第409話 ボルの人界征服編 パート22
光り輝く魔力の渦が空を覆い尽くし、一面を幻想的な光の世界を変えた時、小ルシス2号の魔力は尽きてしまってそのまま消滅した。
「2号ちゃん・・・暴走しすぎよ!」
小ルシス2号が使おうとした魔法は、私が光魔法と闇魔法を融合させて作り出した終極魔法『ビッグバン』であった。『ビッグバン』の破壊力はこの世界を一瞬で滅ぼしてしまうほどの威力を持っているので、扱いがとても難しい高難度な魔法であり、膨大な魔力を必要としている。いくらアルティメットバージョンになったといっても小ルシス2号が使える代物の魔法ではないのである。案の定、魔力不足で小ルシス2号は消滅した。
しかし、『ビッグバン』を見たボルもあまりの恐怖でナレッジに転移を求めたが、ナレッジはトンズラをかまして逃げてしまったので、ボルは失意のどん底に落とされてしまった。死を覚悟したボルは、そのまま意識をなくして直立不動のまま地面に倒れ込んでしまった。
その結果・・・2人の戦いはお互いに戦意喪失となり引き分けとなったのである。
「ルシスお姉様、4度目のチャンスも生かすことが出来ずに、不甲斐ない姿を晒してしまい申し訳ありません」
すぐに復活した小ルシス2号は頭を下げて、肩を震わせ涙を堪えながら謝罪する。
「気にしなくてもいいのよ。結果としてはボルさんを倒したのですから」
「寛大なお言葉ありがとうございます。ルシスお姉様、ボルにトドメを刺すのですか?私と幾多の死闘をくりひげた盟友に尊厳ある死を与えてください」
小ルシス2号は初めてボルを正式名称で呼んだ。
「神人は殺すことはしません。とりあえず他の神人と同様に異空間に閉じ込める予定です」
「寛大なる処置に感謝いたします。拳で語り合った者を葬るのは心苦しいのでとても嬉しいです。私が放った拳の数だけあの男も改心した思います」
小ルシス2号は自身の拳を見つめながら嬉しそうに言ったが、小ルシス2号が拳を使ったのは、最初の『ミラクルパンチ』だけだったことには触れないでおこうと思った。
私は『ディメンション』を使ってボルを異空間へ連れて行った。
「ルシスお姉様、とんずら太郎はどうするのですか?」
「ナレッジさんはこのまま放置します。もし、私に敵対するような動きがあれば、その時に対処するつもりです」
私はナレッジが逃げ出した時に捕まえる余裕はあった。しかし、あえて逃してあげたのである。それは、天使様に会わせてくれるキッカケをくれたことへの貸を返したのである。理由はどうあれナレッジのおかげで私は7大天使様と出会い、この世界で無双できるほどの力を手に入れた。その貸を今回の件でチャラにしてあげたので、次に私に絡むようなことがあれば、容赦なく倒すことになるだろう。
「ルシスお姉様は優しすぎるのです。逃走爆進野郎などに情けをかけずに肥溜めにぶち込めば良いのです」
「2号ちゃん・・・もう少し言葉選びを慎重にするのよ。産みの親である私の品格まで問われてしまいます」
「わかりました。ルシスお姉様の品格が失われるような発言は控えさせていただきます」
胸を張って小ルシス2号は答えたが、不安しか残らないのであった。
⭐️裏天界では
「人界へ暴れに行ったボルの魔力も消えたな・・・」
「これで人界へ送り込んだ4人の神人の魔力が消えたことになる」
「そうだな。残ったのはビバレッジだけだな」
「ああ。人界では一体に何が起こっているのだ?」
「わからん。やはりボルでは役不足だったのか?」
「そうかもしれない。あいつはウーラノス様のパシリとしてひどい扱いを受けていた。『ホワイトホール』を教えると言って甘い言葉で騙して、150年かけて手に入れたスキルは、ほとんどが生活スキルだった。唯一教えてもらった魔法は『クラウドプレス』だけだ」
ボルが使った『ホワイトホール』は偽物であった。もちろん私もすぐに察知して、私が手を下す必要がないと判断したのである。
『クラウドプレス』も光魔法の中では強力な魔法であるが、『ホワイトホール』に比べたらレベルが違いすぎて例える気にもならないくらいの魔法であった。そして、ボルが150年下積み生活で得たものは、生活スキルであり、料理・洗濯・掃除・日曜大工・一発芸・合いの手・女性のエスコート・歌・モノマネなど、戦闘で使えないスキルに関してはカンスト状態であった。しかし、肝心の戦闘に関する能力は150年の下積み生活で得たものは微々たるものであった。
「しかし、表天界で俺らの言うことを聞いてくれるのは、あいつしかいないのも事実だ」
「そうだな。面白い余興になると思ったのだが残念な結果になってしまった。次は何をしよう?」
「ボル達がどうなったか調べに行かないか?」
「そうだな。俺たちも人界へ行くか」
「もちろんだ。俺たちが力を与えたムーンとオーシャンの行方も気になるしな!」
オーシャンに力を与えたポセイドンとムーンに力を与えたヘファイトスが、裏天界から人界へ行くことを決めたのである。
「ミカエル、ついに神が直々に動き出すぞ」
「そうみたいですね」
「ルシスさんは大丈夫なのか?」
「ルシスさんなら問題はないでしょう。ただ人界の秩序を壊さないか心配です」
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