第125話 ターニプ防衛パート12

  


 次の日、ティグレさんとブランシュさんを連れてエッグプラントの町へ向かった。バニーは、私のモフモフ攻撃を恐れてブラカリの町へ残ることになった。しかし、ティグレさんのモフモフがあるので問題はないのであった。


 しかし、ティグレさんは、日からずっと暗い顔をして考え込んでいる。私がいくらモフモフアタックをしても、反応がなく面白みがないのであった。ちなみに、ティグレさんが乗れるようにカゴはかなり大きいのを用意した。



 「あなた、そんなに考えて込んでも仕方ないにゃ」


 「・・・・」


 「しっかりするのにゃ」


 「・・・・」


 「ルシスちゃんごめんにゃ。ティグレは急な事で悩んでいるのにゃ。私たちは、もう獣人の国の事は忘れることにしてたのにゃ。それが、急にこんなことになって頭が混乱しているのにゃ」



 私は、自分の浅はかな行動に少し後悔をしている。ティグレさんの気持ちも考えずに、獣人の国の為にバシャーと戦って欲しいと言った事を。


 しかし、獣人の国に事を思うとそれが1番良いと思ったのである。もうすぐ、バシャーがターニプの町を襲撃するだろう。私の力を持ってすればバシャーなんてイチコロである。それで、ドワーフの国を守る事はできても、獣人の国の争いは終わらない。3獣士の力のバランスが保たれていないと、以前のような平和な国には戻れないと私は思っている。


 そのバランスをうまく保つことができるのは、ティグレさんしかいないのだ。バニーの話しだと、バシャーが死んだら、次はジラーフが獣人の国を支配するためにダーシャンに戦いを挑むだろう。ダーシャンは、ティグレさんと同じ平和主義者である。平和も守るためにジラーフと戦うだろう。そして、獣人の国がさらに混乱して、最悪は破滅の道を辿るのかもしれない。それだけは絶対に食い止めたいのである。


 もしティグレさんが戻ってバシャーを倒せば、バシャーの領土はティグレさんの物になる。ティグレさんとダーシャンは考えが一緒なので争いを続ける事はない。ジラーフも2人相手では分が悪いので、争いをやめるだろう。


 私の行動は間違っていないと思っている。しかし、そのせいでティグレさんを苦しめているのは事実である。



 「ティグレさんの気持ちを考えずに巻き込んでごめんなさい。でも、獣人の国だけじゃなく、全ての種族が平穏に暮らせるようになってほしいのです」


 「ルシスちゃん・・・もう少しだけ考えさせてくれ」



 私は、ティグレさんをブランシュさんと2人っきりにするため、カゴから出て自らの翼で、エッグプラント町へ向かった。




 「ルシスちゃん、エッグプラント町へ着いたわ。約束のバケツプリンを頂戴ね」



 オーベロン王のために用意したバケツプリンはこれで底をついたのであった。恐るべしサラちゃん。私のストックをことごとく奪っていくのであった。



 「ティグレさん。リヨンさんに会いに行きましょう」



 私は、門番にお酒の差し入れを渡し快く町の中へ入れてもらった。そして鉱山本部にいるヤウルンさんに会いに行った。



 「ヤウルンさんに合わせてください」



 鉱山本部の受付の人に尋ねてみた。



 「今は会議中で会うことはできません」


 

 受付のドワーフの女性は即答した。



 「急用なのです。会わせてください」


 「大事な会議ですので無理です」


 「それならば、日本酒を持ってルシスが来た伝えてください。伝えないと後で後悔することになりますよ」



 私は、精一杯のイカツイ顔を作ってみた。



 「・・・あなたがルシスさんですか!失礼しました。すぐに伝えてきます」



 受付のドワーフの女性が急いで会議室に向かった。そして血相を変えてヤウルンが会議室から急いで現れた。



 「ルシスちゃん。受付の対応が悪くてすまんかった。それで日本酒をくれるのかい?」


 「もちろん差し上げますが、その代わりに、リヨンさんを少しお借りてもいいですか?大事な話しがあるのです」


 「日本酒がもらえるのならば、リヨンを好きに使ってくれたらいいぞ。すぐに呼んでくる」



 ヤウルンさんに連れられてリヨンさんがやってきた。



 「俺に何かようなのか?もう、モフモフとやらは勘弁してほしいのだが・・・」



 リヨンはかなり怯えている。



 「着いてきてください。会ってほしい人がいるのです」


 

 私は、リヨンさんをティグレさんを待たせている食堂に案内した。



 「誰に会わせてくれるのだ」


 「会えばわかります。この食堂の奥のテーブルにいてる人です」


 「・・・・・ティ・・・ティグレ様ですか」


 「リヨン・・・・生きていたのだな」


 「はい。ジラーフの部隊にやられて、瀕死のところをこの町のドワーフに助けてもらいました。体が回復したらティグレ様を追いかけようと思っていたのですが、ドワーフに命を救ってもらいましたので、この町を守るための護衛隊長を務めることになりました。すぐに会いに行けなくて申し訳ございません」


 「いいのだ。無事ならそれでいい」



 ティグレさんは溢れ出る涙を抑えながら、リヨンさんの元へ行き強く抱きしめる。



 「ブランシュさんも、元気そうで何よりです」


 「リヨンも元気で嬉しいにゃ」


 「私に会いにここまできてくれたのですか」


 「そうだ。そして相談がある」


 「何かあったのですね」


 「実は、ルシスちゃんにバシャーを倒して獣人の国の争いを止めてほしいと頼まれているのだ。しかし、俺は獣人の国を捨てた男だ。そんな俺に獣人の国へ戻る資格はあるのだろうか」



 ティグレさんは苦しい胸の内をリヨンさんいぶつけた。





 

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