイアントを煽る。



 「シバイ・・・お前はそんなふうに俺を思っていたのだな」



 シバイは、ジャイアントに殴られた顔は少しずつ再生しているが、まだ左目から上は砕けて緑の血が吹き出している。



 「私は何も言っていません」


 「俺が本気で殴ればお前など再生できないくらいに粉々にできるのだぞ!それをわかって言っているのだな」


 「だから・・・私は・・」


 「やれるものならやってみなさいよ。カルシウム不足の唐変木のパンチなど痛くも痒くもないわよ」


 「カルシウム不足で何が悪いのだ!!!」



 冷静さを失ったジャイアントの耳にシバイの言葉は届かずに、小ルシス2号の煽り言葉しか耳に入ってこない。ジャイアントは拳を強くに握りしめ、右腕に全体重を乗せて、渾身の右ストレートは放つ。15mのジャイアントが、垂直に全体重を乗せて繰り出す右ストレートは、巨大な隕石が空から落ちてきたかのような莫大な破壊力を持っている。なので、ジャイアントの垂直ストレートパンチを喰らった者は肉片一つも残らないくらいに砕け散るのである。



 「うわぁぁーーー」



 シバイは断末魔のような悲鳴をあげた。



 『グチャ』



 ジャイアントの垂直ストレートパンチを喰らったシバイは、悍ましい音を立てて全身が砕け散った。シバイが居た場所にはヘドロのような緑の液体しか残っていない。ここまで砕けてしまうと再生は不可能なのである。



 「仲間を殺すなんて野蛮です!食べ物を大事にしないから仲間も大事にしないのですね」


 「黙れ!俺に口出しするやつは誰であろうと許さんぞ」


 「逃げるぞ!イシビベノブ」



 ジャイアントに何を言っても無駄だと感じたゴリアテは逃げることにした。しかし、イシビベノブの上半身はまだ完全に再生できていないので頭がない状態である。でも、逃げないと確実に殺されると悟ったイシビベノブは、顔のない状態で無我夢中で走って逃げたのである。


 顔のないイシビベノブは、逃げる方向が分からずにジャンアントに右足に激しくぶつかった。



 「俺に向かってくるとはいい根性だな!でも、ゴリアテのように逃げるのが正解だぞ」


 

 ジャイアントは、左足を大きく上げて勢いよくイシビベノブを踏み潰した。



 『グチャ』



 「ゴリアテ、俺から逃げれると思っているのか?」



 ゴリアテは、遠くでイシビベノブが踏み潰される悍ましい音が聞こえたが、振り返らずに必死に逃げた。



 「やはりティターン様の指示に従えばよかったのだ。ジャイアントに付いたのは間違いだった・・・」



 ゴリアテは後悔していた。ゴリアテは、元々は人界で平穏に暮らす派閥に所属していた。しかし、ジャイアントにそそのかされて、ジャイアントに協力をしたのである。そして、ティターンは人界で平穏に暮らす派閥のリーダーである。


 ゴリアテは、大きな地鳴りをあげながら一心不乱に逃げた。ジャイアントから逃げ切るのは不可能だと思っていたが、何もせずに殺されるくらいなら、僅かな希望を抱き走って逃げる方を選んだのである。



 「ホップ・ステップ・ジャンプ」



 と掛け声を上げながらジャイアントは三段跳びをして、一瞬んでゴリアテに追いつき、そのままゴリアテを両足で踏み潰した。



 『グチャ』



 「使えない奴らだったぜ。また、別の巨人をスカウトしないとな」



 ジャイアントは、非常にわがままで自己中心的だったので、ジャイアントの派閥に入る者はほとんどいないのであった。しかし、ジャイアントの強引な勧誘や甘ーい言葉に騙されて、たまにジャイアントの派閥に入る者いるが、大抵はジャンアントの自己中心的なやり方に嫌気がさして逃げるのである。



 「あーあ。仲間を全員殺したのですか?信じられません」


 「誰だ!まだ誰かいるのか!」



 ジャイアントは周りを見渡すが誰もいない。



 「幻聴か・・・」


 「ここですよ。あなたの目の前にいてますよ」


 

 ジャイアントは注意深く周りを見渡した。



 「誰もいない・・・」


 「居てますよ。あなたの鼻の上にいます」


 「鼻の上だと・・・」



 ジャイアントは鼻に何か付いてないか鼻を指で擦り付ける。



 『グチャ』



 「何もないではないか」



 ジャイアントは、首を傾げて考え込む。



 「声はするがどこにもいない。どういうことだ・・・」



 ジャイアントは気づいていない。鼻を指で擦った時に小ルシス2号を倒してことを。小ルシス2号は悍ましい音を立てて潰れたのだが、あまりにも小さいのでジャイアントは全く気遣いないのである。




 「ルシスお姉様。ただいまです」



 小ルシス2号は私に魔力をもらって復活した。



 「勝手に動いてはダメと言ってるでしょ!」


 「もう少しで、脆弱のっぽの魚嫌いを克服させることできたのです。なので、私にもう一度チャンスをください」



 小ルシス2号は私の話など全く聞いていない。



 「ダメです!巨人の相手は後でします。まずはソイビーンの町へ行くのです」



 私は少し強めのトーンで小ルシス2号を注意した。



 「許可をいただきありがとうございます。では、行ってきます!」


 

 私の話を全く聞く耳を持たない小ルシス2号は、ジャイアントのいる方へ急いで急下降した。



 「2号ちゃん!待つのよ」



 私は慌てて小ルシス2号を追いかけたのである。

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