第256話 ホロスコープ星国 パート33
「痛いですぅ〜」
私は思わず叫んでしまった。
「申し訳ありません」
レオは、土下座の姿勢を一切崩さずに私に謝る。私はレオの真摯な対応に文句を言う事はできない。
「私も急に止まれなくて、ごめんなさいです」
「それは私への攻撃をやめてくれたからです。全て私が悪いのです」
レオは、ずっと土下座をしながら頭を下げなら言っている。レオは、それほどまでに私を恐れているのだろうか?
「もう、私への敵意はないのですか?」
私は、自分の安全を確認してみた。
「もちろんです。私は戦わずにもわかるのです、貴方様には絶対に勝てないと。私はギリギリまで貴方様に勝てる可能性を模索していました。しかし、赤く輝く剣に対抗できる手段は全くないと悟りました。私は炎系の相手には絶対勝てる自信がありました。しかし、貴方様には絶対に勝てないと判断しました。私は強い方を尊敬しています。私の忠義をジェミニ王から貴方様に変更いたします」
レオは敗北を認めて、さらに私に忠義を尽くすと言っているのであった。
「デヘヘヘ」
私はニヤけてしまった。決して自分を強いと褒めてくれたからではない。リプロ様が下さったティルヴィングの剣を褒めてくれたからであった。ティルヴィングがなければ、レオは私に降伏など絶対にしなかっただろう。私は炎系魔法がメインなので、レオにとっては相性の良い相手であるからである。
「貴方様のお名前を聞かせてもらえないでしょうか?」
レオは、心を込めて言った。
「私はフェニです。フェニちゃんと呼んでください」
私は満面の笑みで言った。
「私は『星の使徒』のレオと言います。今後はフェニちゃんの為に忠義を尽くします」
レオは清々しい笑顔で言った。
「ライちゃん、頭を上げてくれていいのですよ。もう私とライちゃんはお友達なので、そんなにへりくだらなくてもいいのですぅ〜」
「ありがとうございます。それでは、お言葉にあまえさせてもらいます」
レオはスッと立ち上がり、私のもとへ歩いてきた。
「レオ、俺はどうしたらいいのだ」
遠くから、私とレオの戦いを観戦しながら、ウルフキングがいつ現れないか監視していたキャンサーが言った。
「俺は、フェニちゃんの仲間になった。お前も遠くから見ていて、フェニちゃんの強さは理解しただろう。それでもフェニちゃんの邪魔をするなら、俺がお前を倒すことになるだろう」
レオは、私を守る様に私の前に立ちはだかって、キャンサーに言った。
「俺は、お前と戦うつもりはない。それどころかお前の考えに賛成だ。俺もフェニちゃんの仲間になってやるぞ」
レオと違って、キャンサーは、偉そうに上から視線で私を見ながら言った。
「あの人感じ悪いですぅ」
私はレオに、頬を膨らませて、拗ねるように言った。
「キャンサー、その態度はフェニちゃんに対して失礼ではないか!」
レオは、顔を真っ赤にして、怒りをあらわにしたのであった。
『ライオンモード』
レオは、ライオンに変身してキャンサーを威嚇した。レオの私へ忠義は本物であった。
「レオ、待ってくれ!俺の言い方悪かった。俺も仲間に入れてください」
キャンサーは頭を下げて嘆願したのであった。
「フェニちゃんどうしますか?」
レオは私に問いかける。
「どうしようかな」
私は小悪魔のような悪い顔になっている。
『高速横走り』
キャンサーは『ゾディアックサイン』の能力を発動した。
キャンサーは右往左往に『高速横走り』で動き回るのであった。
『キャキャキャ』『キャキャキャ』
私はキャンサーの動きが面白くて、大笑いをしたのであった。
「面白いですぅ」
私は大声で笑いながら言った。
「こんな動きもできます」
キャンサーはそう言うと、次はナナメ走りをした。キャンサーの能力はあらゆる方向へ高速で走ることができるのであった。人間は基本、前にしか動くことしかできない。後方、左右、ナナメに自在に高速で走れる人などいない。しかしキャンサーはどのような方向にも自在に動けるのであった。
しかし、その動きはとても滑稽かつ奇妙で面白いのであった。なので、私の笑いのツボに入って、笑いが止まらないのであった。
「キャンサーさんとても面白いですぅ」
「そうでしょう。私の動きはとても面白いと評判です」
キャンサーも自覚していた。しかも、面白いと言われることに喜びを感じていたのであった。なので、キャンサーは重くなった場の空気を変えるために、『高速横走り』を披露したのであった。
「フェニ様、私もレオと同じように仲間にしてください」
キャンサーは頭を下げて言った。
「いいですよ」
私は即答した。
「でも、私を背中に乗せて、さっきの動きをして欲しいです」
私は『高速横走り』をとても気に入ったのであった。
「喜んで」
キャンサーは、嫌な顔ひとつ見せずに、私を背に乗せて、『高速横走り』をしてくれた。
『キャキャキャ』
「楽しいです」
私は大はしゃぎしているのであった。
私とキャンサーが楽しく遊んでいる姿を見ている人物がいた。
「どうなっているのですか・・・」
それは、スコーピオであった。
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