第329話 ホロスコープ星国 ルシス編 パート41
次の日私はヴァンピーを連れて王都シリウスへ向かった。ヴァンピーの馬車だと時間がかかるので、私はゲリに乗せてもらいヴァンピーはフレキが乗せて王都シリウスへ向かった。
ゲリはお姉ちゃんとかけっこの勝負をしたいと言ってフレキにお願いしたら、フレキはあっさりと了承したので、2人のかけっこが始まった。相変わらず猪突猛進のゲリは、木を薙ぎ倒しながら進むので、私は途中から飛行することにして、上空から2人の勝負の行方を見守っていた。
フレキは、森を傷つけないように、木をうまいことスイスイとすり抜けて行く。ヴァンピーは必死にフレキに捕まって振り落とされないように頑張っている。
私は回復魔法を使って、ゲリが薙ぎ倒した木を修復しながら勝負の行方を見守っていた。勝負の行方は、ヴァンピーにもらった王都シリウスの地図をきちんと理解していないゲリが何度も方向を間違いまくったので、フレキの圧勝で幕を閉じた。
「お姉ちゃんは早いのだぁ」
ゲリは完敗を認める。
「ゲリ、もっと自分の力をセーブしてスピードをコントロールしないといけないわ」
木を激しく薙ぎ倒していたゲリにフレキはアドバイスをした。
「ごめんさいなのだぁ」
ゲリはフレキにアドバイスをもらって嬉しそうにしている。
「今度、私が力の制御のやり方を教えてあげるわ」
「やったぁーー」
ゲリは大きくジャンプして喜びを表現した。
「ルシスさん、ゲリが薙ぎ倒した木を修復してくれたありがとうございます」
フレキは頭を下げる。
「気にしないでください」
私はニッコリと笑顔で答える。
「・・・」
ヴァンピーはあまりのスピードで白目を剥いてフレキの背中の上で倒れ込んでいる。
「ヴァンピーさん着きました」
「・・・」
フレキが声をかけるが答えはない。
『リフレッシュ』
私は回復魔法をかけた。私の回復魔法は状態異常にも効果がある。呪いなど高度な状態異常は『改ざん』が必要だが、失神などの軽度な状態異常は『リフレッシュ』で十分なのである。
「・・・もう・・・着いたのね・・・」
ヴァンピーの意識は少しもうろうとしている。
「ヴァンピーさん着きました。私とゲリの競争に付き合ってくださってありがとうございます」
フレキは頭を下げる。
「こちらこそ、こんなに早く王都へ連れて来て下さってありがとうございます」
ヴァンピーも頭を下げる。
『グゥーーー』
「たくさん走ったからお腹が空いたのだぁ」
ゲリが無邪気に言う。
「皆さんを食事にご招待します。シリウス城には有能なコックが多数いますので、『ホロスコープ星国』の料理を楽しんでください。でも、ルシスさんの美味しい料理には敵いませんので、その点は理解してください」
「嬉しいのだぁ。早く食べたいのだぁ」
「私も楽しみにしています」
「私もです」
私たちはヴァンピーに案内されて、シリウス城の食堂へ向かった。
「食事が終わりましたら、国王代理のポルックスを紹介したいと思います。フェニちゃんにもこちらへ来るように連絡を入れておきます」
そう言うとヴァンピーは急いで食堂を後にした。
私たちは用意された食事を堪能した。私の作った料理よりかは少し劣るがとても美味しい料理であった。特に焼き立てのパンは、もっちりふかふかのとても美味しいパンであった。私も美味しいパンを作りたいと思った。
「ごちそうさまなのだぁ」
ゲリはとても満足している。もちろんゲリだけなくみんな満足している。
「それでは、謁見の間に来てもらってもよろしいでしょうか」
食事を終えるとヴァンピーが戻ってきて私たちに声をかけた。
「わかりました。すぐにお伺い致します」
私たちはヴァンピーに案内されて謁見の間に入った。
謁見の間は豪華な作りになっている。謁見の間は、ジェミニが己の存在を見せつけるように作った場所である。本来はここには大きなジェミニの肖像画があったが今は撤去されている。
私達はふかふかの高級そうな椅子に座った。
「すごいのだぁ」
ゲリはふかふかの椅子に座って、嬉しそうに飛び跳ねている。
「ゲリ、おとなしくするのよ。今から大事な人に会うのよ」
「うん」
ゲリはフレキに怒られるのが嬉しいみたいである。
「ゲリさん、気楽にしていただいて結構です。あなた方は大事な客人なので、気を遣わないでください。それに、私たちは些細なことは気にしません」
ヴァンピーがにこやかに言った。
しばらくするとポルックスが謁見の間に入ってきた。謁見の間の奥には王様が座る豪華で大き椅子があるが、ポルックスはそれに座らずに、私たちのいるテーブルの席に座る。
「遅れて申し訳ありません。いろいろと忙しくしていまして、やっと時間が取れました」
『ホロスコープ星国』は、フェニの活躍によってジェミニを王から引きずり落として、王不在の状態である。選挙によって新たな王ができるまでは、ポルックスとスコーピオが国の立て直しと選挙の準備をしている。
「こちらこそお忙しい中、お招きいただいてありがとうございます」
フレキと私が頭を下げる。そして、その姿を見て、慌ててゲリも頭を下げる。私たちはヴァンピーから、王の代理であるポルックスに跪くような礼節をする必要ないと言われていた。
「あなたが、フェニさんが言っていたウルフキングのフレキさんですね」
「はい」
「そして、2人の可愛い女の子がフレキさんの妹さんと偉大なる大魔術師ルシスさんですね」
ヴァンピーは、私が作った豪邸や大浴場などを見てポルックスにそのように紹介していたみたいである。
「うん」
ゲリはにこやかに返事をする。
「はい。私が『オリュンポス国』最強の大魔術師のルシス・・・ではなくて『ラストパサー』という冒険者の1人のルシスです」
最初はヴァンピーの紹介にのっかかるつもりだったが、自分で大魔術師というのはかなり痛い人物だと思われると思ったので、きちんと自己紹介をした。
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