第118話 ターニプ防衛パート5

  


 「なぜ、このような事態になったのかは後で確認するとして、大事な問題から片付けよう」


 「そうだな。1番の問題は残りの1食を誰が食べるかだな」


 「そうだ」


 「しかし、隊長である俺が食べるのが1番妥当ではないか」



 とダーシンシンが言う。



 「それは違うな。1日かけてわざわざ応援にきたのだ。感謝の気持ちを込めて俺に譲るのが正解だろ」



 とクロコダイルが言う。



 「途中までは正しい意見です。しかし、クロコダイル兄さんは、このワニワニパラダイス団のリーダーだよね。リーダーたる者は部下に配慮を持ってこそ素晴らしいリーダだと思う。なので。このアリゲーターが食事をもらいます」



 とアリゲーターが言う。



 「お待ちください、アリゲーター兄さん。その考えから考察すると、最年少の私ガビアルに食事を譲ってこそ、兄としての風格が保たれるのではないでしょうか」



 とガビアルが言う。



 「ガビアルその考えは全て間違っているわ。あなた達はみんな男性でしょ。女性である私カイマンに食事を譲るのが紳士たる振る舞いだと思いますわ」



 とカイマンが言う。



 「カイマン嬢、クロコダイルから聞いたのだが、今はダイエット中ではないのかな。君の気持ちに配慮して、このダーシンシンが食事をいただく事にしよう」



 とダーシンシンが言う。



 残り一つの食事をめぐって、ダーシンシンとワニワニパラダイス団が揉めているのであった。



 「このままでは、誰が残りの一食を食べるか決まりそうにないな」


 「そうだな」


 「そうです」


 「そうだ」


 「そうですわ」



 「こうなったら仕方がない。デス勝負をするしかないな」


 「そうだな」


 「そうです」


 「そうだ」


 「そうですわ」



 獣人の国では争い事が起こったら、それを解決する手段としてデス勝負をするのである。デス勝負とは、それは・・・ただのじゃんけんである。


 しかし、これには大きな問題があるのである。それは、ワニの手はゴツくてとても不器用なのである。なので、チョキを出すことができないのであった。


 なので、ゴリラの獣人のダーシンシンはパーを出し続ければ、負けることはないのであった。しかし、それは、ワニの獣人も承知である。なので、ワニの獣人がパーを出し続ければ勝負は一生終わることはない。このデス勝負はダーシンシンが、いつチョキを出すのかがこの勝負の鍵になるのであった。


 ダーシンシンは、最初は様子を見るためにパーを出す事にしていた。いきなり勝負に出るのは危険だからである。



 「いくぜ、じゃんけんぽん」



 ダーシンシンは、余裕の笑みを浮かべて、パーを出した。



 「チョキ」


 「チョキ」


 「チョキ」


 「チョキ」



 ワニワニパラダイス団は、手を出さずに言葉でじゃんけんをしたのであった。



 「ガーーーーーーン」


 「ダーシンシン隊長、策に溺れましたね。今は、獣人界のデス勝負は口頭で勝負するのが、主流になっているのですよ」


 「俺のステーキが・・・・」


 「俺たちは仲良く四等分してステーキを食べようじゃないか」


 「それがいいな」


 「そうしよう」


 「そうね」


 「俺にも、一口分けてくれ」


 「デス勝負で負けたので、一切れたりとも渡すことはできません」


 「バニーーー料理長。俺の分のステーキを出しやがれ」


 「ダーシンシン隊長、もう猪の肉が残っていません。昼食までには別の物をご用意いたします」


 「昼まで待てるかぁー。今すぐ最高級の料理を用意しろ」


 「ダーシンシン隊長、バジャー様が3獣士になられてから、争いが絶えることがありません。その為、食料の調達も大変になっています。鉱山の次に、ドワーフの首都を襲うのも食糧難のためだと、ダーシンシン隊長が1番知っているしょう。なので、貴重な食材を簡単に出すわけにはいきません」


 「俺に口答えするのか」


 「貴重な食材を預かる者として当然の意見だと思っています。ティグレ様がいた頃は、獣人の国も平和でいい国だったのに・・・」


 「偉そうなこと言いおって、そもそも、お前達が俺たちの食事を誰かに渡したのが、原因ではないのか」


 「確かにそうです。なので、処罰されることは異論はありません」


 「良い心がけだな。戦闘力がほぼゼロのお前は、料理の腕をかわれてバシャー様の部隊に入ることができたのだ。だが、きちんと料理の管理もできない者はこの部隊には必要はない。死をもって償え」


 「異論はありません。初めから私がお慕い申していたのはティグレ様のみです。妻を人質にされて、無理やりバシャーの元に仕えましたので、この部隊に対する未練などありません」


 「いい度胸だ。今すぐに楽にしてやるわ」



 ダーシンシンはそう言うと、自分の胸を激しく叩き出した。ダーシンシンは、ドラミングをすることによって体を強化することができるのであった。


 ダーシンシンの黒くてフサフサな体が、みるみる赤く輝き出す。体も筋骨隆々のたくましい体に変身するのであった。



 「ダーシンシン隊長が、バニー相手に本気になるなんてかなり気が立っているのだろう」


 「どうする?このままじゃ。バニー料理長は殺されるぞ」


 「でも俺たちでは、ダーシンシン隊長に勝てるわけがない」


 「残念だけど、助けるのはあきらめましょう」



 ワニワニパラダイス団は、バニー料理長を助ける事を諦めた。




 「おい、どうするよ。俺らのせいで、バニー料理長が殺されそうだぜ」


 「彼の料理の腕は本物よ。殺すには惜しい獣人ですわ」


 「私たちの責任よ。助けましょう」


 「そうだな。俺がゴリラを倒す。ワニ達が加勢してくるだろうから、2人はワニを任せたぞ」


 「わかりましたわ」


 「了解よ」



 ロキさん達はバニー料理長を助けることを決めたらしい。一方私は、木の上でモフモフ不足の為、気を失っていた・・・わけではなく気持ちよく居眠りをしていたのだった。





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