第436話 スカンディナビア帝国編 パート24


 「2号ちゃん、私たちはソイビーンの町へ向かうわよ」


 「はい。ルシスお姉様」




 私は、ヘカトンケイルにヴァリ王の拘束をお願いし、ビューレイストにはロキさん達の元へ行くようお願いした。そして、私は急いでソイビーンの町へ向かうのであった。



⭐️数時間後




 「ルシスお姉様!デクの棒の親玉みたいのが見えます」



 ソイビーンの町までは馬車でいけば5日間はかかる。しかし、障害物などなく一直線で進める飛行なら、2日もあれば楽勝で行ける距離である。しかも、私ほどの飛行スピードがあれば1日もかからない。なので、ロキさん達が馬車で王都バステックに着く頃には、ソイビーンの町を往復しても時間が余るくらいなのである。そして、私たちが快適に空を飛行していると、明らかに先程の巨人達よりもはるかに大きい巨人が目に止まったのである。



 「ヴァリ王に手を貸した巨人で間違いないでしょう。カレン様に手出しをする前に片付けてしまいましょう」


 「わかりましたルシスお姉様。しかし、ここは私に任せてもらえないでしょうか?先ほどはルシスお姉様の手を煩わせてしまったので、今回は私がキングデクの棒に引導を渡してきます」


 「2号ちゃん、あなたの魔力ではあの大きな巨人を相手にするのは難しいです。2号ちゃん・・・」



 と私が小ルシス2号を説得しようとしたが、私の話に耳を傾ける事なく小ルシス2号は飛び出したのである。



 「ついに私の力の封印を解く時が来たのです。今までは制約をつけての戦いだったので、後一歩のところまで追い詰めながらも、とどめを刺すことができませんでした。しかし、今回は違うのです。もう、私を縛る制約はないのです。本当の私の力を受け止めることになった張子の虎の王も可哀想です」



 小ルシス2号には、何も制約を付けていないので、これはあくまで小ルシス2号の妄想である。


 小ルシス2号は、一直線にジャイアントに向かって飛んで行く。




 「ジャイアント様、少し疲れたの休憩でもしませんか?」



 王都パステックを出て半日は経過して、巨人族達も疲れが溜まっている。なので、休憩を提案しているみたいである。今回、ソイビーンの町へ向かっている巨人は4体いる。1人はスカンディナビア帝国のクーデターの裏ボス的な存在のジャイアント、そして、ジャイアントの手下のゴリアテ、イシブビノブ、シバイの3人の巨人である。


 ジャイアントは15mほどの高さで巨人族の中でも一番デカい巨人である。他の巨人たちは5m前後と普通の巨人の大きさである。巨人達の体の皮膚は鋼鉄のように硬いので鎧など必要ないので、布で出来た簡易的に服を着ている。ジャンアントは、武器などを持たずに大きな拳で相手を殴り倒す戦闘スタイルであり、その拳はダイヤモンドすら簡単に粉々にするほどの硬さを誇っている。残り3人の巨人は、大きな鉄の棍棒を引きずりながら歩いている。



 「そうだな。このペースでいくと明日にはソイビーンの町に着くはずだ。休憩ではなく、ここで野営をするぞ」



 特に急ぐ理由もないので、ジャイアントはこの場で野営をすることにした。



 「わかりました。野営の準備をします」



 巨人族を襲う魔獣などほぼ存在しない。魔獣達も巨人族を見ると恐れをなして逃げてしまうのである。なので、巨人族は野営場所はどこでもいいのである。そして、巨人族はテントなど張って寝床を確保するわけではないので、野営の準備とは食事の準備を意味するのである。



 「先ほど退治した魔獣の肉を焼いて食事の準備をいたします」


 「こんがり焼いてくれ」


 「わかりました」


 「私は先ほど川が見えましたので、魚を捕まえてきます」


 「さ・・・か・・・なだと!俺は魚など食べたくない!!」


 「申し訳ありません。魚はやめときます」




 ジャイアントは好き嫌いが多い。



 「魚もきちんと食べないと大きくなれませんよ!」



 どこからかジャイアントに説教をする声が聞こえた。



 「俺はこれ以上大きくなる必要はないのだ。だから魚は必要ないのだ」



 丁寧に返事をするジャイアント。



 「あなたは態度も大きくなっていますので、精神的に強くなるには魚を食べる必要があると思います」



 「やかましいわ!」



 ジャイアントは大きな拳でシバイを殴りつけた。ジャンアントに殴られたシバイは30mくらい吹っ飛んでいく。



 「ジャイアント様・・・いきなり何をするのですか?」



 ジャイアントに顔を殴られたシバイは顔の半分が砕けて緑の血が噴き出している。



 「お前が俺の悪口を言うからだ!」


 「私は何も言っていません」


 「嘘をつくな!」



 ジャイアントはジャンプしてシバイの目の前に降り立って、大きく拳を振り上げた。



 「ジャイアント様!落ち着いてください。シバイは何も言っていません。ジャイアント様に魚を食べるように言ったのは女性の声です」




 ゴリアテは、シバイが殺されると察知して仲裁に入る。



 「どこに女性がいるのだ!ここにいるのは俺を含めて4人しかいないはずだ。俺の邪魔をするならお前から殺してやろうか?」


 「ほーーら。私の言った通りあなたはただ図体がデカイだけで、精神的にはお子様です。仲間の忠告も聞き入れることのできない器の小さい男です。だから、魚を食べてもっと精神的に成長をするのです」


 「俺を馬鹿にしているのか!」



 ジャイアントは少し離れた場所に居たイシビベノブを殴りつけた。大きな拳で殴られたイシビベノブは地面に減り込み上半身が砕け散った。



 「ジャイアント様、落ち着いてください。イシブビノブは何も言っていません。これは、もしかしたら人間の冒険者達の幻惑魔法かもしれません。落ち着いて行動をしてください」



 ゴリアテは必死にジャイアント説得する。



 「お前の言っている冒険者はどこにいるのだ!どこを見渡しても誰もいないぞ」



 ジャイアントは辺りをキョロキョロ見渡すが誰もいない。目に映るのは仲間の3人の巨人だけである。しかし、それは、ジャイアントは遠くを見ようとしているからである。ジャイアントに声をかけている小ルシス2号はジャイアントの顔のすぐ側にいるのである。灯台下暗しなのであった。



 

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