第197話 神守聖王国オリュンポス パート6
「あれは、『金玉』のソールさんじゃないのか?」
「本当だ。もしかしたら『金玉』も呼ばれているのかな?」
「たぶん、そうだろう。『雲鎮』も帰ってこなかったしな。次は『金玉』の出番と言うことだろう」
ソール達がギルドに入るとギルド内が騒ついた。そして、ギルドの受付嬢がソールに気付いて一目散にソールの元へやってきた。
「『金烏玉兎』のソールさんですね」
「そうですが・・・何か御用ですか」
「ちょうど良い時にお越しくださいました。申し訳ないのですが、奥のお部屋まで来ていただいてよろしいでしょうか」
ソール達は受付嬢に案内されて奥の部屋に入っていった。
「大事なお話があります」
受付嬢は真剣な面持ちで話す。
「何かあったのですね」
「はい。実は・・・最近アトランティスの地下遺跡で不可解な出来事が起こっているのです。アトランティスの地下遺跡は、ガッリーナの町の有名な観光地の一つです。しかし、最近夜になると地下遺跡から奇妙な声が聞こえるようになったのです。なので、ネプチューン侯爵様の命令で、夜の地下遺跡の捜索を依頼したのですが、誰も地下遺跡から戻ってこないのです。その為、ネプチューン侯爵様の命令で現在は地下遺跡の立ち入りを禁止しました」
「地下遺跡の探索をしてほしいのですね」
ソールは尋ねた。
「はい、そうです。3日に前にC2冒険者の『雲湖朕鎮』に依頼を出したのですが、彼らは帰ってきませんでした」
「『雲朕』ほどの実力者が戻らないとなるとかなり危険な依頼ですね」
「そうです。だからこの依頼の討伐難度はC2ランクに認定されました。なので、この依頼を頼めるのは『金玉』、『珍宝』くらいになります。どうか、この依頼を引き受けてください」
「わかりました。その依頼を引き受けましょう。危険な依頼になりますので、数日間時間をいただいてよろしいでしょうか」
「はい。構いません」
ソールは依頼を引き受けて宿屋に戻ることにした。
「サクラはこの依頼どう思うかしら」
「確実にワナだと思うわ。しかし、ネプチューン侯爵様は何を企んでいるのかしら・・・」
「確かにワナかもしれないわ。でも、何か地下遺跡には秘密があるはずよ。危険かもしれないが、ワナとわかっていたとしても、地下遺跡に行くしかないわね」
「夜ですわ」
急にマーニがつぶやいた。
「どういうことなの?」
サクラがマーニに尋ねる。
「・・・」
「夜・・・ハデスの力ね」
ソールが言う。
「ソール、どういうことなの」
「ハデスの死者を操る能力は完璧じゃないのよ。死者を操ることができるのは夜だけなのよ。ハデスの能力は闇の力を利用して死者に指令を出して動かしているので、昼間はハデスの思いのままに動かすことはできないのよ」
「そうなのね。それなら昼間に探索すれば、危険は少ないわね」
「そういうことよ。馬鹿正直に夜に探索する必要はないわ。でも昼に探索されないように立ち入りを禁止しているわ。だから、数日間様子を探る必要があるわ」
ソール達はそれから数日間アトランティスの地下遺跡の監視体制を調べ上げて、監視が疎かになる時間を特定した。
「お昼休憩時が、かなり監視が手薄になるわね」
ソールが言う。
「そうね。地下遺跡に忍び込むならお昼がいいと思うわ」
サクラが答える。
「明日のお昼に忍び込みましょう」
ソール達は次の日のお昼にアトランティスの地下遺跡に侵入したのであった。
アトランティスの地下遺跡は、ガッリーナ町から歩いて2時間くらいのところにある。馬車で行けば早いのだが、地下遺跡に向かっているのがバレては行けないので、歩いてアトランティスの地下遺跡に向かった。
アトランティスの地下遺跡には10人の警護兵がいる。警護兵は全身黒い不気味な鎧を着ている。黒い鎧には理由がある。神光教団は黒の教団服を着ているからである。なのでこの警護兵達も神光教団の一員である。
警護兵は、お昼になると必ずアトランティスの地下遺跡の近くの建物で食事をする。その時間はアトランティスの地下遺跡の入り口は誰もいない。
警護兵は、危険なアトランティスの地下遺跡に侵入する者はいないと思っているので、警護が手薄になっていると思われるのであった。
警護兵が全ていなくなるのを確認すると、ソール達はアトランティスの地下遺跡に侵入した。
アトランティスの地下遺跡は三層に分かれている。一層目にあたる地下一階は大きな空洞になっていて、アトランティスの地下遺跡から発掘された貴重な品物がズラリと展示されている観光スポットである。ソール達は炎の魔法を使って明るくして、遺跡内部をくまなく探索したが、何も異常は見つからなかった。
「二層目に行きましょう」
二層へ降りる階段は立ち入り禁止の札が貼られていて、二層には関係者以外は立ち入り禁止になっている。
ソール達は階段を降りて地下二階の二層目に到着した。
二層目は一層目よりさらに大きな空洞になっていた。
「何か嫌な感じがしますわ」
ソールが呟く。
「そうね。何かおぞましい魔力を感じるわ」
サクラが答える。
「何か音が聞こえませんか」
ソール達は耳をすませる。
『ムシャムシャ、ムシャムシャ』
何かを食べているような音がする。
ソール達は恐る恐る音がする方に近づいていく。
「屍人が屍を食べていますわ」
体が腐乱した奇怪な屍人が人間を食べていたのであった。
「ハデスの作り出したゾンビね」
「間違いないわ」
ソールは炎の魔法を使って、あたり一面を明るく照らした。
アトランティスの地下遺跡の二層にはたくさんの人間の死体とゾンビで覆い尽くされていた。
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