第123話 ターニプ防衛パート10



 「ルシスちゃん、早く行こうよ」


 「カゴが揺れると、バニーちゃんが怖がるからゆっくり行きましょう」


 「大丈夫です。少しでも急いでください。いや、早急に向かってください!!」



 バニーが、サラちゃんに早く行くようにお願いする。



 「どっちなのよーーーー」


 「サラマンダー様お願いします。急いでください。早く私の得意料理を披露させてください。絶対に納得のいくお食事を用意します」


 「本当ですか」


 「もちろんです。料理の腕は誰にも負けません」


 「サラちゃん、ゆっくり行ってくれたら特製プリンを二つに増やます」


 「うーーーん。迷うわ・・・・そうだ。間をとって、中位のスピードでいきますわ。それなら2人の料理を食べれますわ」



 サラちゃんは、自分にとって都合のいい解釈をして、中位のスピードで行くことにしたのであった。



 

 「やっと着きましたわ」


 「えーーー。もう着いたの。私のモフモフタイムが終わってしまいます」


 「早くここから出してください。もう限界です」


 「私の正体がバレないように、少し遠くで降りたけどこれでよかったのね」


 「はい。ここからは、私がバニーちゃんをおぶって飛んでいきます。サラちゃんも人型でついて来てね」


 「わかったわ」


 「よろしければ、サラマンダー様に運んでもらいたいです」



 バニーは私のハグ攻撃で心身共に疲労していた。しかし、私はそんなこと全然気付かないのであった。


 

 「バニーちゃん。恥ずかしがらないで一緒に行きましょう」



 私は、人間の頃に聞いたことがある。うさぎは寂しがりやなので、1人になると寂しくて死んでしまうと。もちろん嘘であるが、私はそれを信じているので、私の熱いハグはバニーも喜んでくれていると勘違いしている。


 バニーはまた悲鳴をあげながら私に運ばれて行く。私には、バニーの声が嬉しくて歓喜の声をあげていると思っていたのであった。



 「ここが、ブラカリの町です。あそこで、門番をしているのが、ティグレさんです」


 「・・・・」



 バニーは意識を失っている。



 「バニーちゃん。ティグレさんに会えるので、興奮して声も出ないのね」


 「ルシスちゃん。バニーは気を失っているのよ」


 「そうなの。緊張して気を失ったのね」


 「違うと思いますわ。それよりも早く用事を片付けましょう」


 「そうですね。私がティグレさんに声を掛けてきます」

 


 そう言って、私はティグレさんのもとへ走っていった。




 「ティグレさーーーん。久しぶりです」


 「ルシスちゃんではないか。今日は何しにブラカリの町へ来たのかな」


 「実はバニーちゃんを連れてきたのです」


 「バニーちゃん???」


 「うさぎの獣人のバニーちゃんです」


 「な・なぜ・・バニーがこの町へ・・・」



 私は、ティグレさんにこれまでの経緯を説明した。



 「そうか・・・やはり、思っていた通りのことになっているのだな」


 「ティグレさんは、もう獣人の国には戻らないのですか」


 「息子を守るために国を捨てたのだ。もう戻ることはできないだろう」


 「でも、バシャーのせいで、獣人の国は混乱しています。ディグレさんの力が必要だと思います」


 「俺のせいで、何人もの仲間がバシャーに殺された。俺が仲間より息子を優先してしまったからだ。俺にはもう帰る場所はないのだ」


 「そんなことはありません。ティグレ様」



 バニーがティグレに声をかける。



 「バニー・・・無事でよかった。お前もバシャーに殺されたのではないかと心配していたぞ」



 ティグレさんは、バニーを見て瞳から涙が溢れていた



 「私もバシャーの仲間に入るのは最後まで反対していましたが、妻を人質に取られたのでバシャーの仲間になることを決めました」


 「そうだったのか。バシャーは、お前の料理の腕をかなり高く評価していたからな」


 「はい。私が殺されなかったのは料理のおかげです」


 「そうか。またバニーの料理が食べたいな」


 「いつでも作らせてもらいます」


 「ちょっと待ったーーーー。こんなところで話しをしてないで、早く私への料理を作るのよ」



 サラちゃんにとって、獣人たちの話しなどどうでもいいのであった。それよりも「早く食事を食べさせろ」と言いたいのであった。



 「そうだな。また後でじっくりと話そう。俺の仕事もあと2時間で終わりだ。続きは冒険者ギルドで話そう」



 私達は、ティグレさんと別れて冒険者ギルドに向かった。



 「バニー、元気そうでよかったわ」


 「イザベラさんもこの町に来ていたんですね」



 イザベラとは、冒険者ギルド内にある観光課を担当している鳥の獣人である。



 「フォーレン達も来ているわ」



 フォーレとは夜間の門番のコウモリの獣人である。ブラカリにいる獣人の数名は、ディグレさんと一緒にこの町に来たのである。



 「そうなのですね。みんな無事に脱出できていたのですね」


 「ティグレさんと逃げ出した者のほとんどの者は、この町にたどり着くことができたわ。でも、脱出できなかった者達は、バシャーに殺されたと聞いていたわ。だから、バニーが生きていてよかったわ」


 「バシャーに、従わない者は殺されました。そして、最初からティグレ様の幹部でバシャーに協力していた者はスネーク、ダーシンシン、クロコダイルです」


 「スネークやダーシンシンも裏切っていたのですね・・・」


 「はい。でも、ルシスちゃんの仲間が、ダーシンシンとクロコダイルを倒したので、バシャーを支えているのはスネークだけになります」


 「そうなのね。バシャーを倒すなら今がチャンスと言うことね。でも、ティグレさんは、もう獣人の国へ戻らないと思うわ」


 「そのようですね。私はティグレ様の意思を尊重します。そして、私もこの町で暮らしてみたいです・・・でも、妻を残しているので複雑です」



 「すごいですわ。ルシスちゃん。バケツほどの大きなプリンがあるなんて感動ですわ」



 バニーが深刻な話しをしている横で、私の出した特製プリンを見て、サラちゃんが、いつも以上にはしゃいでいる。


 この特製プリンは、オーベロン王に渡すために用意した特大のプリンであった。雷光石が手に入らなかった時の為にこっそりと用意していたのだが、サラちゃんに渡すことになってしまったのであった。でも在庫は、20個程あるのでなんとかなるだろうと、私は思っていた・・・・



 「ルシスちゃん、おかわり」


 バケツの大きさくらいあるプリンを、一口でペロリと食べるサラちゃん。私は、サラちゃんの食欲を甘く見積もってしまったのであった。


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