第126話 ターニプ防衛パート13



 「ランナー!情勢はどうなっている」


 「はい。クロコダイル様が到着して、ターニプの町に向かっています」


 「そうか。俺も向かうとするか」


 「バシャー様、自ら乗り込むのですか」


 

 バシャーはラーテルの獣人である。ラーテルとは世界で最も恐ろしい陸生動物と言われている。ラーテルの恐ろしいところは、世界一怖いもの知らずの動物である事である。どんな動物にも喧嘩を売る攻撃的な性格である。ラーテルは、鋭い牙と爪を持ちゴムのように分厚い皮膚があり、この皮膚は、ライオンですら、噛みついてもあまりの分厚さの為に諦めてしまうほどである。



 バシャーは、身長は170cmと獣人としては小柄であるが、ラーテルと同様に鋭い牙や爪を持ち、皮膚はゴムのような厚い。そして、性格は卑怯で残忍である。


 バシャーを、慕うものなど誰もいない。バシャーに、ついてきている者はバシャーを恐れて従っているだけである。


 

 「この鉱山のドワーフは皆殺しにした。もうここには用はない。次はターニプの町を襲う番がきたのだ」

 

 「わかりました。バシャー様。先に行ってダーシンシン隊長に報告してきます」


 「任せたぜ」


 「はい。急いで報告してきます」



 ランナーは、貴重な情報を携えてワニパラ団の元へ走って行った。




 「ランナー止まれ」



 ランナーが、ワニパラ団のいるところへ向かう途中にランナーを呼び止める者がいた。



 「スネーク様・・・・どうして、こんなところに居てるのですか」


 「俺は独断で動くことが許されている。それよりもランナー。お前は嘘をついているな」



 スネークは、以前はティグレさんの元で幹部として重宝されいた蛇の獣人である。バシャーに、ティグレさんを裏切るように説得され、ダーシンシン、クロコダイルと一緒に、バシャーの側についた人物である。


 蛇の獣人は、蛇に手と足がついた感じなので、見た目はトカゲのようである。しかし、蛇の獣人は、手足を亀のように引っ込めることができて、急ぐときは、歩くのではなくて蛇のようにクネクネして高速で動くことができるのである。


 「嘘などついておりません」


 「俺の力は知っているよな」


 「はい。無数の蛇を操ることができる能力です」


 「そうだ。だから、俺は知っているのだよ。ダーシンシン、クロコダイルが死んだことを」


 「それは・・・・」


 「それに、お前とワニパラ団の裏切りもな」



 ランナーは、全てがバレていると分かったので瞬時に逃げたのであった。



 「ランナー、俺から逃げれると思っているのか。俺の手下の無数の蛇がお前の居所をすぐに見つけてくれるだろう」






 「ティグレ様、悪いのは全てバシャーです。自分をあまり責めないでください]


 「俺はどうしたらいいのだろうか」


 「ティグレの思うようにするといいにゃ」


 「あの時の俺は生まれた赤ん坊が1番大事だった。だから、俺はバシャーの要求を飲んで、決闘に負け国を捨てた。しかし、あの時の判断は正しかったのか、俺には今でもわからない」


 「ティグレ様の判断は間違っていません。もし赤ん坊を捨ててバシャーを倒したとしても、良い結果になったとは思えません。それは全員がわかっています」


 「しかし、そのせいで獣人の国は混乱してるのだ。俺の責任だ」


 「誰もティグレ様を憎んでいく者はいないはずです。悪いのはバシャーなのですから」


 「しかし・・・・」


 『バチコーーーン』



 私が、ティグレさんにビンタを食らわした。



 「何をうじうじと言っているのですか。バニーちゃんもリヨンさんもティグレさんのことを、全然恨んでいないじゃないですか?あなたの目は節穴ですか?彼らの言葉、姿を見て、何も感じないのですか?どこに恨みを感じていると思っているのですか?」


 「・・・・」


 「いつまでもクヨクヨと考えても何も解決しませんよ。ティグレさんは獣人の国をどうしたいのですか?今何をしたいのですか?本当の気持ちはもう決まっているのではないのですか?」


 「・・・・」


 「みんなの気持ちとかどうでもいいです。ティグレさんの思いを知りたいのです。そして、それをみんなが望んでいるのです。ティグレさんがやりたいようにしたらいいのです。それが、どんな結果であろうとも誰も文句は言いません。なのではっきりとここで言ってください。残念ですけど時間がありません。今すぐに答えを出してください。一刻の猶予もないのです」


 「俺は・・・・みんなを守りたい。バシャーを倒して昔のようにみんなで仲良く暮らしたい」


 「ティグレ様、私はどこまでも付いていきます」


 「私もいくにゃ」


 「ティグレさん。私も手伝います。もう時間がないので、すぐにターニプの町へ行きましょう」


 「わかった」


 「サラちゃんターニプの町へ戻りましょう」


 「ご飯大盛りでおかわりですわ・・・・・えっ、今、ご飯をおかわりしたのよ。もう少し待ってくれないかしら」



 ご飯を手に持っているサラちゃんを無理やりに連れ出して、私たちはターニプの町へ向かった。



 「ルシスちゃん・・・・酷すぎますわ。私の大盛りご飯が・・・・・」



 サラちゃんは涙目で私に訴えるのであった!





 

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