第439話 スカンディナビア帝国編 パート27
「申し訳ありません。私の少しの油断がカルシウムヘタレ野郎にチャンスを与えてしまったみたいです」
小ルシス2号は私に魔力をもらって復活をした。
「2号ちゃん、後は私に任せてください」
「わかりました。しかし、失礼を承知で私の考えを述べてもよろしいでしょうか?」
「いいわよ」
「あの嘘つきチキン野郎は、きちんと処罰すべきだと思います。自己保身の責任逃れの発言しかしない者に救いの手を差し伸べるべきではありません。あいつは仲間の意見を聞かずに、仲間を殺した大罪人です。それ相応の罰が必要だと思います」
小ルシス2号の目頭が炎のように燃えていた。よほどジャイアントを許したくないのであろう。しかし、ジャイアントが仲間を殺した理由の発端は小ルシス2号にあることは全く理解はしていないのであろう。
私はすぐにでもジャイアントを殺すことはできる。しかし、命乞いをしている相手を一方的に殺してしまうことは私にはできなかった。
「2号ちゃん、あなたの意見はもっともだと思います。しかし、私は命乞いをしている相手を殺すことはできません。仲間を殺した罪は巨人族の法に準して罰せられるべきだと思うので、一旦異空間に閉じ込めておきます」
「俺はどうなるのだ・・・」
ジャイアントは大粒の涙を流して、自分の行く末を心配している。
「あなたはとりあえず異空間に閉じ込めておきます。後で巨人族の国へ連れて行き、あなたの処分を考えてもらいます」
「俺を殺さないのか?」
「はい。私は無抵抗の相手を殺すようなことはしません。しかし、少しでも抵抗するのであれば容赦は致しません」
「何も抵抗はしません。なので、命だけは助けてください」
ジャイアントは土下座をしながら大きく両手を上げて、無抵抗である意思を示した。
『ディメンション』
上空から黒い大きな手が現れてジャイアントを掴んだ。ジャイアントは恐怖のあまりブルブルと震えているが、抵抗はせずに大人しくしている。
「異空間で、あなたが今まで犯した罪を思い返して反省するのです。あなたの反省の態度により、あなたの今後の人生が決まるでしょう」
「わかりました」
大きな黒い手はジャンイアンと掴んでそのまま闇の中へ消えていった。
「これで、クーデターに加担した巨人族の処理は終わりました。後はソイビーンの町へ行ってカレン様の安否を確認するだけです」
「はい。ルシスお姉様。急いでソイビーンの町へ向かいましょう」
私は小ルシス2号を肩に乗せて、急いでソイビーンの町へ飛んでいった。
数時間後、日も沈みかけてオレンジ色の鮮やかな夕焼けが辺りを包み込んだ頃、私たちはソイビーンの町のすぐ側まで辿り着いた。
ソイビーンの町の近くは、以前は砂漠地帯であったが、カレン様の砂漠化改善の取り組みにより、至る所に木々が生い茂っていた。しかし、ソイビーンの町の周囲6割近くはいまだに砂漠の状態である。
砂漠地帯には、サンドワーム、死神サソリなど高ランクな魔獣が住み着くので、砂漠地帯での生活はかなり大変である。しかし、カレン様の努力により4割も砂漠を緑地化できたのはかなりの功績である。しかし、アーサソール王は、その功績を称えるどころか税収を上げて、ソイビーンの財政を圧迫させていたのであった。なので、ソイビーンの町の領主であるパドロット家は2大貴族と呼ばれてはいるが、とても貧しい貴族なのである。
そもそもパドロット家が2大貴族を呼ばれる所以は、カレン様がエルフの国と同盟関係を結んだことにより、他の貴族たちがエルフとの争いを恐れて、パドロット家に何も言えなくなったからである。しかし、パドロット家は、エルフの力を傘にして勢力を伸ばすことはせずに、砂漠の緑地化に力を入れているのである。
「このあたりになると緑が増えてきましたね」
「はい。ルシスお姉様。水源を確保して少しずつ砂漠の緑地化を成功させているみたいです。とても素晴らしいことですが、ルシスお姉様の力を持ってすれば、簡単に緑地化できるはずです」
小ルシス2号の言う通りである。私にもはやできないことはない。水源の確保、木々の成長の促進など、魔法を使えば簡単にできるのである。
「そうね。カレン様が望むのであれば・・・」
「あそこに見えるのは、魚嫌いのヘタレキングの仲間です。まだ、仲間がいたとはゴキ○リ並の繁殖力です。すぐに退治してきます」
私が喋っている途中で、小ルシス2号は勢いよく飛んでいった。
確かに、小ルシス2号の言う通りソイビーンの町の門の前に巨人が1人立っていた。しかし、私にはソイビーンの町を襲っている様子には見えない。むしろ、ソイビーンの町を守るように立っている感じがした。
「ソイビーンの町を襲うことはこの私が許しません!」
「・・・」
「無言は『はい』と言ったのと同義語です。この手を汚したくないのですが・・・悪党を懲らしめるのが私の使命です。私に見つかったことがあなたの最大の敗因です」
『ウルトラ・スーパー・ハイテンションパンチ』
小ルシス2号は、ソイビーンの町の門の前に立っている巨人に向かってパンチを繰り出した。
「なんて、可愛い妖精さん」
小ルシス2号の存在に気づいた巨人は、大きな手で優しく小ルシス2号を捕まえた。
「お嬢さん。どこからきたのですか?」
巨人は手のひらに小ルシス2号を乗せて優しい笑顔で問いかけた。
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