第198話 神守聖王国オリュンポス パート7



 「ゾンビ達がこちらに気づいたみたいね」



 数体のゾンビが食事をやめてソール達の元へ歩き出した。



 「ソールどうするの?」


 「夜になるとハデスの命令通りに動き出すわ。今のうちに退治しておきましょう」



 ハデスの神から授かった能力ネクロマンサーは、死者に魂を与えてハデスの忠実な下僕にできる能力である。しかし、忠実にハデスの指示通り動くのは、夜だけであり、昼間は本能のままに自由に動くのである。


 本能のまま自由に動くだけなのでゾンビ同士が連携が取れていないので、C1ランクの『金玉』にとっては大した敵ではないのである。


 

 「私は回復薬で攻撃するわ」



 サクラが言う。



 ゾンビを倒す方法はいくつかあると言われている。ゾンビは死者なのでいくら攻撃しても死ぬことはない。しかし、回復薬または回復魔法をかけると、ゾンビの動きは鈍くるのである。しかし回復薬、回復魔法ではでゾンビを倒すことはできない。


 ゾンビを倒す方法は、炎の魔法で完全に灰になるまで焼き尽くすことである。この方法が1番オーソドックスな倒し方である。しかし、灰になるまで焼き尽くすのは、レベルの高い炎の魔法を扱えないといけない。それ以外にもゾンビの倒し方は色々あるが、ソール達は知らないのであった。



 「わかったわ。動きが鈍くなったら、私が焼き払うわ」



 とソールが答える。


 サクラが近寄ってくるゾンビに回復薬を投げつける。



 ゾンビ達は、餌が舞い込んできた思って、ヨダレを垂らしながらソール達の元へノソノソと歩いて行く。ゾンビ達は、サクラが投げつけた回復薬をくらい、スローモーションのようにカクカクと動く。



 『爆炎黒陽斬』



 ソールは剣を振りかざす。ソールの剣は真っ黒に輝き、熱風と共に黒炎がゾンビを襲う。


 ソールの放った黒炎で数十体のゾンビは一瞬にして灰になる。



 「私の回復薬・・・意味があったのかしら」



 サクラがつぶやいた。



 「このまま一気に、この階にいるゾンビを全て焼き払うわ」



 ソールが言う。



 「わかったわ。私も全ての回復薬を使うわ」



 サクラが言う。



 「やっぱり必要ないので回復薬はなしでお願いするわ」



 とソールが冷たく言う。



 「そうよね。ただでさえ動きの遅いゾンビに対して、さらに動きを遅くする必要はないよね・・・」



 とサクラは申し訳なそうに言った。



 『爆炎黒陽斬』



 黒炎が地下二層にいるゾンビに襲いかかる。黒炎は竜のようにうねりながら、ゾンビを次々と灰に変えていく。


 

 『雷鳴』



 マーニが雷魔法を使う。


 マーニの指先から無数の稲妻がほとばしる。稲妻が直撃したゾンビは一瞬で灰になる。



 『休憩』



 サクラが呟く。魔法の使えない男性はゾンビとの戦い不利である。いくら剣で切り裂いても無駄だからである。なので、何も役に立てそうにないのでサクラは休憩を取ることにしたのであった。


 ソールとマーニが協力して地下二層のゾンビを全て灰にしたのであった。



 「もう終わったのかしら」



 サクラはゴロゴロと寝転がりながら言う。



 「終わったわ・・・と言うつもりだったけど、とんでもないのが残っているわ」



 とソールが額に汗を流しながら言った。


 サクラは、ソールの異変を感じたのでゴロゴロ転がりながら、ソールの元へ駆けつけた。



 「ソール何があったの」


 「あれを見てごらん」



 地下二階の二層の奥には大きな祭壇があった。その祭壇の1番上にソール達を見下ろして、ニヤニヤと笑っているゾンビがいた。



 「あれは・・・アレスね」



 サクラが怯えながら言った。



 「間違いないわ」



 ソールが答える。



 「待っていたぜソール、マーニ」



 アレスが言う。



 「アレス・・・あなたは自我があるの?」



 ハデスの力によってゾンビになった人間には自我はないし人間の時の記憶もない。ただ本能のままに動く人形である。



 「俺を雑魚のゾンビ達と一緒にするな。俺は神の子だぞ」



 アレスは自慢げに言う。



 「ゾンビなのに神の子だなんて面白いわね」



 ソールがアレスを挑発する。



 「俺を挑発しているのか・・・俺はそんなくだらない挑発にはのらないぜ。本当に俺に神の子の力があるか見せてやるぜ」


『勇敢なる鼓舞』



 ソールの挑発にのったアレスであった。


 勇敢なる鼓舞とはどんなに弱い兵士でも強戦士に変える能力である。



 祭壇の下から続々とゾンビが現れた。しかも先ほどのゾンビとは違って、体が赤く輝いていて動きも数段早い。



 「俺の『勇敢なる鼓舞』を受けたゾンビ達は、俺の忠実な僕になり、俺が指示を止めるまで永遠に戦い続ける最強のゾンビなのだ」



 ゾンビ達はソール達に襲いかかる。



 「少し動きが早くなったところで、所詮ゾンビよ」


 

 ソールは、黒炎を纏った剣で次々とゾンビを切り裂いて燃やしていく。


 しかし、ゾンビ達は灰にならず、ドロドロに溶けてスライムのような液体になってソール達に襲いかかる。



 「爆炎黒陽斬」



 ソールは剣を振りかざして、ゾンビスライム目掛けて黒炎を放つ。


 しかし、ゾンビスライムは燃え上がるが、灰にならずにじわりじわりとソール達に近づいてくる。



 「えーーーい、えーーーい」



 サクラはゾンビスライムが襲ってこないように、回復薬を投げつける。


 ゾンビスライムはナメクジのようにゆっくりゆっくりと動き出す。



 「俺の『勇敢なる鼓舞』を受けたゾンビは、どんな炎を受けても灰になることはないぜ。いつまで逃げ切れるかな」



 祭壇の上でアレスは、大声で笑いながら言った。


 

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