第408話 ボルの人界征服編 パート21


 「ルシスお姉様・・・なぜ止めるのですか?何か問題でもあるのですか?」


 「2号ちゃん!今のあなたの力では、また一瞬で消滅してしまうわ。私が更なる力を付与するので、闇魔法でボルを倒すのよ」


 「ルシスお姉様!私はこの拳であのミジンコお化けを倒すと決めたのです。新たな力を授けてくれるのは感謝しますが、私は魔法を使うつもりはありません」



 小ルシス2号はどうしても拳で戦いと熱い視線で私に訴える。



 「わかったわ。そこまで拳で戦いのなら格闘属性を付与してあげるわ」



 私は何を言っても言うことを聞かない小ルシス2号に、魔法での戦いを諦めることにした。



 「これ以上私を強くしてくださらなくても問題ありません。私の脳内イメージでは、あの単細胞のアメーバ野郎に負ける可能性はゼロと弾き出されました」


 「2号ちゃん!いいからこの力を受け取るのよ!」



 私は、小ルシス2号に魔力を注ぎ込み小ルシス2号を、アルティメットバージョンに進化させたのである。


 小ルシス2号の髪の色が私と同じ金髪から銀髪に輝き出して、体からも眩い銀色の光を発光し、体つきもどこか筋肉質な体になった。



 「ルシスお姉様・・・・みなぎる力を全身から感じることができます。私はまるで魔王にでもなったかのような気分です。これなら、あの粗大ゴミ野郎を小指一本で、地獄の底へ突き落とすことができると思います」


 「2号ちゃん!存分に戦ってくるのよ」


 「やっと戦わせてくれるのですね。ルシスお姉様の期待に見事応えてみせます」



 小ルシス2号は、やっと私の許可が降りて、私の手から抜け出してボルに向かって一直線に飛んで行く。



 「また、あのハエが俺の相手をするのか?何度は向かってきても結果は同じだぞ」


 『ホワイトホール』



 ボルは小ルシス2号に向かって入道雲のような煙を放った。



 『タイフーン・トルネード・スクリューパンチ』



 小ルシス2号は体を回転させながドリルのように入道雲の中を突き進んでいく。入道雲は小ルシス2号の『スクリューパンチ』によって、散り散りに吹き飛ばされていく。



 「『ホワイトホール』が砕かれるだと・・・・そんなのありえないぞ!」



 ボルの顔は、部屋の片隅にゴキブリがいるの気づいたかのように、背筋が凍るような表情になって驚いている。



 「私の行く手を誰も防ぐことはできませんのよ!私の恐ろしさをその体に叩き込んであげましょう」



 『イナズマ・ダイナマイト・ライトニングヘッドバット』


 

 小ルシス2号は『ホワイトホール』を粉砕して、そのまま回転しながらボルのみぞおちを狙ってヘッドバットをぶちかまそうとする。



 「ふざけるな!俺は神人の王だぞ。ハエごときにやられてたまるか」



 ボルは、生意気な小ルシス2号の態度に怒りが絶頂に到達した。ボルは、巨大化した右手ではハエたたきのように小ルシス2号を叩きつける。


 しかし、小ルシス2号は急旋回してボルのハエたたきをかわし、そのままボルのみぞおちに突っ込んだ。



 「グボっ!!」



 ボルはくの字になって倒れ込む。



 「このナメクジクソ野郎。立ち上がりなさい」



 小ルシス2号は手のひらを上下さしてボルに立ち上がるように挑発をする。



 「グッホ・グッホ」



 ボルは咳き込みながらも、お腹を抑えて立ち上がった。



 「立ち上がるあなたの勇気は賞賛に値します。しかし、ルシスお姉様に対する暴言は許すことはできません」



 『ファイナル・ラスト・エンディング・グリングリンキック』


 

 小ルシス2号はブレイクダンスの技トーマスのように足を回転させながらボルの顔面に何度も蹴りを喰らわす。



 「うっとしいハエやろう!」



 ボルは両腕を巨大化して、合掌をするように両手を合わして小ルシス2号を潰そうとする。しかし、小ルシス2号はまさにハエのようにボルの周りをグルグルと回って標準を合わせない。



 除夜の鐘の音のようなボルの合掌音が108回聞こえた時、ボルはかなりの体力を消耗して、息を切らしてフラフラの状態で今にも倒れそうである。



 「こ・・の・・・ハエもどきが・・・」



 ボルはもう声を発するのすら苦痛を感じている。


 一方小ルシス2号は、ボルの周りを軽快に飛び回って、フラフラのボルに向かって頭突きを喰らわすのである。



 「『ロケット・クラッシュ・アメージングヘッドバット』のお味に満足いただけたでしょうか?」



 余裕の笑みを浮かべて小ルシス2号はボルに話しかける。



 「こんなの屁でもないわ・・・俺は神人最強のボル様だぞ!いくらでも攻撃するがいい」



 ボルは最後の力を振り絞るように大声を上げた。



 「わかりました。それだけ無駄口を叩けるあなたの勇姿を私は忘れることはないでしょう。しかし、あなたがルシスお姉様を侮辱した言葉は、私は絶対に許すことはできません。あなたはその罪の重さを背負いながら、苦痛のどん底で反省するのです」



 小ルシス2号は、ボルの上空で停止すると両手を大きく上げて魔力を集める。



 「私の全ての魔力をあなたの脳天に突き落としてあげます。動くことすらできないあなたにもう避ける術はないでしょう。己の犯した罪をきちんと受け止めて、後悔しながら地獄のような苦しみを味わうといいでしょう」



 『ビック・スパーク・エクスプローション』



 1度に100回の朝日が訪れたような眩しい光が一面に広がり、おびただしい魔力の渦が一面を覆い尽くす。この世と始まりと終わりが1度に訪れたかのように光景に、ボルが怯えてガクガクと体を震わせながら、全身のあらゆるところから、液体がこぼれ落ちてくる。それは、涙や鼻水はたまた糞尿なのである。



 「ナレッジ!早く俺を助けろ」



 ボルはもう、虚勢をはる意地も無くなってナレッジに助けを求める。


 しかし、ボルは転移されない。ナレッジは小ルシス2号に手も足も出ない状況を悟ってすでに逃げたいたのであった。



 「2号ちゃん・・・最後は魔法を使うのね」



 私はポツリとつぶやいた。

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