第62話 アトラス山脈にてパート1
「遅ーーーーーい。もっと早く貢物を持ってきてくれないと困ります」
私たちの気配を感じたらしく、かなり前からここで待っていたらしい。
「代わりの貢物は用意できたの?」
「はい。メデュー様。遅くまりましたが無事に代わりの貢物を用意することができました」
「それは、よかったわ。しかし、私の納得のいかない物だったら、どうなるかわかっているよね。エッグプラントの町だけじゃなくドワーフの国も石化しますからね」
リヨンさんの顔が青ざめた。そして、リヨンさんは死にそうな目で私をみている。私はニコって笑って大丈夫だよと合図した。
「もちろんわかっております。メデュー様の納得のいく品をここにいるルシスという冒険者が用意してくれました」
「冒険者ですって!まさか、あの白い髪の冒険者の仲間じゃないよね」
私は一瞬ドキッとした。仲間じゃないけど友達ではある。あまり追求されると、危ないと思って早速プリンを食べてもらうことにした。
「そのような冒険者知りません。それよりもメデュー様、私が持っているプリンという食べ物を献上いたします」
「プリン?聞いたことがないわ」
「このプリンという食べ物は、プルプル食感のとても甘い食べ物になっています」
「プルプル食感ですって!それはどんな食感なのか気になりますわ。早く、そのプリンという物をよこしなさい」
「どうぞ、メデュー様」
メデューはルシスからプリンを受け取り一口食べてみた。
「なんなんですかこれは!これがプルプル食感というものなのね。私の牙を暖かく抱きしめてくれるような食感、これはまさに食の大革命ですわ。しかも食感だけではないわ。この食感に追い打ちをかけるようにくるこの甘さ・・・私の心にトドメを刺しにきているわ。もう私は思い残すとこはないわ。このプリンを食べた後なら世界が滅んでも良いのですわ」
メデューは、訳のわかないこと言いながら、プリンを何個も食べている。これは代わりの貢物として納得してくれたのだろう。さすがプリン様。異世界ではドラゴンさえも黙らせる最高の品である。
「もうなくなってしまったわ」
私の渡した10個のプリンを、一瞬でメデューは食べてしまった。そして、食べ尽くしたメデューは体を小さく丸めてしょんぼりしている。
「プリン、プリン、もっと食べたいよー・・・・」
「メデュー様、もう少しだけならプリンをお渡しすることができます」
「なんですって!まだあるのですか。それはとても嬉しいですわ」
「その代わりに、私のお願いを一つ聞いてほしいのです」
「プリンがもらえるのなら、なんでもするわ」
「女性の冒険者が守護聖竜様への貢物を盗んだ代償として、リークの町が石化されました。石化は私の魔法で解除したのですが、町の者がまた石化されるのか不安で家を出ることもできません。もう町を石化しないと約束して欲しいのです」
「あなたが、私の石化を解除したの」
「はいそうです」
「あの石化を解除するなんて、さすが、プリンの使者ですわ。代わりの貢物をもらったので、もうあの町には行かないわ。だから、プリンのおかわりをお願いするわ」
「ありがとうございます」
私は追加のプリンを10個渡した。メデューは喜んでプリンを食べ出した。
「ルシス、リークの町の件は片付いたが、俺らのう○この件はどうする」
「トール、竜光石だろ。変な言い方はよせ」
「そうですわ。お下品ですわ」
「それよりも、その竜光石をプリンと交換してもらったらいいのではないか?」
確かにそうであるが、あんな可愛らしいドラゴンに、排泄物である竜光石のことは私には聞きにくかったのである。
「そうですね。私からは聞きにくいので、ロキお姉ちゃんにお願いします。プリン以外にも、日本酒、唐揚げなどあるので交渉材料に使ってください」
「私も少し、聞きにくいわ・・・」
「私もですわ」
やっぱり、みんな聞きにくいのであった。もちろんトールさん以外は。
「俺が聞いてくるわ。それにトイレに行けば転がっているかもしれないし」
慌てて、ロキさんがトールさんを止める。
「やはり、私が行ってくる。トールに任せると、とんでもないことになりそうだ」
「なんだよ。う○こなんて、誰でもするだろう。考えすぎだろ」
ロキさんはトールさんを無視して、メデューのところへ行く。私も気になったのでついていくことにした。
「メデュー様、お食事中に申し訳ないのですが、お聞きしたいことがあります」
「私に何かようですか。代わりの貢ぎ物をもらったので、もう帰ってもよろしいのに」
「実は私たちは、竜光石と言われる鉱石を探しています。ご存知ではないでしょうか」
「聞いたことないですわ。どのような鉱石ですか?甘くて美味なら私も欲しいですわ」
「いえ、その竜光石は・・・・」
ロキさんは説明に迷っている。失礼なこと言って怒らせてしまったら、また町ごと石化されたら大変である。
「メデュー様、この冒険者たちは、竜の加護を授かった鉱石を探しています。緑色に輝くミスリル、アダマントが洗礼された石でございます」
みかねたリヨンさんが、代わりに説明してくれた。
「あの、ゴミクズが竜光石なの?だいぶ前に、ドワーフの王が喜んで持って帰った緑色の鉱石ならたくさんあるわ」
「それのことだと思います。見せてもらってよろしいでしょうか」
「いいわよ。ミスリル、アダマントの甘みがなくなった残骸だから、好きにしていいわよ。姉上からは、誰にも渡したらいけないといわれているけど、バレなければ大丈夫よ!」
「ありがとうございます」
「メデュー!!何しているの」
「ひえーーー。ごめんなさい」
「竜光石は、渡してはダメと言ってるでしょう。あれは、私たち竜の力を含んだ特殊な鉱石と言ってるでしょ」
「・・・・」
「それで、あなたが今食べている物はどうしたの」
「・・・・」
「ミスリル、アダマントを持って行かれたのは、あなたのせいでしょ。女の子の冒険者と大食い対決なんてするからよ」
「・・・・ごめんなさい」
「しかも、その子に戻ってきてもらおうとして、町まで石化してしまうなんて、あなたって子はどうしようもないんだから」
「ごめんなさい」
「妹が町に迷惑をかけてごめんなさい。それに、代わりの貢物まで持ってきてくださるなんて、大変だったでしょう」
メデューの姉と名乗る2人の守護聖竜のステンとエウリが私たちの頭上から舞い降りてきて、メデューに説教をしたのであった。
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