第78話 ターニプの町その後パート1
アビスは、ダークエルフになって、自分の意思では動けなくなった。しかし、魂はダークエルフの中にあるので、サンドマンがしてきたことは、全て知っているのである。
アビスは、姉上がダールルに殺されたところを見て、自分のした事にひどく後悔していた。アビスが望んでいたのは、姉上の死ではなかった。ただ、大好きな姉上を、ドワーフに奪われたくなかったでけであった。ドワーフに対する差別も、他の種族への差別も、全ては姉上を取られるのではないかという、不安からくるものであり、心から他種族を嫌っているわけではなかったのであった。
アビスは、ダークエルフになり、魂だけが体に残り、姉上が死んでしまってからは、考えるのも辞めて、ずっと眠り続けていたのであった。
しかし、ルシスたちにより、サンドマンは、アビスの体から逃げ出した。ダークエルフの体を、アビスに返したことにより、アビスは自分の意思で動けるようなり、長い眠りから覚めたのであった。そして、アビスが、最初に目にした者は大好きな姉上であった。
アビスは姉上ではないことは分かっている。しかし、姉上とそっくりなポロンさんを見て、姉上が生まれ代わって、自分を救いに来てくれたと感じたのであった。
アビスは、ポロンさんのもとへ行き、自分のしてきた過ちを全て伝えたのであった。
「それが150年前の真実なのですね。でもおかしいわ。それならなぜ、ドワーフの王女は眠らされているのかしら」
「それは、ドワーフとエルフを戦争させる為です。姉上をダールルに殺させたのに、竜人の介入により、戦争にはならなかった。そのために、ドワーフの姫に呪いをかけて、次は、ドワーフ側から戦争をさせようとしたのです」
「でもドワーフは、その挑発にのらなかったのね」
「そうです。ドワーフの王も、息子が姉上を殺したのは、王女から聞いて知っています。なので、自国からは、戦争は仕掛けることはできないと国民に説明し、息子のしたことの責任を取り、国王制度を廃止したみたいです。しかし、戦争は防げましたが、お互いへの怒りは収まらず、冷戦状態に入ったのです」
「しかし、誰が、ドワーフとエルフに戦争をさせようとしたのかしら」
「私を、ダークエルフにした者だと思います」
「サンドマンが、首謀者なのですか」
「いえ違います。サンドマンも利用されていたみたいです。私とサンドマンを利用した第三者がいると思います。サンドマンを捕まえたらわかると思います」
「やっぱりサンドマンを逃したのは、失敗だったんじゃないか」
トールさんが、ポロンさんとイフリートを責める。
「そうですわ。イフリートさん。あの時の判断は、失敗だったのですわ」
ポロンさんは、手のひらをひっくりかえして、イフリートを責める。イフリートは、精印に隠れて知らないフリをする・・・
「過ぎたことを責めても仕方がない」
ロキさんが、イフリートに助け舟を出す。
「そうですわ。イフリートを責めても仕方がないので、この話しは、ここまでにしましょう」
もちろん、ポロンさんは、ロキさんの意見にのっかかる。ポロンさんは、エヴァさんの生き写しと、言われるくらい、似ているらしいが、性格は真逆なのであろうと私は思った。
「それで、アビスさん。あなたは、これからどうするつもりなのですか」
「私は、これから、ドワーフの町へ行き、すべての事を話そうと思います。そして、悪いのは全て私であり、ダールル王子は、何も悪くないということを、伝えたいのであります」
「それがいいと思いますわ。私たちも一緒についていきますわ」
「ありがとうございます」
私たちは、アビスを連れてターニプの町へ戻ることした。もうそろそろ、サラちゃんも起きているころだと思い、ポロンさんはサラちゃんを召喚した。
「お昼寝していたのに、邪魔をしないでよ」
サラちゃんは、お昼寝を邪魔されて、かなり機嫌が悪いみたいである。顔を真っ赤にして、頬を膨らまして、怒っているアピールが半端ないのであった。
私は、すかさずプリンを差し出す。
「わーい。わーい。プリンだぁー」
サラちゃんの機嫌がすぐに良くなった。なんてちょろい、チョロマンダーなのであろう。
「サラちゃん。またターニプの町まで送って欲しいのですわ」
「えーーー!人数が1人増えているから定員オーバーだわ」
私は、すかさずプリンの追加を差し出した。これは生クリームもつけた特製プリンだ。
「なんですかこのプリンの亜種は・・・・甘さ倍増で、舌が歓喜の悲鳴をあげているわ」
「お願いしまわ。ターニプまで連れて行ってください」
「仕方ないわね。決して、プリンに負けたのではなく、ポロンさんの熱意に負けたのよ」
とサラちゃんは、わかりやすい言い訳をして、運んでくれる事を了承してくれた。
「ポロンさんは、精霊神様と契約しているのですか」
アビスは、驚いている。
「そうですわ。この前、やっと精霊神様と契約を交わすことに成功しましたわ」
「それはすごいことです。精霊神様と契約できる方など、聞いたことがありません。さすが姉上の生まれ変わりのポロンさん、エルフの王女に相応しいです」
「そんなことありませんわ。ウフフフ」
ポロンさんは、アビスに褒められて上機嫌である。王族として、妖精との契約を失敗し、王族の誇りを失っていたポロンさんも、今では、精霊神と契約してエルフの国へ戻れば、英雄扱いされることは間違いないのである。なので、ポロンさんは舞い上がっているのである。
ポロンさんの、アビスに対する私はすごいんですから、アピールを聞きながら、私たちは、サラちゃんに運んでもらって、ターニプの町へ向かったのであった。
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