第54話 神守教会との戦いパート6



 私は上空から偵察をしている。神守教会の部隊はすぐに見つかった。真っ暗な平原に、無数の明かりがあるのだから、簡単にわかってしまう。ブラカリの町までは、10kmくらいで、人数は500人くらいである。先頭には真っ赤な派手な鎧のアレスが見える。


 ソールさんの話しでは、アレスは仲間を強戦士にする能力がある。なので、強戦士を使って、正面の門から攻めてくると言っていた。アレスは自分の能力に絶対の自信があるから、小細工はしないとのことだった。



 「よし、確認できたから戻ろうかな」



 私は、一旦みんなのところに戻ることにした。



 「ただいま」


 「ルシスどうだった」


 「アレスが先頭で、500名の部隊でこっちへ向かってきています。あと30分くらいで着くと思います」



 門の前には、金玉の2人とラスパのメンバー、ブラカリの護衛団50名と獣人部隊20名が集結していた。他のブラカリの護衛団は、町の中の至るところに配備されているらしい。



 「作戦通り町への被害を避けるために、正面から戦います。先頭で来るアレスは、私とマーニで戦います。ラスパのメンバーと獣人部隊の方々は、アレスによって強戦士になった兵士を、退けてください。ブラカリの護衛団は門を守ってください」


 「わかったぜ、特訓成果を発揮する時がきたぜ」


 「そうですわ」


 「気合を入れましょう」


 

 獣人部隊のリーダーはティグレさんだ。見かけ通りのかなりの怪力なので頼もしい。それに観光課の鳥の獣人のイザベラさん、コウモリの獣人のフォーレンさん達もいる。


 町の中の護衛には、聖魔教会の猫の獣人のブランシュさんが、指揮を取ってもしものために備えている。



 「外の事は任せたにゃ」


 「安心しな。俺が誰も町の門を通らせないぜ」



 実は、ブランシュさんとティグレさんは夫婦だった。力のある嫁さんとは、ブランシュさんのことだったみたいだ。



 「神守教会の連中が見えたら、ルシスちゃんに空から攻撃してもらいます。それを合図に攻撃を仕掛けます」


 「わかりました」



 私は、また上空に飛び上がり、神守教会の部隊を探した。どこを探しても、無数の灯りは見当たらない。たぶんあかりを消して存在をわかりにくくしたのだろう。しかし、灯りは消しても、馬の足音は消すことはできない。静かな夜なのでバレバレである。


 私は神守教会の部隊を発見した。ここで、殲滅することもできるのだが、ソールさんの作戦に従うことにした。私は弱めの炎魔法を使うことにした。



 「バーンパラダイス」



 私は、無数の炎の玉を空から降り注いだ。神守教会の部隊は、急に空から降ってきた炎の玉に驚いて、あたふたしている。馬も驚き暴れ出す。空から見ていると、まるでダンスを踊っているかのように混乱している。




 「アレス様、空から無数の炎の玉が降ってきています。急な出来事に兵達に混乱が生じています」


 「わかっている。こちらの奇襲がバレているみたいだ。しかし問題はない。これしきの炎の玉など大したことではない。このまま攻め込むぞ」


 「はい、わかりました」


 「皆のもの、怯まずこのまま進め。お前達には神の子アレスがついている。負けることは絶対にない」


 「おおー」



 炎の玉で、一度は混乱した神守教会の部隊は、落ち着きを取り戻し馬を落ち着かせ、元の隊列に戻ろうとしたが・・・



 「アレス様、炎の玉が消えずに生き物のように暴れています。兵達が怯えて混乱しています」


 「厄介な炎だな。俺の力で、炎ごとき怯むことのない強戦士に変えてやる」



 アレスのまわりが黒い霧で包まれる。霧の中ではアレスの能力である(勇敢なる鼓舞)を受けた兵士達の目が真っ赤に光だす。兵士達は、みなぎる力が溢れまた、恐怖・痛みを全く感じなくなるのであった。



 「一気に進め」


 「うぉぉぉーーーー」


  

 神守教会の部隊は、炎の玉を避けずにそのまま進行する。炎に焼かれながらも、兵士達は進んでいく。痛みを感じないから、動じずにひたすら前進していく。




 「あれは、ルシスの魔法だぜ。このまま攻め込むか」


 「そうしましょう。相手は混乱しているはずです。そして、アレスの能力で、強戦士へ変えられているでしょう。強戦士は、恐怖・痛みを感じません。きっちりトドメを刺さないと、いくらでも襲ってくるので、気をつけてください」


 「恐ろしい奴らだな」


 「気をつけてください」


 「わかったぜ」



 ソールさんとマーニさんが先行した。


 ソールさんとマーニさんは双子の姉妹である。金髪の髪の長い女性がソールさんで、銀髪の方がマーニさんである。見た目はそっくりなので、髪の色で判断するのしかないのである。姉がマーニさんで、無口でほとんど喋ることはない。妹のソールさんが、いつも作戦の指示を出している。


 

ソールさんの後に、ロキさん達が進む。





 「奇襲は失敗したが、何も問題ない。俺の能力があれば無敵だ。兵達は死ぬまで戦い続けるし、恐れをなして逃げることもない。やっとブラカリの虫けれを、踏み潰すことができるぜ」



 アレスを先頭に、強戦士となった神守教会の部隊がブラカリへ侵攻する。



 「そこまでだ、アレス。これより先へは行かせない」



 ソールさんとマーニさんが、アレスの前に立ちはだかる。


 

 「王国最強の冒険者か、しかし、俺は王国最強の戦士だ。どっちが最強か試す時がきたな」


 「望むところです」



 アレスは、馬から飛び降りソールさんに斬りかかる。アレスの剣は神剣グラムだ。どんな防具も切り裂き、魔法すら無効にする王国最強の神剣だ。


 ソールさんは、黒炎の剣を振りかざす。しかしグラムの剣風で黒炎は消えてしまう。しかもグラムの斬撃がソールさんを襲う。


 ソールさんはひらりと宙を舞い斬撃をかわす。



 「さすがだな、それならば、神技を発動させるか。神技、『剛腕』『耐久』『俊足』。俺は、同時に三つの神技を発動できるのだ。俺のスピードについて来れるかな」



 アレスの動きは、明らかに変わった。剣の速さ・重さ・身体のスピード・瞬発力が強化された。ソールさんは、アレスに圧倒される。さっきまで余裕で避けれた剣戟を、さばくので精一杯だ。ソールさんはたまらず後ろへ下がる。



 「逃げるのか。しかし逃しはしないぞ」



 アレスが、ソールさんを追い詰める。



 「ソール手を貸そうか」


 「マーニまだ大丈夫よ。アレスの動きにも慣れてきたわ。それに観察は十分に終わったしね」


 「トドメだ」



  アレスは、左右に体を移動させながら、ソールさんの焦点を合わさせない。そして、ソールさんの頭上に飛び上がり、剣を振り下ろす。


 ソールの体は、真っ二つに切り裂かれる。


 

 「やったぞ」



 しかし、切り裂かれたソールさんの体は、霧のようにぼやけて消え失せる。



 グサリ・・・


 アレスの胸にソールさんの剣が突き刺さる。






 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る