第214話 神守聖王国オリュンポス パート23
ヘルメスは派手な金色の馬車は目立つので、馬車を途中で捨てて別の馬車で、イージス伯爵の屋敷があるプラムの町へ向かった。
数日後、プラムの町に到着したヘルメスは、雷霆を携えてイージス伯爵の屋敷を訪れた。
「ヘルメス、上手く王子は処理できたのか?」
「作戦通り、ディービルの森で魔獣の餌にしてきました」
悪そうな顔をしてヘルメスが言った。
「手筈通りだな」
「はい。思わぬ助っ人が乱入したので、思ったより簡単にジュピターをディービルの森へ誘うことができました」
ニヤリとしながらヘルメスが言う。
「思わぬ助っ人とはどう言うことだ?」
「私たちがキャロト町で食事をしていたところ、女性に変装していた王国騎士団の副団長のジュノがジュピターに近寄ってきたのです」
「魅了のジュノか・・・男なのに美しい顔立ちのジュノのファンは多いと聞いたことがあるぞ」
「確かにジュノは美しい顔をしていました。だから、ジュピターは女装をしたジュノに優しくされて、なんでもペラペラと喋ってジュノに情報を提供していました」
「ジュノの美しさなら、仕方ないのかもしれない」
イージス伯爵は納得した。
「なので、私もジュノに騙されたふりをして、ジュピターを上手くディービルの森へ行くように誘導したのです」
「そうなのか。それよりも、ジュノの女装のことをもっと教えてくれ」
「えっ・・・」
ヘルメスは困惑した。
「俺もジュノに騙されないように、しっかりとジュノの女装姿を把握する必要があるのだ」
イージス伯爵は力強く言った。
「わかりました。ジュノは髪の色をピンクに染めて、キュートに見えるように頬紅をつけていました」
「うむうむ。それで?」
「化粧は控えめでしたが、とても綺麗な女性に変身していましたので、知らない者が見たら男性だとは誰も思わないでしょう」
「ほほう。それは素晴らしいな」
満面の笑みでイージス伯爵は言った。
「ジュノの件はこのくらいにして、雷霆はどういたしましょう・・・」
「雷霆などどうでもいいわ」
イージス伯爵は、ヘルメスから渡された雷霆を窓から放り投げた。
「雷霆よりも、もっとジュノのことを教えてくれ」
実はイージス伯爵はジュノの大ファンであった。窓から捨てられた雷霆は、ヴィスタが急いで取りに行った。
ヘルメスは、イージス伯爵にジュノのことを、根掘り葉掘り聞かれてかなり疲れていた。
「ジュノが『金玉』と同行しているのか・・・やはりネテア王妃の味方になった方がいいかもしれないな」
イージス伯爵は、初めからジュノがいる王国派を支援していた。しかし、王国騎士団が、デレク王につくか、ネテア王妃につくかわからないので戦況を見て判断する予定であった。なので、どんなにネプチューンが優勢であっても、ジュノがいないネプチューンを支援するつもりはなかったのである。
「ヘルメスは、今後の展開はどう予想している」
イージス伯爵がヘルメスに聞いた。
「ユーピテル様を復活させたネプチューンが優勢なのは変わりません。もしアポロ公爵が用意する神剣を手に入れたら、デレク王もネテア王妃も殺されてしまうと思います」
「ユーピテル様はそれほど強いのだな」
「はい。ユーピテル様はこの国で唯一のAランク冒険者でした。人類最強なのは間違いないです」
「それならユーピテル様が療養されているアトランティスの地下遺跡に向かっているジュノはどうなる?」
「ジュノだけでなく『金玉』は全滅するでしょう。地下遺跡にはアレスもいると聞いています。ゾンビとなったアレスもかなりの強敵です」
「こうしてはいられないぞ。すぐに出陣するぞ」
「どういう事ですか?我々は、もう少し動向を確認したから動き出す手筈ではなかったのですか」
「何を悠長なこと言ってるのだ!今はジュノのピンチなのだろう?それならば、俺がジュノを助け出したら、俺はジュノから尊敬の眼差しで感謝されるはずだ。いや、それだけに止まらないだろう。もしかしたら、俺の勇姿を見て愛の告白をしてくるかもしれないぞ」
イージス伯爵は興奮している。
「・・・」
ヘルメスはイージス伯爵に協力したこと後悔している。
「よし、散髪士を呼んでこい」
「どう言うことですか?」
「そんなこともわからないのか!ジュノを救い出すときに、こんなボサボサな頭で登場できるか!ピンチを救う勇者は身だしなみも大事なのだぞ。頭脳戦ばかりしているヘルメスには、わからないことだったかな?」
嫌味っぽくイージス伯爵は言った。
「好きにしてください」
ヘルメスはそういうと屋敷から出て行った。
「おい、あのかっこいい鎧はどこにある。それにあの兜も必要だ」
イージス伯爵は、ジュノにカッコいい姿を見せようと必死であった。
「よし、準備が整ったぞ」
イージス伯爵のお洒落な装いが整ったのは次の日の夜であった。
「今から、ジュノを救いにアトランティスの地下遺跡を目指すぞ」
イージス伯爵が騎士団達に言った。
「本当に参加するのか?」
ヴィスタがヘルメスに問いかけた。
「予定変更です。このままイージス伯爵について行きますが、俺達はネプチューン側に寝返ります」
ヘルメスは小声で言った。
「雷霆は俺が預かりる。俺は俺の判断でこれからは行動する」
ヴィスタは、ヘルメスから雷霆を取り上げた。
「何を言っているのですか!俺に従えば全てうまくいくのです」
ヘルメスは声を荒げる。
「ヘルメス、お前の指示にはもう従わない」
ヴィスタはキッパリと言った。
「兄上、雷霆を返してくれ。あまり俺を怒らせない方がいいぞ」
ヘルメスの目が赤く光った。
「うわーーーなんだあれは!!!」
イージス伯爵の騎士団が悲鳴をあげる。
イージス伯爵の率いる騎士団が集まった広場に無数の水球が落ちてきた。
『ドーン・ドーン』『ドーン・ドーン』『ドーン・ドーン』
空から降ってきた無数の水球によりイージス伯爵の騎士団が全滅した。もちろん全滅した中にはヘルメスの姿もあった。
ヴィスタは、雷霆の力によって無傷であった。
「神の天罰が下されたのですね」
ヴィスタは空に向かって祈りながら言った。
しかし、それは天罰ではなく、ただのとばっちりであった。
私は後にこの『イージス伯爵領に落ちた天から鉄槌』の話を聞くと心が痛むのであった。そう・・・イージス伯爵領に落ちた無数の水球は、私がデコピンで弾いたモノであった。
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ポロンさんのイメージイラストです。
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