第438話 スカンディナビア帝国編 パート26
「ルシスお姉様!離してください。全て私に任せてくださると、さっきおっしゃられたではないですか?」
「そんなこと言ってません!少し待つように言ったのです」
「そうでしたか・・・てっきり私は全てを任されたのだと勘違いしていました。はやとちりをして申し訳ありません」
「わかってくれたらいいのです」
「では、次こそはデクキングを倒してきます」
結局は私の話を全く聞かずにジャイアントところへ小ルシス2号は行ってしまった。私は、小ルシス2号を止めるのを諦めて、私もジャイアントのところへ向かうことにした。
「魚不足のイライラ大王!裸の王様の気分はどんな気持ちですか?」
「誰だ!俺の悪口を言うのは」
ジャイアントは辺りを見渡すが、小ルシス2号を見つけることができない。
「2号ちゃん!待つのよーー」
「お前かぁーーー」
ジャイアントは、私を見て今までの悪口の犯人だと断定した。
「そうよ!やっと私の偉大なる姿を確認することができたのですね。全然気づいてくれないので、悪いのは頭だけでなく目も悪いのだと思っていました」
と小ルシス2号は言った。小ルシス2号は、やっとジャイアントが自分に気づいてくれたと勘違いをしている。
「お前のせいで俺は大事な仲間を3人も失ってしまったのだ。あいつらの仇をとらせてもらうぞ」
ジャイアントは、自分の勘違いで殺してしまった3人の巨人を私のせいにした。せめて、私じゃなくて小ルシス2号のせいにして欲しいと私は思った。
「私は、拳での戦い以外にも頭脳戦も得意としているのです。私の天才的な策略にハマって死んでしまった3人の巨人には申し訳ないことをしました。だから、あなたの仇打つは受けて立つことにします。私を倒して3人の無念を晴らせるといいですね。でも、あなたの実力で私に勝てると思っているのですか?私も舐められたものです・・・」
小ルシス2号は、遠くを見つめながら自分のせいで亡くなった3人の巨人のことを思い感慨にふけっている。しかし、小ルシス2号の姿はジャイアントには見えていない。全ての発言は、私が発言したと思われている。
「言いたいことはそれだけか・・・俺をここまで怒らせたのはお前が初めてだ。小さいガキだからといって容赦はしないぞ」
ジャイアントの体からは、怒りのあまりにたくさんの湯気が出てきている。ジャイアントの出す湯気によりあたりの温度は上昇していく。
「私は逆にあなた如きに本気を出す気にもなりません。片手・・・いや、小指一本であなたの心臓を突き刺してあげます。それくらいのハンディがあっても、あなたが私に勝つ可能性はゼロです」
小ルシス2号は、右手を高らかにあげて小指を突き出した。しかし、その姿を誰も見てはいない。
「えっ、私は小指で戦わないといけないの?!?」
私は小ルシス2号の無茶振りに、慌てて声を発してしまった。
小ルシス2号の発言イコール私の発言と誤解されているので、小ルシス2号の発言通りに私は動かないといけない。
「もう黙れ!これ以上俺を怒らせるとこの世界ごと破壊するぞ」
ジャイアントは、拳を強く握りしめて地面を殴りつけた。地面は1kmほどの亀裂が入って大地が割れた。
「自然を破壊しないでください」
私は地面に降りて、地面を手のひらでポンポン叩いた。すると亀裂の入った地面は瞬時に元に戻る。
「環境破壊はダメですよ」
私は再度ジャイアントを注意した。
「うるさい!」
ジャイアントは両手を握って、ハンマーのように両腕を振り上げて、全体重を乗せて両腕を振り落とした。
「え・・・」
私は、ジャイアントの拳を左腕を上げて小指一つで受け止めた。
「思ったよりもパワーがないのですね」
私はほくそ笑む。
「こんちきしょうーー!こんちきしょーー!」
ジャイアントは、さらに両腕を上げ何度も何度も私の脳天目掛けて、巨大な拳を振り下ろすが、私は全て小指で受け止めた。
「それでは2号ちゃんが言った通りに、小指であなたの心臓を貫きますね」
「やめてください」
「えっ」
「やめてください。助けてください」
空から大粒の雨が降り注いできたと思ったら、それはジャイアントの涙であった。ジャイアントは私との力の差を見せつけられて、命の危険を感じたみたいである。
「あなたはこれから何をする予定だったのですか?」
私はジャイアントの目的を確認する。
「ヴァリに頼まれてソイビーンの町にいるカレンという女を殺害する予定でした」
「私は、そのカレン様の安否を確認するためにソイビーンの町へ向かっているのです。あなたはそれでもカレン様の殺害をするのですか?」
「滅相もありません。私は今すぐにでも祖国へ帰らせてもらいます」
「祖国へ帰れらすわけにはいきません。あなたはヴァリと共謀して、スカンディナビア帝国でクーデターを企てましたよね。なんの罪を償わずにあなただけ逃げるのですか?」
「私はヴァリにそそのかされて無理矢理に協力させられたのです。なので、私も被害者なのです」
「嘘をつくな!このポンコツデクの棒。お前が主犯なのはわかっているのです。私がおとなしくしているからといって舐めた態度を取るとはいい根性をしていますね。あなたに生きる資格はありません。今すぐに仲間の元へ送ってあげます」
と小ルシス2号が言った。
「ごめんなさい。私がビューレイストとヴァリを騙して、スカンディナビア帝国を乗っ取ろうとしたのです。人界で領土を拡大するには、人間を騙して利用するのが一番だと思っていたのです。嘘をついて申し訳ありません。どうか・・・どうか・・・命だけはお許しください」
ジャイアントは土下座をして、頭を地面に擦り付けて何度も何度も頭を下げる。
「悪党は決まってそのようなセリフを言うのです。あなたは、仲間が助けを求めた時に助けてあげたのですか?いえ、あなたは仲間の話に耳を傾けることなく殺しましたね。なので、私もあなたの話に耳を傾けるつもりはありません。あの世で仲間に謝るのです。それがあなたの使命です!」
『ヘブン・ヘル・デスキラーパンチ』
小ルシス2号は、ジャイアントを許すことはできなかった。小ルシス2号は両腕の拳をグルグルと回しながら、土下座をしているジャイアントに向かって突撃する。
しかし、ジャンアントが頭を上げた時、小ルシス2号はジャイアントの後頭部にぶつかって砕け散ってしまった。
『グチャ』
「2号ちゃん・・・」
私は悲しいため息をついた。
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