第244話 ホロスコープ星国 パート21


 私はポルックスの屋敷に到着した。私が屋敷に到着するとすぐに、屋敷の門兵が屋敷の中へ案内してくれた。屋敷の中へ入ると、次はヒゲモジャの執事が私をお姫様でも扱うように、丁寧にスコートとして、ポルックスの書斎に案内してくれた。



 「ポルさん何があったの?」



 私は、あまり礼儀作法が得意ではなかったので、ポルックスからは、気を使わないで友達に接するようにしてくれたら良いと言われていた。なので、私は愛着を込めてポルックスをポルさんと呼んでいる。しかし、私が、この町の町長であり「星の使徒」のポルックスにポルさんと呼ぶと、周りの大人はビックリするのであった。



 「フェニちゃん、わざわざ来てくれてありがとう。実はレジスタンスの事で大事な話があるのです」



 ポルックスは真剣な目で私を見つめていた。



 「大事な話ですか?」



 私は気の抜けた声で答えた。私はあまり緊張感がなかったのである。



 「この町には、毎週必ずレジスタンスからの使いの者が、私にレジスタンスの現状を報告しに来るのです。しかし、今週は、いくら待っても現れることがありませんでした。何かあったのか危惧していたのですが、先ほどライブラが意識を取り戻した時に、ホロスコープ星国の『星の使徒』レオとキャンサーが、レジスタンスのアジトを見つけたと言っていました」


 「見つかったらどうなるの?」



 私は事態をあまり飲み込めていない。



 「アジトが見つかれば、必ず襲撃されるでしょう。いや、襲撃されたから、今週はレジスタンスの使いの者が来れなくなったと考えた方がいいでしょう」


 「それは困りましたね」



 私を王都シリウスに連れて行ってくれるレジスタンスさんが、迎えに来れないのである。私は、どうやって王都シリウスに行こうか考えることにした。



 「レジスタンスさんが来れないのなら、私は1人で王都シリウスに向かいます」



 レジスタンスさんと一緒なら、安全に王都シリウスに行ける予定だったのだが、トラブルがあって来れないのなら、自分1人で行けばいいと安直な答えを出した。



 「フェニちゃん、1人で向かうのはとても危険です。それに今は、レジスタンスがどうなったのか調べる必要があります。私は、ギルドへ依頼を出して、レジスタンスの現状を把握するので、それまで、この町で待機してください」



 ポルックスは、私のことを心配して王都へは行かないようにお願いしてきた。



 「私がその依頼を受けてもいいですか?」



 私は、いつ来るかわからないレジスタンスさんを待つのは面倒だと思った。そして、この町に滞在するのもタダで滞在できるわけではない。10歳の女の子が、毎日宿屋暮らしをするには、結構お金がかかるのであった。


 私は町に滞在している間に冒険者登録をして、お金を稼ぐ準備はしていた。しかし、10歳の女の子に、ギルドマスターは依頼をあてがってくれないのであった。私は正直お金に困っている。だから、ポルックスの依頼を受けて、なおかつ王都シリウスに行けるなら、一石二鳥であると思った。



 「フェニちゃんが、レジスタンスの現状を確認してくれるのですか」



 ポルックスは驚いている。



 「任せてください。私はライブラに勝った女の子です。私の腕を信じてください」



 私は笑顔で言った。



 「確かにフェニちゃんの実力は、C2ランクの冒険者に匹敵すると私は思っています。しかし、子供1人では、危険だと判断しているのです」



 ポルックスは心配そうに言った。



 「大丈夫です。私にはベガちゃんがついてます」



 ベガちゃんとはただの馬である。しかし、1人で旅をするよりも、動物でも一緒にいてくれるのは嬉しいものである。それにベガちゃんはとても可愛いので私の癒しでもある。



 「しかし・・・・」



 ポルックスは判断を決めかねている。



 「私を信じてください」



 私は真剣な瞳でポルックスを見た。



 「フェニちゃんは、私が止めても王都シリウスに向かうのでしょう・・・ならば、そのついでにレジスタンスの現状を確認してもらいましょう」



 ポルックスは渋々了承した。



 「しかし、関所を通って王都シリウスに向かうのは無謀だと思います。関所には4色騎士団の黄騎士団が守っています。しかし、迂回路を通れば5日ほどで王都シリウスに着くことはできますが、迂回路は王の森を通らなければなりません」



 ポルックスは頭を抱えていた。



 「ベガちゃんと相談してどちらの道を進むか決めます」



 私は能天気に答えた。



 「レジスタンスの協力があれば、関所の抜け道を通ることができたのに・・・」



 ポルックスは、唇を噛み締めながら言った。



 「なんとかなりますよ」


 「フェニちゃん、決して無理をしないでくださいね。危険だと感じたら、すぐにこの町に逃げ帰ってください」



 ポルックスは、私のことを思うと辛くて涙が溢れそうなのであった。



 「ポルちゃん、私の心配をしてくれるなら依頼料の前金が欲しいです」



 私は本音がポロっと出てしまった。ギルドからの依頼でも、依頼内容によっては、先に準備資金を出してもらえることがある。なので、私は金欠だから準備資金を受け取ろうと思ったのである。



 「えっ」



 予想だにしない返答だったのでポロックスは理解できていない。



 「あのですね。レジスタンスの状況を把握するには、準備資金が必要だと思うのです。だから、依頼料の前借りをさせてください」



 私は強気で攻めるように言った。



 「そう言う事ですか・・・それならいくらぐらい必要なのですか」



 ポロックスは私の意図を理解して、前借り了承してくれた。



 「これくらいです」



 私は1週間分の宿屋の代金とお食事の代金を請求した。



 「・・・」



 ポルックスの顔が困惑している。私は、請求額が高額すぎたと思って反省した。



 「ごめんなさい。間違えです。本当はこれくらいです」



 私は、慌てて金額を3日間分にした。



 「・・・」



 ポルックスの顔はまだ困惑している。どうしよう・・・これ以上減らすと、金欠の私にとってあまり効果がないのである。しかし、まだ高いというのなら、せめて2日間分だけでも出してもらおうと思った。



 「そんな少なくてもいいのですか」



 ポロックスは困惑した顔で言った。



 「えーーーーーー。もっともらえるのですか」



 私は目が飛び出しそうな勢いで驚いた。



 「もちろんです。レジスタンスの現状を把握するのは、かなり危険な任務です。前金としてこれくらいの準備資金をお渡しいたします。



 ポロックスが提示した金額は、宿屋に1ヶ月泊まってもお釣りがくるくらい額であった。私はそれを聞いて、にやけた顔がしばらくは戻らないのであった。


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