第351話 魔石国家ケルト王国編 パート21


 「全然効いてないぞ!」



 レオは雄叫びをあげるが、フラフラとよろめく。



 「レオさん、オグマの相手は私に任せてゆっくりと休んでいてね」




 リヴァイアサンはレオに優しく声をかけるが、弱い男は嫌いと知ったからには引く事はできない。



 「私は弱い男ではありません。私の本気を見てください」



 レオは勇ましく言った。



 「レオさんが強いのは分かっているわ。でも、私はオグマを倒さないといけない理由があるのよ。優しくて強いレオさんなら分かってくれるよね」



 リヴァイアサンは微笑みながらウインクをした。



 「もちろんです」



 リヴァイアサンにウインクされて、今にもキュン死にしそうなレオであった。



 「リプロ様、なぜライちゃんの攻撃は当たらないのですか?」



 フェニが不思議そうな顔をして尋ねてきた。



 「オグマは幻術の魔石具を使っているのだよ。しかも、複数の幻術の魔石具を使用しているよ」


 「そうなのですか?どのように幻術の魔石具を使っているのですか?」


 「そうだね。その質問に答える前に、フェニはオグマの姿はどのように見えるかな?」


 「サイのようにでっかい図体をした巨漢の男性ですぅ」


 「あのサイのような図体は幻術の魔石具で作られた偽物の姿だよ。実際のオグマの姿は背の低い小柄の男性だよ」


 「全然わからないですぅ」


 「フェニは、視覚情報に頼りすぎているから気づかないのだよ。オグマは幻術の魔石具で絶えず巨漢の男性を演じているのだよ。でも、実際は小柄の男性なので、攻撃を仕掛けた時には白い煙となって攻撃は当たらないのだよ。そして、攻撃を外した相手のスキを狙って反撃するのがオグマの攻撃スタイルだと思うよ。だから、ライさんのタックルは簡単に避けられてしまって、オグマの攻撃を防ぐつもりが、幻影のパンチに騙されて、顔面にパンチを喰らったのだよ」


 「リプロ様はすごいですぅ」


 「フェニもちゃんと魔力を感知すればわかるはずだよ」


 「魔力を感知???」


 「そうだよ。全ての生き物は魔石から流れ出る魔力によって生きているので、その魔力を感知すればその人物の体型などすぐに把握できるのだよ」


 「どうやったら魔力を感知することができるのですか?」


 「魔力探知は自分の魔力をオーラに変えて相手に放つといいよ。そしたら、自分の発した魔力のオーラが相手の簡単な情報を察知してくれるのだよ。絶えず自然体でそのことができるようになれば、背後からスキを突かれて襲われることもなくなるよ。そして、そのオーラを遠くへ飛ばすようにできるようになったら、遠方にいる敵の数、強さ、大きさなど、遠くに離れていても感知することができるようになるのだよ」


 「そうなんだ!試しみます」



 フェニは、不良がガンを飛ばすようにオグマを睨みつける。フェニの目は充血して赤くなってくる。



 「ダメですぅ」


 「フェニ、もっとチカラを抜いて楽にして!目で睨むのでなく、全身の魔力をゆっくりと解放する感じだよ。チカラを入れると力んでしまって、魔力の拡散ができなくなるよ。自然体で、水の中を漂っている感じで魔力を全方向に拡散させるイメージをして」


 「分かったですぅ」


 

 フェニは体のチカラを抜いて顔をニヤけさせてダルンダルンになった。まるで豆腐のように今にも崩れそう感じである。



 「ダメですぅ」


 「フェニ、極端だよ。今回は力を抜きすぎだよ。もっと自然体に魔力を放つのだよ」


 「こうかな?」



 フェニは、何もしていないように見るがそれが正解である。魔力を探知するのは息をするのと同じ要領である。周りからは何をしているかわからない感じで、息をするように魔力を全身から解放するのである。



 「感じたです。オグマは全然巨漢じゃないのですぅ」



 フェニは、魔力探知を身につけたみたいである。



 「リヴァイアサンも魔力感知をしているので、オグマの幻術は通用しないと思うよ」


 「リヴァちゃんの圧勝ですね!」



 フェニは笑顔で言った。



 「リヴァイアサンの圧勝は間違いではないけど、まだオグマは手の内を隠しているはずだよ。だからリヴァイアサンは、様子を見ながら戦っているよ」



 リヴァイアサンは、オグマの実際の姿を把握している。しかし、距離をとりながら水球を放つ。オグマの白銀の鎧には、攻撃を無効にする魔石具がセットされている。水球は、オグマに近づくと破裂して消えて無くなる。


 

 「逃げてばかりじゃ俺を倒せないぞ。それとも、勝てないと悟って逃げる準備でもしているのか?」


 「あなたこそ口ばかり動かさないで、攻撃を仕掛けたらどうなのかしら?ハリボテのあなたじゃ私に攻撃は届かないのかしら?」



 オグマの攻撃パターンは、幻影に騙された相手を翻弄して戦うことである。しかし、リヴァイアサンは、絶えず距離をとって攻撃してくるので、幻影で騙すことができないのである。



 「ハリボテだと!!!俺は挑発するとはいい度胸だ。俺はテウス様から授かった神の能力がある。俺の本当の力を見せてやるぞ」



 リヴァイアサンの挑発に乗ったオグマはプロメーテウスから授かった神の能力を発動した。


 オグマの姿はみるみる大きくなって5mの巨人となった。



 「これがテウス様から授かった巨人族の力だ」


 「でかいですぅーー。魔力探知したけど幻影じゃないのですぅ。すごいですぅ」



 巨人となったオグマを見てフェニは嬉しそうに手を振っていた。

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