第120話 ターニプ防衛パート7

  


 ワニパラ団は戦線離脱したので、残るはダーシンシンだけになった。ダーシンシンは、トールさんに頭を殴れられて怒りの頂点に達していた。


 「ゴリパンチを喰らいやがれ」


 ダーシンシンは、トールさんに近づきボクサーのように鋭いパンチを連打する。ゴリラの握力、筋力は動物界No.1と言われている。なので、そのパンチ力の破壊力は鋼鉄をも砕くのである。


 しかし、猫の瞬発力も動物界のトップクラスであり、しかも柔軟な筋肉を持ち備えてバランス感覚も優れている。猫の獣人ならば・・・しかしトールさんは猫の獣人ではないのである。


 ダーシンシンの破壊力のあるゴリパンチがトールさんを襲う。トールさんは風魔法を使い、的を絞らせないように俊敏に動き回る。ゴリラの視力は人間とさほど変わらない。なので、トールさんの素早い動きに、ゴリパンチは空を斬るのであった。



 「ちょこまかと逃げおって猫野郎め。お前を相手にしているとブランシュを思い出すぜ」



 ブランシュとは、ティグレさんの奥さんで猫の獣人である。



 「お前のパンチが遅すぎるだけだ。そんなハエが止まるようなパンチなど全然怖くはないぞ」


 「ゴッホ、ゴッホ」



 ダーシンシンは、雄叫びを上げながらさらにドラミングをした。


 すると、ダーシンシンの体は銀色に輝き出した。



 「次は逃さないぞ」



 ダーシンシンは、先ほどと同様に鋭いパンチを連打する。シルバーコングモードに入ったダーシンシンのスピードは強化されており、先程の数倍のスピードでパンチを連打する。


 トールさんは、素早く避けるがダーシンシンの高速ラッシュパンチを、完全に避けることができず、ダーシンシンのパンチを食らってしまう。



 「ぐはっ」



 ダーシンシンのパンチを食らったトールさんは5mくらい吹っ飛んだ。



 「やばいなこれは」



 ダーシンシンのパンチにより、トールさんの鎧は砕け口から血を吐き出している。



 「俺のパンチを食らって、生きているとはしぶとい奴だな」


 「こんなへなちょこパンチで、死んでたまるか」


 「強がっていられるのも今のうちだけだ。次は確実にトドメを刺してやる」



 ダーシンシンは、両手を地面につけてナックルウォーキングでトールさん目掛けて突進してきた。


 トールさんは、先程のダーシンシンのパンチのダメージはかなりのものであり、避けようとするが、体がいうこと聞いてくれない。



 「喰らえ!ゴリアタック」



 ダーシンシンは体を丸くして、転がりながらトールさんに突進した。



 「俺の足よ動きやがれ!」



 トールさんは、渾身の力を振り絞って風魔法を使いジャンプした。紙一重で、ダーシンシンのゴリアッタクを回避して、上空へ逃げることができた。



 そして、トールさんは、空中の上で回復魔法を使って、ゴリパンチのダメージの回復に努める。



 「空に逃げるとは卑怯な奴め。これでも喰らえ!」



 ダーシンシンは草を引っこ抜くかのように、森の大木を簡単に引っこ抜き、トールさんに目掛けて大木を投げつける。


 動物界No.1の筋力で投げつけられた木のスピードは、銃弾のように速く飛んで行く。しかし、ダーシンシンはノーコンのため、宙に止まっているトールさんに全く当たる様子はない。



「あのゴリラが、ノーコンで助かったぜ。これで回復に専念できるぜ」


「すばしっこい奴め。全然当たらないぜ」



 ダーシンシンは、自分のコントロールの悪さに全く気付いていないのであった。



 「だいぶ回復出来たみたいだ。反撃するか」


 「いつまでも逃げていないで、かかってきやがれ」


 「今から行くぜ」



 トールさんは上空から降りて、風魔法を使ってダーシンシンの周りを高速で動く、あまりの速さのために、ダーシンシンの目には、トールさんが複数人いるかのように見える。



 「どれが、本物だ・・見分けるのは面倒だ。全て殴り倒してやる」



 ダーシンシンは、トールさんの残像に向かってゴリパンチを繰り出す。



 「わかったぜ。本体は周りにいると見せかけて、最後は頭上から攻撃するきだな。だから本体は上だぁー」


 ダーシンシンは柄にもなく頭を使ってみた。ダーシンシンは上空を見上げ、右手に力を込めて、渾身の一撃のゴリパンチを放つ・・・・



 「あれ、いないぞ・・・」


 「背中がガラ空きだぞ。サンダーライトニング」



  ゴリラの知能は他の動物に比べて高い方である。なので、トールさんは、ダーシンシンが幻影に惑わされることなく、先の行動を読んで上空からの攻撃を警戒すると予測していたのであった。なので逆手を取って、トールさんは、ひたすらダーシンシンの周りを動き続けていたのであった。


 ダーシンシンの強靭な肉体は、物理的な攻撃ではびくともしないと感じていたので、トールさんは魔法を使うことにしたのである。



 「ぐわっ」



 ダーシンシンの体に電流がほとばしる。ダーシンシンは痙攣して悲鳴をあげる。



 「ビリビリパンチを、お見舞いしてやるぜ」



 トールさんは、ダーシンシンには雷系の魔法が有効だと確信したので、トールさんは、拳に電気をまとい、ダーシンシンをサンドバックのように殴りまくる。


 ダーシンシンの属性は炎である。なので、電撃には弱いのであった。


 ダーシンシンは、両手をクロスにして防御に専念するが、トールさんの、ビリビリパンチは、皮膚を通して全身に電撃を送り込むので意味がないのであった。



 「グギャーー」



 ダーシンシンは、防御しても意味がないことに気付いて、トールさんのビリビリパンチをゴリパンチで対応することにした。


 しかし、電撃を食らって体が痺れているので、動きが鈍くてゴリパンチは、トールさんには当たらない。トールさんのビリビリパンチの猛攻を受けて、ドラミング効果が解けたダーシンシンは元の黒い毛並みに戻る。


 トールさんは、ダーシンシンの身体強化が途切れたチャンスを見逃しはしない。



 「今ならいけるぜ」



 トールさんは、ハンマーを大きくし強く握りしめて、ダーシンシン目掛けて大きくジャンプする。



 「メガトンハンマーーーを喰らいやがれ」



 トールさんは、大きなハンマーを振り落とす。


 ダーシンシンは、危機を感知して両手で頭を覆い隠す。


 しかし、トールさんのメガトンハンマーの方が先にダーシンシンの頭を砕く。



 「グギャーーー」


 

 ダーシンシンは、目を丸くして倒れ込んだ。

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