第343話 魔石国家ケルト王国編 パート13


 「ポーラちゃん、予定より早く戻ってきたんだね」



 村の門兵がポーラに声をかける。



 「色々とトラブルがあって、早く戻る事になりました」


 「そうなんだ。アネモネさんを治す魔石具は買うことができたのかな?」


 「魔石具屋の店主に騙されて買うことができなかったのです」



 ポーラは今にも泣き出しそうになったがぐっと涙を堪えた。



 「そんなことはないだろう。グリシャのおかげでこの村は救われているんだ。グリシャが人を騙すなんてありえない!」



 門兵はあからさまに不機嫌になった。



 「早くアネモネさんのところ行こうよ」



 僕は雰囲気を察してこの場からすぐに立ち去ろうと思った。



 「ポーラ、そいつらは誰だ!」


 「お母さんの呪いを解いてくれる親切な方です」


 「子供に呪いを解除することができるのか?」


 「僕は治癒系の魔石具をたくさん持っています。その魔石具を使って、アネモネさんの呪いを解除する予定です」


 「身なりのいいガキだと思ったが、どこぞの貴族のおぼっちゃまか?」


 「そうです」



 素性を隠したいので、門兵の話に合わせるとこにした。



 「そうか、通行税を払えば村に入る許可を与えよう」


 「リプロさんからお金を取るのですか?」



 ポーラはびっくりして大声を出した。



 「村に入れるのは俺が判断する仕事だ。親の金で裕福に過ごしている奴からはお金を徴収するのが、俺のルールだ!」



 「そんなルール聞いたことがありません」



 ポーラが反論する。



 「やかましい。お前の母親の嘘せいで、村人は混乱しているのだぞ。井戸水を飲むのを嫌がる村人も増えてきて、村長が説得してなんとか平静を保っているが、いまだに原因不明の病は無くなることもない。俺も金銭に余裕がないのだ。貴族のガキからお金を徴収しても何も問題はないだろ」


 「フェニ、バクを使ってはダメだよ」


 

 僕は念話でフェニに声をかけた。



 「でも、この門兵はリプロ様に対して失礼です」



 フェニは、言葉に出さないがかなり怒っている。



 「いいのだよ。通行税を払って村の中へ入ろうよ」


 「でも・・・」


 「お金は後からきちんと回収するよ」


 「リプロ様にはお考えがあるのですね。余計なことをしよとして申し訳ありません」


 「気にしなくていいよ」


 

 「早く通行料を出せ!」



 門兵は僕に剣を向けて脅すように言った。



 「村長に報告します」



 ポーラは毅然として言った。



 「払うよ。これでいいかな?」



 僕がお金を差し出すと嬉しそうに門兵はお金を受け取った。



 「村に入る許可を与えよう」



 門兵は偉そうに言う。


 フェニはかなり怒っているが、僕がなだめて争うことなくイベリアの村に入ることができた。



 「ごめんさない」



 ポーラが頭を下げて謝る。



 「気にしていないよ」


 「グリシャがこの村に着てから、村の雰囲気が悪くなったのです」


 「原因はわかるよ。それよりも君のお母さんの呪いを解除する方が先決だよ」


 「そうですね。着いて来て下さい」



 しばらくすると、小さな木造の一軒家に案内された。



 「ここが私の家です。入って下さい」


 

 僕はポーラに案内されて、母親が眠っている寝室に向かった。寝室では死んだように眠っているアネモネがいた。



 「お母さん。もう大丈夫だよ。すぐに目覚めることができるはずよ」



 眠っているアネモネの手を握りしてめてポーラは言った。しかし、アネモネはピクリとも動かない。


 僕はアネモネが寝ているベットに近寄って、呪い解除の魔石具をアネモネにかざして、魔石具に魔力を注ぎ込んだ。するとアネモネの体から紫色のオーラが現れて、魔石具にオーラが吸い込まれて行く。



 「すごいですぅ」



 その光景を見ているフェニが興奮している。



 「お母さん・・・」



 ポーラは真剣な眼差しでじっと見ている。



 『ガチャン』



 しかし、紫色のオーラを吸収した魔石具は粉々に割れてしまった。



 「失敗したみたいだね」


 「そんな・・・」



 絶望的な目をしてポーラは倒れ込む。



 「リプロ様、呪い解除の魔石具は偽物だったのですか?」



 フェニが僕に問いただす。



 「呪い解除の魔石具は本物だよ。でも、アネモネさんにかけれている呪いは、かなりのレベルの高い呪いだったので、呪い解除の魔石具は壊れてしまったのだよ」


 「お母さん・・・お母さん・・・」



 ポーラは動揺している。



 「リプロ様、ポーラちゃんのお母さんの呪いは解除できないのですか?」


 「魔石具の性能を確かめたかったでけなので、アネモネさんの呪いは別の方法で解除するよ」


 「さすがリプロ様!次の手を考えていたのですぅ。だからポーラさんも安心するのですぅ」



 フェニはポーラを励ます。



 「本当にお母さんの呪いを解除できるのですか」


 「必ず呪いは解除するので安心して下さい。今から呪いの解除の儀式を行うので、ポーラさんはこの部屋から出て行ってもらってもいいですか?」


 「私は一緒にいたいですぅ」


 「フェニは手伝ってもらうので、この部屋にいてもいいよ」


 「嬉しいですぅ」



 フェニはニコニコと笑っている。



 「私は別の部屋で待っています」



 ポーラは母親の寝室から出て行った。



 「どうやって呪いを解除するのですか」



 フェニは瞳を輝かせて僕を見ている。



 「簡単だよ・・」


 「わかりましたですぅ」



 僕が答える前にフェニが気付いたみたいである。



 「時を削るのですぅ」



 フェニは自慢げに言う。   



 「違うよ。僕の「リワインド』の魔法は何日も前の時を削ることはできないのだよ」


 「ハズレたですぅ。どうやって呪いを解除するのですか?」


 「簡単だよ。バクに呪いを食べてもらうのだよ」


 「エーーー!そんなの食べたらバクちゃんがお腹を下してしまいますぅ」




 フェニは悲しそうな顔をした。



 『バクゥーーーー』



 バクはフェニにすり寄って、「問題ないよ」と言いたげにフェニの頬にスリスリする。



 「バクちゃん、くすぐったいですぅ」



 フェニは嬉しそうにニコニコする。



 「フェニ、バクは大丈夫だよと言っているよ」


 「そうなんだ」


 「バクは魔石だけでなくいろんな物を喰らい尽くすことができるのだよ」


 「バクちゃんはすごいですぅ」


 「そうだね。フェニ、バクにアネモネさんの呪い食べるように命令してよ」



 バクは僕よりもフェニの言うことを聞くようになっている。



 「はーーい」



 フェニはバクにアネモネさんの呪いを食べるように命令した。



 『バグゥウウーー』



 バクは嬉しそうに返事をして、アネモネさんの体内の中へ入っていった。



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