第205話 神守聖王国オリュンポス パート14



 ジュノはアレスの危機を救ったあと身を挺してアレスを救った。


 ジュノが守ってくれた事により、アレスが受けたダメージは回復し、次はアレスが身を挺してジュノを守っていたのであった。


 アレスはゾンビなので、いくら傷ついても、時間が経てばすぐに回復して元の姿に戻ることができるが、ジュノは人間なので、魔法や回復薬を使用しないと回復できないのである。ゾンビであるアレスは回復薬を持っていないし魔法は使えない。なのでジュノは危機的状況であった。



 「ジュノチン、大丈夫!しっかりして」


 「俺のことはもういい・・・後は任せたぞ」


 「何を言ってるのよ。ジュノチンを置いて戦えるわけないじゃないの。ジュノチン、回復薬は持っていないの」


 「何度も言うが俺のことはいい・・・だから、ソール達と協力してユーピテルを倒してくれ・・・」



 力強くジュノは言った・・・が本心は違った。ジュノは回復薬は持っている。ゾンビの動きを遅くするためにふんだんに使ったがまだ残りがあった。しかし、ジュノの体力はもう限界である。回復薬を飲む力もないのである。もしアレスに回復薬を渡したら、自分で回復薬を飲めないジュノは、アレスに飲ませてもらうしかないのであった。ジュノはアレスに回復薬を飲まされるのを、拒絶していたのであった。



 「ジュノチンを置いて戦えないわ」



 アレスは涙ながらに言った。



 「回復薬はゾンビスライムに使ったらもうないのだ。どうしても回復してくれと言うのなら、ソールに回復魔法を使ってもらうといい」



 アレスが、なかなか自分から離れないので、ジュノはソールに回復魔法を使ってもらう事にした。



 「ソール、ジュノチンに回復魔法を使ってくれ」



 アレスはソールに向かって叫んだ。



 「これを使いなさい」



 マーニはアレスに回復薬を投げた。


 マーニはすぐに察知した。魔法で回復するよりも回復薬を使った方が面白いと・・・


 マーニはアレスにウインクして「うまくやりなさいよ」と合図したのであった。


 アレスもすぐにマーニの意図を読み取って、「ありがとう」とウインクして合図したのであった。



 「ジュノチン、回復薬が手に入ったわ。これで体力を回復しましょう。ジュノチン・・・1人で飲める?」



 心配そうにアレスは言った。



 「大丈夫だ。1人で飲める」



 ジュノは必死で腕を伸ばして、回復薬を掴もうとするが体に力が入らない。腕を伸ばすことすらできないのであった。



 「私が飲めせてあげる・・・」


 

 アレスがジュノに言った。



 「キャーーーー、これを待っていたのよ」



 マーニは悲鳴をあげて喜んだ。



 「大丈夫だ。自分で飲める」



 ジュノは激しく断る。



 「ジュノチン遠慮しないで」



 アレスが回復薬を口に含んだ。



 「キャーーーー、これ以上は見れないわ」



 マーニは顔を手で覆い隠すが指の隙間から鋭い視線で見ていた。



 アレスがジュノを抱きかかえる。



 「ジュノチン、目を閉じていてね。見られていると恥ずかしいわ」



 アレスがジュノに迫る。



 『ヒール』



 ジュノの様子を見兼ねたソールがジュノに回復魔法を使った。


 ジュノはアレスの腕を払いのけて逃げるようにソールの方へ向かった行く。



 「ソール、ありがとう」



 ジュノはソールにお礼を言った。



 「気にしないで」



 ソールは静かに答えた。



 「あーーー、もう少しだったのに・・・」



 マーニが悔しそうに言った。



 「少し強引だったかな・・・」



 アレスは反省した。



 「何を言ってるのよ。恋は少しは強引な方がいい時もあるのよ」



 マーニがアレスを励ました。



 「お前達、いつまで俺を待たせるのだ!お前達の茶番に付き合ってる暇はない。全員まとめてあの世に送ってやるぜ」



 マーニに説教されて大人しくしていたユーピテルが怒りだした。



 『天変地異』



 ユーピテルは神のこの力を発動した。三層の地面が激しく割れて大きな亀裂が至る所に発生し、天井からは、無数の落雷が落ちてきた。そして、どこからともなく無数の竜巻が現れた。


 

 アレスは亀裂を避けて逃げるが落雷が直撃して倒れこむ。


 ジュノも亀裂を避けて逃げるが、竜巻に飲まれて天井まで吹き飛ばされ天井に打ち付けられる。


 マーニはソールを抱えて、風魔法で宙を移動しながら、落雷を避けて竜巻からもなんとか逃げ切る。



 「すばしっこいやつだな」



 ユーピテルはイライラしながら言う。


 アレスは、渾身の力を振り絞って立ち上がる。


 ジュノは天井に打ち付けられて、そのまま地面に落下する。



 『ゼログラビティー』



 ジュノは地面に直撃する寸前のところで、宙に浮いて難を逃れる。



 『黒風白雨』



 マーニが『ゼログラビティー』を発動したスキを狙って、ユーピテルが『黒風白雨』を発動した。


 凄まじい風と槍のような雨がマーニとソールを襲う。



 『爆炎黒陽斬』



 ソールが剣を振りかざして、燃えあがる黒炎を放つ。


 しかし、『黒風白雨』によって、黒炎は鎮火され、そして槍のような雨がソールとマーニを襲う。



 『エアシールド』



 マーニが風のシールドを作って槍のような雨を防ぐ。



 「これで終わりだ」



 ユーピテルは竜巻に乗って、ソールとマーニの頭上に飛び上がった。


 

 「神技『斬撃』『斬撃』『斬撃』」



 ユーピテルは上空から大きく剣を振りかざす。


 ユーピテルの剣からは、波動のような斬撃が無数に現れる。



 『エアシールド』


 『シールド』



 ソールとマーニは協力してシールドを張った。しかし、波動の斬撃はシールドを押しつぶして、2人を切り刻む。


 ソールとマーニは全身を波動の斬撃て切り刻まれて、多量の血を流して倒れ込む。



 「トドメを刺すか・・・」



 「神技『斬撃』『斬撃』『斬撃』」



 ユーピテルは上空からさらに剣を大きく振りかざす。



 「神技『瞬足』『加速』『倍倍』」



 アレスは、もうスピードでダッシュして飛び上がり、ユーピテルにタックルをかました。


 ユーピテルは吹っ飛んで地面に叩きつけられた。



 「神技『剛腕』『倍倍』『倍倍』」



 ジュノは剣を握りしめて、神技を使って最大限までに力を強化して、地面に叩きつけられたユーピテルの頭を剣で切り落とした。



 「やったか・・・」


 

 「忘れたのか、俺はゾンビだぞ」



 転げ落ちたユーピテルの頭が喋りだした。



 「ジュノチン、危ない」



 首のないユーピテルの体が立ち上がり、ジュノに向かって剣を振り落とす。


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