第274話 ホロスコープ星国 パート51


 ★フェニ視点に戻ります。



 私たちは、夜中に王都シリウスに着くように、アケルナルの町から、アダラの村に戻った。そしてアダラの村で一泊して、次の日の昼過ぎに、王都シリウスへ向かう事にした。


 私たちは、国王軍との全面戦争は避けたいので、レジスタンス軍の協力は断って、私とレオ、キャンサー、ヴァルゴ、ノスフェラーの5人で、王都シリウスに侵入することにした。サジタリウスとピスケスは、王都の近くで、アリエスの監視を任せることにしたのであった。


 王都には、『星の使徒』はジェミニとカプリコーンとスコーピオしかいないはずなので、実質的には、相手は2人である。なので、大きな戦闘にはならないとレオは判断していた。しかし、それはヴァルゴの『魅惑』で、シリウス城内の兵士を魅了して、戦意をなくすことに成功した事を前提にしている。


 私たちは、計画通りに日が暮れて、夜中になった頃に王都シリウスの門に到着できそうである。流石に夜遅いので、ヴァンピー目当ての、黄騎士団の兵士たちは、任務を切り上げていたので、王都の門には、王国魔法士団しかいないのであった。


 私は、もうスピードで走るベガちゃんの激走により、1番最初に王都の門の付近に到着した。



 「私が一等賞ですぅ〜」



 私は、ガッツポーズをして喜んだ。しかし・・・



 

★少しだけ時間が戻ります


 レオからは、慎重に王都の門を目指そうと、私は言われていた、しかし、王都に向かう途中から、私の競走魂に火が付いて、誰が先に王都の門に着くか、競走することになったのであった。


 足の速さなら『高速横走り』を使うキャンサー、『ライオンモード』での四足歩行のレオのスピードは、かなり早いが、馬を置いて行くわけにもいかないので、乗馬での競走になった。


 身軽な私が、1番有利だと思っていたが、ベガちゃんのぐうたらな性格と、私の乗馬技術の低さが目立って、かなりの大差で、私はビリを独走していた。



 「フェニ王、真剣勝負に私は手を抜くことはできません」



 巧みな乗馬テクニックで、トップを独走するレオが呟いた。



 「『高速横走り』さえ使えたら、俺がトップのはずなのに・・・」



 2番手はキャンサーであった。



 「お馬さん、私のためにもっと早く走るのよ」



 キャンサーから、100mくらい離れた3番手のヴァルゴは、馬を『魅惑』して、やる気を出させようとするが、馬にヴァルゴの美しさを理解できるわけもないので、普通にパカパカと走っているのであった。



 「私は、あまり乗馬は得意ではないのよ」



 ヴァルゴのすぐ後ろを走っているのが、ノスフェラーであった。


 そして、ノスフェラーから500m後方を、のんびりと走っているのが、ベガちゃんに騎乗している私であった。



 「ベガちゃん、がんばってよー!みんなの姿が見えないよ!!」


 「ブヒヒーーーン」



 威勢良く鳴き声をあげるが、ベガちゃんのスピードは、どんどん落ちて行くのであった。



 「ベガちゃん、このままだと最下位になっちゃうよ」



 私は、泣きそうな顔でベガちゃんに声をかけるが、ベガちゃんは、これ以上早く走ることはできないのであった。



 「ヒヒン・ヒヒン」



 ベガちゃんは『休憩しよう』と言って、走るのをやめしまった。



 「ベガちゃん、なんで止まるのよ!!!」



 私には馬の言葉わからないので、なぜベガちゃんが止まったか分からないのである。



 「ベガちゃん、早く王都へ行こうよ。王都へ行けば、またヴァンピーの厩舎で美味しい果物をたくさん食べれるよ!」



 私は、ベガちゃんが止まった理由は、お腹減ったのだと思ったのであった。なので、王都に着いたらヴァンピーの厩舎で、美味しい果物が食べれると教えてあげたのであった。



 『ブヒヒーーーン・ブヒヒヒヒーーーン』



 私の推測は的中した。ベガちゃんが、天にも届きそうな大きな声で鳴いた。そして、先程のやる気ない死んだ目から、燃え盛る炎のように、ベガちゃんの目が爛々と輝き出したのであった。


 ベガちゃんは、さっきまでとは全く違うフォームになり、まるで空を飛んでいるような軽やかなステップで、走り出したのであった。


 ベガちゃんが、天馬のような空を駆け抜けた。そして、あっという間に先頭を走るレオに追いついてのであった。



 「さすがフェニ王、短時間で乗馬スキルを上げたのですね」



 私に追いつかれたレオは驚きはしない。レオは、私ならすぐに追いついてきてもおかしくないと思っていたのであった。



  「ヒヒーン・ヒヒーー」



 ベガちゃんは、雄叫びを上げながら、スピードはさらに加速していく。気づけば、1番で王都の門の付近に到着したのであった。



 「私が一等勝ですぅ〜」



 私はガッツポーズをして喜びを表現した。




 「ちょっと、止まりなさい」



 私が王都の門に近づいた時、目の前に小柄な女性が現れて、私の行手を遮ったのであった。



 『ピョッン』



 ベガちゃんは、小柄な女性を飛び越えて、門を突っ切ろうとしている。



 「ベガちゃん、止まって!!!門を通るには手続きが必要なのよ」



 私は、ベガちゃんに止まるように説得をする。


 しかし、ベガちゃんには食べ物のことで頭がいっぱいである。私の説得に耳を傾けることなく、門に向かって突っ込んでいく。



 「ベガちゃん、止まって、門が開かないと入れないよ」



 私は大声で叫ぶ。


 しかし、ベガちゃんもバカでない。ベガちゃんは門の手前1cmのところで急ストップしたのであった。ベガちゃんが急に止まったので、その反動で私はそのまま門に飛ばされて、門に激しくぶつかって、気を失うのであった。



 「この子絶対に怪しいわ」



 門を守っている王国魔法士団の1人シーシェが、倒れている私を指をさして言った。



 「その子は手配書の子だわ」



 もう1人の門番のグェイが、目を見開いて言った。



 「拘束するのよ」



 シーシェが指示を出す。


 そして、私は気を失ったまま、グェイに担がれて、シリウス城の地下牢に連行されるのであった。



 「フェニちゃん・・・何をしているのよ!!!」



 王都の門の城壁で、全ての経緯を見ていたヴァンピーが、唇を噛みしめて、イライラしているのであった。



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