第275話 ホロスコープ星国 パート52


  しばらくして、レオが王都の門の前にたどり着いた。



 「俺は、2番手かぁ・・・」



 レオは、悔しそうな顔をしていた。



 「1番でゴールしたフェニ王は、どこにいるのだ?」



 レオは、門の周りを見渡すが、私の姿を見つけることはできないのであった。



 「くっそーー。俺は3番手かぁ」



 悔しそうにキャンサーが、3番手で王都の門にたどり着いた。



 「キャンサー、フェニ王の姿が見当たらないぞ!」



 レオは、周りをキョロキョロ見渡しながら言った。



 「先に王都へ入ったのではないのか?フェニ王の話では、門を警護しているヴァンピーとは知り合いだと言っていたし・・・」



 キャンサーは、気楽に考えていた。



 「フェニ王が、俺たちを置いて先に行くとは思えないぜ」



 レオは、私を信頼しているのである。



 「確かにそうだな」



 もちろんキャンサーも同じである。



 「私の勝ちよ!」



 ヴァルゴとノスフェラーが最下位争いをしていた。しかし、タッチの差でヴァルゴが勝利したのであった。



 「私は3位と成績はイマイチだったけど、騎乗フォームの美しさでは、ぶっちぎりの一位だったわ」



 負け惜しみを言うヴァルゴであった。



 「ヴァルゴ・・・そんなことはどうでも良い。それよりも、フェニ王の姿が見えないのだ」



 レオは、私のことが心配で、落ち着かなくて、ウロウロしている。



 「先に入ったのではないのかしら?」



 ヴァルゴもキャンサーと同じことを言った。



 「フェニ王が俺達を置いて、先に入るわけがないだろう!」



 レオは、大声でヴァルゴを怒鳴りつけた。



 「そうかしら、ヴァンピーに美味しい料理を食べさせてくれると言われたら、すぐに先に入ってしまう女の子だと私は思ってるわ」



 ヴァルゴの指摘は正解である。しかし、真実は違うのである。



 「ヴァルゴ、フェニ王への侮辱は俺が許さない」



 レオは、私のことをバカにされたと思って、表情が一変した。



 「冗談よレオ!本気にしないでくれるかしら?」



 ヴァルゴは、ビビっているのである。



 「ノスフェラー姉さん、どうなっているのかしら?」



 ヴァンピーは城壁の上から、レオ達を監視していた。ヴァンピーは、ある程度の情報は得ていたが、直接レオ達が仲間になったのを確認したわけではない。なので、用心してすぐには門を開かずに、様子を伺っていたのであった。しかし、ノスフェラーの姿を見て、安心して門を開いて姿を現したのであった。


 ヴァンピーは、ノスフェラーからこれまでの経緯と革命を起こすことを聞かされた。



 「今日はそんな大事な日だったのね・・・それなのにフェニちゃんは、何をしているのよ!」



 ヴァンピーはイライラしていた。



 「フェニちゃんに何かあったの?」



 ノスフェラーは、不安げに尋ねた。


 ヴァンピーは、私がグェイとシーシェに連行されたことを鮮明に伝えたのであった。



 「すぐに救出するぞ」



 レオは、闘志をむき出しにして、今にも王都を滅ぼす勢いで、シリウス城に向かおうとした。



 「ちょっと待ってよ。シリウス城に攻め込むには、まだは早すぎるわ。私達は寝不足で万全の体制ではないわ。きちんと睡眠を取ってから、シリウス城に攻め込むのよ」



 ヴァルゴは冷静に判断した。



 「しかし、フェニ王に何かあってからでは遅いぞ」



 レオは、私のことが心配で、睡眠など取れないのであった。



 「あなたが1番フェニちゃんのことを知っているはずよ。あの子が、そんな簡単に殺されると思っているの」



 ヴァルゴの私の印象は、とても図太い性格だと思っている。



 「シリウス城で、フェニ王に勝てる者などいないわ」



 レオは、声を張り上げて言った。



 「レオ、私がフェニちゃんを助けに行くわ。私なら、1番怪しまれることはないはずよ」



 ヴァンピーが言った。



 「レオ、フェニちゃんのことは、ヴァンピーに任せた方がいいわ。私たちは、きちんと睡眠をとった方が賢明だと思うわ」



 ノスフェラーがレオを説得する。



 「ヴァンピーに任せようぜ。フェニ王は、そんな簡単にやられたりしないぜ」



 キャンサーもレオを説得する。



 「そんなことはわかっている!ヴァンピー、フェニ王の事は任せる。しかし、何かあればすぐに俺に知らせろ!」


「もちろんよ」



 こうして、レオ達は、ノスフェラーに案内されて、ヴァンピーの屋敷で睡眠をとるのであった。そして、ヴァンピーは、シリウス城の地下にある牢屋に向かったのである。



 「シーシェ、さっきの女の子は、どうなったのかしら?」



 地下の牢屋に向かう途中で、ヴァンピーは、シーシェに出くわした。



 「とりあえず、牢屋に閉じ込めておいたわ。あの子は手配書の女の子で間違いないから、すぐにジェミ王へ連絡しないといけないわ」



 シーシェは、手配書の女の子が王都へ来たので、かなり動揺しているみたいである。



 「今はジェミニ王は寝ているわ。なので、早朝に私が報告するわ。シーシェは、王都の門を監視してくれるかしら?」



 ジェミニからは、ウルフキングもしくは、共にいる女の子が王都に訪れてたら、すぐに連絡するように言われている。



 「ヴァンピー、緊急事態よ!夜中でもすぐに報告した方がいいわよ」



 シーシェの言っていることは正しい。しかし、ヴァンピーは報告できないのである。



 「シーシェ、落ち着くのよ。女の子が王都に攻めてきたわけではないのよ!女の子はウルフキングから逃げて、王都に助けを求めに来たのよ」



 ヴァンピーは、ウルフキングが攻めて来るかもしれないと、不安になっているシーシェを説得する。



 「どうして、そんなことが言えるのよ。あの子はウルフキングと共に行動していた聞いているわ。女の子が、王都に来たと言うことは、ウルフキングも王都に来ると言うことよ」



 シーシェは、かなり動揺している。それほどウルフキングを恐れているのである。



 「落ち着いて聞くのよ。もし仮に、女の子が王都へ攻めに来たとしても、馬に乗りながら全力で門に激突するかしら、いえ、そんなこと絶対にしないはずよ。だとしたら、考えられるのは一つだけよ。全力で、ウルフキングから逃げてきたのよ」



 私の門への激突は、無駄にはならないのである。



 「確かにそうね・・・」



 シーシェは、ヴァンピーの説明に納得した。



 「それなら、なおさら王都の門の警備を強化するためにも、ジェミニ王に報告をしないといけないわ」



 シーシェの言い分はもっともである。



 「私はさっきまで、王都の門を監視していたわ。しかし、ウルフキングは現れなかったわ。ウルフキングはまだ、女の子が逃げ出したことには気づいていないと思うのよ。なので、報告は早朝でも遅くはないわ」


 「でも・・・」



 まだシーシェは納得はいかない。



 「わかったわ。私がきちんと報告するから、シーシェは門に戻って、ウルフキングが来るか監視してちょうだい」



 ヴァンピーはジェミニに報告すると嘘をついてのであった。

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