第63話 アトラス山脈にてパート2



 「メデューは、悪い子ではないのだけど、食べ物のことになるとわがままになってしまうのよ。メデューが、美味しそうに食べているのが、あなた方が用意してくださった物なのね。今回は、メデューがご迷惑をおかけしたので、この竜光石はさしあげますわ。竜の加護を受けた特殊な鉱石になるので、取り扱いには気をつけてね」


 「わかりました」


 「でも、この竜光石は、特殊な鉱石なので加工できる人は、ほとんどいないと思いますわ」


 「そうなのですか、それはこまったものです」




 竜光石を手に入れることはできたのだが、それで終わりではなかった。次は、加工できる人を探し出さないといけない。



 「もしよろしければ、お二人も、メデュー様が食べているプリンを、お食べになりますか」


 「そんなに、堅苦しく喋らなくて大丈夫よ。メデューが、あんなに嬉しそうに食べているのだから、かなり美味しい食べ物なのね。もちろんいただくわ」



 「お姉様、この食べ物はプルプルで甘々で最高ですわ。これを食べたら、私が竜光石をあげたくなる気持ちがわかりますわ」



 メデューは、先ほどまで姉たちに怒られてしょんぼりしていたが、姉たちがプリンをもらっている姿を見て、プリンの美味しさを伝えずにはいられないのである。



 「私は、甘いの物も好きだけど、何か他に美味しい食べ物が欲しくなってきたわ」


 「そうそう。それにお酒も欲しいよね」


 

 やっぱりメデューの姉なので、食べること・飲むことは大好きみたいである。



 「それでしたら、この日本酒と唐揚げ・フライドポテト・フィッシュフライを食べてください」


 「見たことのない料理だわ。とても美味しそうね」


 「美味しいですよ。これは油というモノで、サクサクにあげていますので、食感も味も最高です。さらにこの日本酒と一緒に食べれば美味しさは倍増します」


 「それは、楽しみですわ。ゆっくり食べたいので、私たちの屋敷に案内するわ」



 山頂には、石でできた立派な建物があった。そこへ、私たちは案内された。



 「俺は、報告があるので帰らせてもらうぜ」



 リヨンさんは、守護聖竜と一緒にいるのは緊張してしまうのと、いち早く守護聖竜の許しを得る事が出来たことを、報告する必要があるので、屋敷には入らず帰ることにした。


 

 「リヨンさん、気をつけて帰ってください」


 「ああ、ルシスちゃんのおかげで、守護聖竜様の怒りも静まったので助かったよ。ヤウルンにもきちんと報告しておくぜ」



 そう言うと、リヨンさんは急いで帰っていった。




 私たちは、大きな客間に案内された。そこで私は、ドラゴン三姉妹のためにお酒と料理を出してあげた。



 「甘いものも好きだけど、このジューシーでサクサクの唐揚げもとても美味しいですわ」


 「そうだろ、ルシスの作る料理は絶品だぜ。これは、キューカンバのブドウ酒だぜ。このお酒もおすすめだぜ」


 「聞いたことがありますわ。キューカンバのブドウ酒は一度飲んでみたかったのよ」



 トールさんとメデューは、意気投合して盛り上がっている。



 「エウリさん、お酒もいいですが、このブドウジュースとフィッシュフライをオススメしますわ」


 「ほんとに美味しいわ。このフィッシュフライに、かかっているソースが特に美味しいですわ」


 「それは、ルシちゃんが作ったタルタルソースというソースですわ。フィッシュフライをさらなる高みに押し上げてくれるソースになりますわ」


 「本当ですね。こんな美味しい料理をいただいたのは初めてですわ」



 次女のエウリさんとポロンさんが、仲良さげにお食事をしている。



 「ステンさん、竜光石を加工できる人をご存知ですか?」


 「直接は知りませんが、ドワーフの王なら知っているかもしれません。メデューがたくさんの食事と引き換えに、竜光石を渡したことがありますので、何か知っているかもしれません」


 「ありがとうございます。一度訪ねてみたいと思います」


 「それよりも、リークの町の石化を解いたのはあなた方なのですか?」


 「はい、仲間のルシスが解いてくれました。見た目はまだ幼いですが、かなりの魔法の使い手です」


 「そうですか。ありがとうございます。メデューは、3姉妹の中で1番強力な石化魔法を使うことができます。しかし加減ができないところもありまして・・・今回は、町全体を石化したみたいなのですが、思ったより強力で、すぐには解除できなかったのよ。それで、今日は再度、石化を解きに町へ行ったのですが、石化が解けていたので疑問に思っていましたが納得したわ」


 「メデュー様が、町を石化したのは、冒険者に貢物を盗まれたと聞いていましたが、大食い競争が原因みたいなことを、言ってませんでしたか」


 「そうなのよ。この屋敷にきた冒険者の女の子が、どうしても、ミスリル・アダマントを食べたいとお願いするので、メデューが大食い対決で勝ったら、食べさせてあげると約束したみたいです。あの子は、大食いには絶対の自信があったので、その冒険者を諦めさせるために勝負したのです」


 「しかし、大食い対決で勝ったのが、冒険者だったってことですか」


 「そうです。それで、ミスリルとアダマント差し上げることになったのです」


 「それで、なぜ、町ごと石化したのですか」


 「それは、メデューは負けた悔しさで、酒を浴びるように飲んでかなり酔ってしまい、ミスリル、アダマントを取り返すと言って、町に冒険者を探しに行きました。しかし、冒険者を探すのは、面倒だったので、石化のブレスを吐いて町を石化させて、冒険者が出てくるのを待っていたみたいです」


 「それは、めちゃくちゃなことをしますね」


 「そうなのよ、あの子はお酒を飲みすぎると、自己を失いめちゃくちゃなことしてしまうのよ」


 「酒癖が悪いということですね」


 「そうなの。だから、代わりの貢物を出すように言ったのも、酔った勢いなの・・・」


 「メデュー様には、お酒は控えるように言わないとね」




 「ロキお姉ちゃん・・・もう遅いです」


 「ルシスちゃんどうしたの」


 「トールさんとポロンさんが石化されてしまいました」



 

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