第189話 倭の国パート30



 広間に入ると3つ席が用意されてた。



 「俺たち以外に誰かいるのか?」


 「そうみたいね。やむなく遅刻したのは私達だけではなかったみたいね」



 トールさん達は席に座った。そして、残りの1席にはかえでちゃんが座ったのである。



 「お前も参加するのかよ」



 トールさんはかえでちゃんに突っ込んだ!



 「もちろんです。私はわんこそば大会5年連続優勝のわんこクイーンなのです」



 トールさん達は唖然とした。



 「予定を変更して、わんこそば大会の追加試合を開催いたします。現在1位の方の記録は20杯となっています。しかし、わんこクイーンのかえで選手の前回の記録は25杯です。追加試合には、かえで選手も出場しますので順位の変動がありそうです」



 倭の国のわんこそば大会の器はどんぶりくらいの大きな器である。なので25杯はかなりの大記録なのである。



 「それではわんこそば大会の追加試合を始めます。15分以内に何杯の器を食べれるか挑んでください」



 わんこそば大会の追加試合が開始された。トールさん達の目の前にどんぶりの器が用意される。トールさん達は真剣にわんこそばを食べまくる。


 トールさん達は、焼き鳥を食べ過ぎて動けなくなるくらいにお腹がパンパンになっていた。しかし、牛歩戦術、迷子戦術でかなりの時間を稼いだので、少しは食べれるくらいには回復しているのであった。



 「おかわり」


 「おかわりだ」


 「おかわりよ」



 3人は次々とおかわりをしていく。



 5分が経過して、全員が横並びで10杯もわんこそばを食べたのであった。このペースでいくと25杯は超えそうである。


 しかし、トールさんとポロンさんはかなり苦しそうになってきている。



 「もう限界だ。これ以上は絶対に無理だ」



 とトールさんが心の中で叫んでいた。



 「もう無理よ。どうしたらいいのよ」



 とポロンさんも心の中で嘆いていた。


 それでもトールさん達は無理してわんこそば食べていた。


 しばらくすると、ポロンさんは異変を感じたのであった。



 「おかしいわ。さっきからいくら食べても器のそばがなくならないわ」



 ポロンは頑張ってそばを食べているが、器のそばが全然減らないのであった。最初は、食べるペースが遅くなったからだと思っていたが、どう見てもおかしいのである。器からそばが減らないどころか増えている感じがするのであった。


 それは当然であった。実はトールさんが目には見えないスピードで、自分のそばをこっそりと、ポロンさんの器に入れていたのであった。



 「ポロン、これもわんこそばの戦いのテクニックの1つだ。悪く思うなよ」



 とトールさんは心の中で呟きながらほくそ笑んでいた。



 「もう、絶対に無理よ。いくら食べても減らないわよ」



 ポロンさんは心の中で嘆き苦しんでいた。



 「そうだわ。あの手がありましたわ」



 ポロンさんも高速の動きでトールさんの器にそばを入れ出した。



 「トール、これも正当な作戦なのよ。だから悪く思わないでね」



 トールさん達はお互いのそばを入れ合うのであった。



 「おかしいぜ。いくらポロンの器にそばを入れても量が減らないぜ」


 「おかしいわ。いくらトールの器にそばを入れても量が減りませんわ」



 それは当然の結果であった。



 そして10分が経過して終了時間が来たのであった。


 お互いにそばを入れあったトールさん達の記録は、トールさんが14杯、ポロンさんが12杯に終わった。そしてかえでちゃんの記録は30杯であった。


 この結果、かえでちゃんの6連覇が決定したのであった。



 「かえでちゃん、優勝おめでとう」


 「かえで、優勝おめでとう」



 トールさん達はかえでちゃんの優勝を讃える。


 

 「ありがとうございます。今から私の優勝を祝して、美味しいフルーツを出してくれるお店に案内してあげます」



 かえでちゃんは嬉しそうに言った。かえでちゃんの食欲もトールさん達に全然負けていないのであった。



 「いや、遠慮しておくぜ。俺達は、かりにも共に戦ったライバルだ。今は悔しさで胸がいっぱいで、何も食べる気が起きないぜ。本来の俺なら、まだまだ食べれるところだったのに、残念で仕方がないぜ」



 精一杯の言い訳をするトールさんである。



 「喜んで食べにいくわ・・・と言いたいところだけど、ロキ達の事が気になるわ、だから急いで剣術大会の会場へ戻った方が良いと思いますわ」



 もっともらしい言い訳を言うポロンさんであった。



 「そうですね。私もヒメコ様の事が気になります。急いで、剣術大会の会場へ戻りましょう」



 トールさん達はホッとした。



 「あっ、わんこそば大会の優勝賞品があります。新鮮でとても美味しいお寿司です。最近は新鮮な魚が入手できないので、お寿司を食べることができないので、とても貴重なお寿司です。このお寿司をお二人にプレゼントいたします」


 

 かえでちゃんは、親切でトールさん達にお寿司を渡した。



 「お寿司は新鮮なうちに食べるのが1番美味しいです。さぁ召し上がってください」



 かえでちゃんは、屈託のない笑顔でお寿司を勧めてきた。


 トールさん達の顔が呆然としている。



 「これが、お寿司というモノかぁ。これが食べたくて倭の国へ来たのだぜ」



 トールさんは強がって答えた。



 「なんて美味しそうな食べ物なの!これは絶対に食べないといけない食べ物ですわ」



 ポロンさんも負けじと強がった答えた。



 「本当に美味しいです。さぁ食べたください」



 かえでちゃんは催促する。


 トールさん達はお寿司を掴んで、口に入れようとする・・・



 「ごめん・・・もう食べれない」


 「ごめんなさい。もうお腹いっぱいで食べることはできませんわ」



 トールさん達はもう我慢の限界だった。なので素直に謝った。


 こうして、トールさん達のくだらない戦いは幕を閉じるのであった。


 

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