第191話 倭の国パート32



 「なんだこの人集りは、宿屋に入れないぞ」


 「本当ですわ。どうしましょう」


 「私が何が起こっているか確認してきます」



 かえでちゃんは、ピョンっと跳ねて宿屋に前に飛んだ。



 「何をしているのですか?」


 

 かえでちゃんは、宿屋に前に群がる町民に声をかけた。



 「あっ、かえで様、宿屋の前にこんなにたくさんの米俵が現れました。この米俵の持ち主は誰なのでしょうか・・・少しでも譲ってもらえないかと町人達が集まってきたのです」


 「宿屋の主人には確認したのですか」


 「もちろんです。しかし、宿屋の主人も心当たりがないみたいです」


 「そうなのですか・・・それなら、私が宿屋に泊まっている客人に確認をとってきます」


 「お願いします」


 「かえでちゃん、何をしているの?」


 「ルシスさんではありませんか。実はここにある米俵の持ち主を探しているのです」


 「この米俵はサラちゃんからもらったので私のです」


 「そ・そ・そうなんですか!!!」


 「そうなんです」


 「ルシスさん、お願いがあります」


 「かえでちゃん何も言わなくてもわかっています。このお米は町人の方で分けてください」


 

 私はヒメコ様から町人達が米が手に入らなくて困っているのを知っていた。なので、この米は町人達にあげることにした。


 米を町人にあげるのは大きな理由がある。それは、サラちゃんが倭海を温暖化させて海の幸が取れなくしてしまったことである。1度は平穏な海に戻すことができたのだが、ポロンさんの大失態で、また温暖化した倭海に戻してしまったのである。なので、お詫びとしてお米をあげることにしたのであった。


 お米をもらった町人達はとても喜んでくれた。ロキさん達に事情を説明してたら、喜んで了承してくれた。特にポロンさんはホッとした感じであった。ポロンさんは倭海を温暖化してしまった事を気にしていたのであった。


 


 ★時がラストパサーが、エルフの国へ訪れていた頃に戻ります。


 王都ジンジャーにて・・・


 「まさか、ジュノをよこすとは思ってもいませんでしたわ」


 「今回の任務はかなり危険と聞いています。なので私が選ばれたのでしょう」


 「でも、王国騎士団の副団長が抜けても大丈夫なの」


 「問題ありません。フレイヤ団長がいれば私など居ても居なくても同じです」


 「謙遜しないで、フレイヤからはアレス以上の実力者と聞いているわ」


 「大袈裟ですよ。アレス前副団長は王国最強の戦士でした。私など足元におよびません」


 「今回の任務はそのアレスに関してよ」


 「存じ上げています。アレスの頭が行方不明になった件、そして、ネプチューン侯爵の不穏な動きの件ですね」


 「そうよ。ネプチューン侯爵領では神光教団の教えが根付いているわ。神光教団の教えも基本は、神守教会と同じよ。人間以外の種族は認めないとうたっているわ。神守教会の力が弱まった今、神光教団の力が増して何かよからぬ事を企んでいるみたいだわ」


 「そのようでございます。そして、アポロ公爵もネテア王女様に取り入ろうと努力していましたが、相手にされないので、ネプチューン侯爵と手を結ぼうとしているみたいです」


 「それは、本当なのですか?」


 「はい。これは極秘情報なのですが、アポロ公爵が神剣の製作を始めたと知って、ネプチューン侯爵がアポロ公爵を取り囲んだと聞いています」


 「バルカンがついに神剣の製作に着手したのね」


 「はい。バルカンがある冒険者からレア素材を入手して、神剣の作成に本気を出したみたいです」


 「神剣ができるまでに、アレスの頭のありかを見つけ出さないといけないわね」


 「そういう事になると思います。神光教団の教祖ハデスは神の子です。ハデスの力は死者を操る能力です。なので、アレスの頭は確実にハデスの元にあると思います」


 「そうね。ゾンビとなったアレスに神剣を持たせて、ブラカリを襲撃するか、それともネテア王女様に反旗を翻すかどちらかね」


 「はい。フレイヤ団長もそれを懸念しています。なので私はソールさんのところへよこしたのでしょう」


 「そうね。こんなことなら、『ラスパ』のメンバーにも応援を要請すべきだったわ」


 「『暴食』の方ですね。フレイア様の情報では、今はエルフの国へ行っていると聞いています」


 「そうね。すぐに戻ってきてくれると助かるのにね」


 「戻られ次第、応援に来てもらえるように手配はしておきます」


 「助かるわ。彼女達ならネプチューン侯爵さえ簡単に倒してくれるはずよ」


 「かなり評価が高いのですね」


 「そうね。メンバー1人1人もかなりの実力だけど、1人とんでもない女の子がいてるのよ」


 「例の女の子ですね」


 「そうよ。あの子が味方についた方がこの国の戦いに勝利するはずよ」


 「それほどの力の持ち主なのですね」


 「そうね」


 「ソール、馬車の用意ができたわ。キャロトの町へ行きましょう」



 とマーニが静かに言った。


 

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