第260話 ホロスコープ星国 パート37


 「スコーピオさんが、アジトまで来るなんて珍しいですね」



 レジスタンスのリーダーであるワラキアが言った。



 「別の用事でアダラの村に来ましたが、私の想像を超える事態が起こってしまったので、そのことをご報告したくて訪れました」



 スコーピオは、これまでの経緯をワラキアに説明した。



 「ついに革命の時が訪れたのですね」



 ワラキアは興奮しながら言った。



 「ポルックス様も、そうお考えであります。しかし、もう少し状況を把握する必要があると思います。レオとキャンサーは、フェニさんの仲間になっただけで、レジスタンスに加盟したわけではありません。ライブラはポルックス様が説得しているでしょう。まだ、王都に攻め込むには手薄だと思います。しかし、確実に革命の流れは加速しています」



 スコーピオはイキイキしている。



 「ヴァルゴ様を救出しましょう」


 

 ヴァルゴは、女性のようなとても美しい男性である。ヴァルゴの『ゾディアックサイン』の能力は『魅惑』である。ヴァルゴの美しい容姿と美しい声は、人々を魅了してしまうのである。ヴァルゴに魅了された者は、心の中に秘めた思いを解放して、ヴァルゴの手足となって動くと言われている。


 このヴァルゴの恐ろしい能力に恐れたジェミニ王は、ヴァルゴをアケルナルの町の監獄に幽閉したのであった。


 ヴァルゴはジェミニ王に逆らうことなく、アケルナルの町の監獄へ行ったと言われている。



 「わかりました。早速ポルックス様に、使いの者を送りましょう」



 スコーピオも革命を起こす覚悟を決めたのであった。



 「アケルナルの町の状況は、私たち『レッドブラッド』が把握しておきます。ヴァルゴ様救出作戦が整い次第、すぐに動き出します」



 ワラキアは、目を輝かせながら言った。



 「わかりました。私は一旦、王都へ戻ります。そして、王都の動きを監視しておきます」



 スコーピオは、アダラの村を出て、王都に戻っていった。




 「スコーピオが出てきたぜ!」



 ピスケスが言う。



 「よし、このまま監視を続けるぞ」



 サジタリウスは、『超ノゾキ』を使って、遠方からスコーピオを監視しながら、後を追いかけるのであった。


 スコーピオは、途中で野営を行い、次の日の朝には王都へ戻ったのであった。



 「ピスケス、何事もなく王都に戻ってきたな」



 サジタリウスは、淡々と言った。



 「そうだな。スコーピオが、カペラの町で何をしたかわからなかったし、なぜアダラの村へ寄ったのかもわからない。そして、なぜ、レオとキャンサーがアダラの村から撤退したのか検討もつかないぜ」



 ピスケスも淡々と言った。



 サジタリウスは、遠くでスコーピオを見ているでけなので、何も情報は掴めていない。ピスケスに至っては、遠くて何も見えていないので、ただお散歩をしているだけであった。



 「ジェミニ王への報告は、何もなかったでいいだろう」


 「そうだな」


 「待て、あれはなんだ!」



 サジタリウスが大声で叫ぶ。



 「どうしたサジタリウス。何が見えたのだ!」



 ピスケスは動揺する。



 「う・・・う・・・牛が・・・」



 サジタリウスは、驚きでうまく声が出ない。



 「牛がどうしたのだ!」



 ピスケスは、アタフタしている。



 「牛が、空から落ちてきた」


 「嘘を言うな!」



 ピスケスは、サジタリウスの言葉が信じられない。



 「本当だ!牛が急に空から落ちてきて、城壁横の水路に落ちていったぞ」



 サジタリウスは、身振り手振りをしてピスケスに状況を説明した。



 「わかった。お前の話を信用しよう。どの辺に落ちたのだ!」



 サジタリウスは、ピスケスに牛の落ちた場所を正確に説明した。



 「よし、俺が牛さんを助けてやるぜ」



 ピスケスの『ゾディアックサイン』能力は『水泳』である。ピスケスは、誰かが海や川で溺れた時は、嬉しそうに助けに行くのである。そして、助けた人から感謝され、『水泳』の能力を誉められるのに生き甲斐を感じているのであった。


 ピスケスは、サジタリウスと組んで、ジェミ王の精鋭部隊として、監視業務に就くことが多い。しかし、サジタリウスは、『超ノゾキ』の能力で遠くから、ただ見ているだけなので、監視業務として、ほとんど機能していないので、ジェミニ王によく怒られているのである。


 なのでピスケスは、自分の能力をフルに使える、海や川での水難事故の救出作業が、大好きなのであった。




 ★フェニ視点に戻ります。



 ベガちゃんの体重オーバーのために、カペラの町へ行くのを1日ずらすことにした。


 私は、特にやることがないので、ヴァンピーに教えてもらった王都で1番美味しいパン屋さん行き、ポルックスにもらった大金で、たくさんのパンを買ったのであった。スコーピオから、追加報酬がもらえると聞いて、私は散財したのであった。


 なので、その日は、美味しいリンゴジュースを片手に、美味しいパンを食べ続けてたのであった。



 「フェニ様、起きてください」


 

 前日と同じ展開が繰り返される。私は、ヴァンピーが門を監視している間に、ベガちゃんを連れて、王都を出発する予定だったが、案の定、私は睡魔さんに勝てることなく熟睡しているのであった。しかも、前日と同様に、無意識で『ライトシールド』を張ってしまい、いくらメイドさんが大声を出しても、私の安眠を妨げることはできないのであった。



 「はぁーー、よく眠れたわ」



 私はたくさん寝れて上機嫌である。しかし、デジャブーのように私のベッドの横には、鬼の形相のヴァンピーが居た。



 「フェニちゃん・・」



 「ごめんなさい」



 私は、昨日の私とは違う。なんでヴァンピーが怒っているかは、きちんと理解している。なのですぐに謝ったのであった。私の学習能力は高いのである。



 「今日も飛んで行くのね」



 ヴァンピーは諦めたかのように言った。



 「もちろんです」



 私は100万ドルの夜景のような美しい笑顔で言った。



 「ベガちゃんを見てちょうだい」



 ヴァンピーの表情はうかない。


 私は、厩舎に行ってベガちゃんを見に行った。



 「ベガちゃんが・・・・牛になってる!!!」



 ベガちゃんは、またまた、たくさん食べ過ぎて、牛のようにマルマルと太っていたのであった。



 「ベガちゃんを連れて行くのは無理よ」



 ヴァンピーは呆れた顔で言った。



 「ベガちゃん、ダイエットよ」



 私は、ベガちゃんにエクササイズを伝授するが、ベガちゃんは一向に動かない。



 「フェニちゃん諦めるのよ」


 「嫌です。ベガちゃんと一緒に行くのーー」



 私はヴァンピーの意見を聞き入れずに、ベガちゃんをお姫様抱っこして、空に飛び上がったのであった。私は昨日の私とは違う。昨日は、王都の城壁を超えることができなかったが、昨日たくさん食べたパンのパワーが、私に多大なる力を授けてくれた。


 私は、フラフラになりながらも、城壁を超えることができた。しかし、当然の如く、ベガちゃんの重さに耐えきれずに、ベガちゃんを水路に落としてしまったのであった。



 「ベガちゃーーーーーん」



 私の悲痛な声が響くのであった。

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