第371話 竜人国家ユグドラシル編 パート7


 世界樹の頂上からセキランの町に戻ってた僕たちは、エキドナの屋敷に案内された。セキランの町に他の種族が来ることはほとんどないので、宿屋などは存在しないのである。竜神族は天空の町セキランでのんびりとスローライフをしているが、一部の選ばれし竜人のみが人界へ行って、人界の平和を管理している。



 「リヴァイアサンは地底国家に戻らないといけないから、私の家に泊まるといいわ」



 セキランの町には大きな屋敷しかない。竜人族は少数民族で寿命も長く同族間の争いもしないので、富が均等に割り振りされている。世界樹の大地は、あらゆる食物の育ちが良く食べもにに困ることもない。また、家畜も盛んでいろんな動物を人界の大地から手に入れてセキランの町で食用として家畜されているのである。


 竜人族は魔力も高く屋敷なども魔法で建築するので、みんなで協力して屋敷を建築するのでコストもかからないのである。



 エキドナの屋敷の大きな庭にも家畜場・畑があり普段の食事は自給自足で補っている。



 フェニはエキドナの大きな屋敷に泊まれると知って嬉しくてはしゃいでいたが、フェニ以上にレオのはしゃぎようが半端ではなかった。



 「これは婚約の申し込みと受け取っていいのですか!」



 と、とんでもない発言をしてエキドナを困らせていた。



 しかし、エキドナの父であるテュポンの恐ろしい形相を見て、すぐに平謝りしてのである。



 「晩御飯は、私が腕をふるうから楽しみにしてくだいさいね」



 エキドナが素敵な笑顔で言った。



 「これは・・・婚約の申し込みのはずだ」



 レオはボソリとつぶやいた。



 「ライちゃん違うですぅ。ただの食事のご招待ですぅ」



 フェニは呆れた顔で囁く。



 「フェニちゃんは、まだ子供だからわからないのです。女性が男性に腕をふるって料理を出す時は、婚約したいという意思表示なのです」



 レオは力強くフェニに力説する。



 「違うと思うですぅ」



 フェニは納得がいかない。



 「そんなことはありません。エキドナ様の私に対する対応は恋心以外考えられません。世界樹の頂上を目指すとき私を強く抱きしめてくれました。あの時私は確信したのです。エキドナ様は私に恋をしているのだと・・・」


 「違うのですぅ。あれはライちゃんがエキちゃんから落ちそうになったので、助けてくれただけですぅ」


 「フェニちゃんの目には、そう映っていたのかもしれませんが、実際は違うのです。私を抱きしめた時エキドナ様の鼓動の激しさを感じました。あの鼓動の激しさは私へ愛の証だと思うのです」



 レオは嬉しそうに言った。



 「違うのですぅ。エキちゃんはリヴァちゃんとのスピード勝負に必死で鼓動が激しくなったのですぅ」



 フェニは完全に否定をするが、レオは食事の準備が出来るまで、ずっとフェニに力説するのであった。僕はそんな微笑ましい光景をそっと眺めていた。僕はレオに現実を突きつけるのは可哀想だと思ったからである。


 エキドナの作った美味しい料理を食べ終えた後、僕はフェニだけを連れて屋敷の外に出た。外は光球が消えて、綺麗な星空が作り出されていた。



 「お星様があるのですぅ」



 フェニは星空を見て感動していた。



 「そうだね。とても綺麗だね。フェニ、大事な話があるのだよ」


 「もしかして、帰ってしまうのですぅか・・・」



 フェニは寂しそうに俯いた。



 「明後日までには帰らないといけないけどそのことじゃないよ」


 「・・・」


 

 フェニは俯いたままである。



 「実は僕は亜人じゃなくて魔人なんだよ」


 「リプロ様は魔人なの?」


 「そうだよ。ビックリしたかな?」


 「かっこいいですぅ。私も魔人になりたいですぅ」



 フェニの目がキラキラと輝いている。



 「フェニは不思議な果実を食べて魔人に近くなったはずだよ」


 「そうだったですぅ。お揃いのツノも生えたので嬉しいですぅ」



 フェニはツノを触ってニコニコとしている。



 「僕の推測だけど、フェニが魔人に近くなったのは僕の責任でもあるのだよ」


 「どういうことですぅか」


 「フェニに『フェニックス』の能力を与え得たことは説明したよね」


 「はーーい」


 「魔人から力をもらった者の魔石は魔人に近い体質に変わるのだよ。そして、フェニはそれに加えて不思議な果実を食べたから、より魔人に近くなったのだよ」


 「嬉しいですぅ。リプロ様に近づけたですぅ」



 フェニは本当に嬉しくて喜んでいた。


 僕は不思議な果実は食べた者は、その人の体質に沿った力を向上すると推測したのである。フェニは魔人の能力が入っていたので、その能力を増大させたのだと僕は思った。



 「ツノがあると生活が不便になるかもしれないよ」



 人界でツノが生えている人間の姿をしていれば亜人だと勘違いされるだろう。人界では亜人を差別する国も多いと聞いているので心配なのである。



 「問題ないですぅ。私はリプロ様に近づけたので幸せですぅ」



 フェニはニッコリと笑う。



 「フェニがそう言ってくれるのは嬉しいよ。でも、生活が不便になるのは僕の責任でもあるので、フェニにツノを隠せる人間に化ける方法を教えてあげるよ」



 僕は今回は人間に変身して人界に来ている。その方法をフェニにも教えてあげるつもりである。



 「このままでもいいけど、リプロ様に教えを乞うですぅ」


 「習得するには少し時間がかかるから、フェニも一緒に魔界へついて来る?」


 「いいのですぅか?」



 フェニはとても嬉しそうに微笑んだ。




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