第22話 パースリの町パート4

      


 「びっくりするじゃねぇかポロン!いきなり回復の矢を飛ばすなよ」


 「ごめんなさい。かなり疲れているみたいだったから、早く回復させないといけないと思ってね」


 「私もびっくりしたわよ。声はかけて欲しかったわ」



 ポロンさんは、ジャイアントゴブリンの戦いで、2人ともかなり体力を消耗していると感じて声をかけるよりも早く、回復の矢を放ったのであった。



 「そんなに怒らないでよ」



 3人が言い合いをしているのを、ゴブリンキングがおとなしく待ってくれはしない。ゴブリンキングは、金棒を2人にめがけて叩きつける。



 「俺たちは今しゃべってるだろう。少しは空気読めよ」



 とトールさんは、怒鳴るがゴブリンキングは、そんなことは無視してさらに金棒で叩きつける。


 金棒で叩きつけらた地面には大きな穴があく。



 「あれ食らったヤバそうだな」


 「そうですね。戦闘に集中しましょう」



 ゴブリンキングのスピードは、それほど早くないので、ゴブリンキングの攻撃はあたらない。しかし、激しい攻撃に2人は避けることで精一杯だ。



 「あーーせっかく町を壊さないように戦ってきたのにぃ!!」



 私は思わず叫んでしまった。


 ゴブリンキングの攻撃で、辺りの民家は壊されていく。雑魚のゴブリンは、ほとんど倒したので、ポロンさんは2人の加勢につく。


 ポロンさんが、炎の矢を連射する。ポロンさんは、1度に3本の矢を放つことが出来る。それを素早い速度で矢を放ち続ける。


 雨のような炎の矢が、ゴブリンキングに突き刺さる。ゴブリンキングの体が燃え上がる。しかしゴブリンキングの攻撃は止まらない。



 「こいつ、炎上しながら攻撃してくるぜ」


 「炎の攻撃は効いてないみたいですね」


 「ゴブリンキングは、火の耐性をもっていると思います。別の攻撃を仕掛けましょう」



  私はポロンさんに伝えた。



 「それなら氷の矢で攻撃しますわ」


 「ポロンお姉ちゃんまずは動きを止めましょう。足を狙った方が良いとおもいます」


 「わかったわ」



 ゴブリンキングは、ロキさんとトールさんが引き付けている。激しい金棒の攻撃を、かわしつつ攻撃しようとするが、ゴブリンキングは、左手の籠手で攻撃を全てはじき返す。


 燃え上がっていた体は、すぐに火が消える。全くダメージを与えていない。


 ポロンさんは、ゴブリンキングの右足に氷の矢を放つ。炎の矢と同様に3本の矢をが連射される。


 氷の矢は、ゴブリンキングの右足に突き刺さる。ポロンさんは、次々と氷の矢をゴブリンキングの右足に放つ。


 突き刺さった氷の矢は、ゴブリンキングの右足を凍らしていく。


 ポロンさんは、攻撃の手を緩めない。ゴブリンキングに直接ダメージは、与えられないが、みるみる右足全体が凍りついていく。


 ゴブリンキングは、右足を引きずるように動く。その結果、足を踏ん張ることが出来ず。金棒の威力は落ちていく。



 「ポロン、胴体も凍らせてくれ。俺とロキでスキを作るから」



 「わかったわよ」



 動きが鈍くなったゴブリンキングに、2人で攻撃を仕掛ける。しかし動きは鈍くなったが、金棒と籠手で2人の攻撃をしのぐ。



 ポロンさんは、ガラ空きになっている、背中に向けて、氷の矢を放つ。次々と背中が凍りだす。



 「ロキ、少し任せるぜ」



 そういうと、トールさんはハンマーをしまい右手に魔力をこめる。


 ポロンさんは、休まず矢を撃ち放すが、攻撃がロキさんだけになったので、ゴブリンキングは氷の矢を籠手ではじき返す。



 「もう少し頑張ってくれ」



 ロキさんと、ポロンさんは、攻撃の手をゆるめることなく攻め続ける。二人の猛攻に耐えきれず、ゴブリンキングに、氷の矢が次々と突き刺さる。ゴブリンキングの体はどんどん凍りついていく。



 「よっしゃーいくぜ」



 トールさんは、ゴブリンキングの背後にまわりこみ、凍りついた背中めがけてパンチをくりだす。



 「サンダーライトニング」



 凍りついた背中に、稲妻がほとばしり、全身に駆け巡る。激しい電気ショックで、ゴブリンキングは黒こげになりその場に倒れ込む。



 「討伐完了だぜ」


 「なんとか倒せましたね」


 「矢を放つ過ぎてクタクタです」


 「私は何もしてないです」



 「ルシスちゃんは、私たちのチームのマスコットだからね」



 とロキさんは笑いながら言った。



 「ポロンお姉ちゃん、私が回復してあげます」



 私は回復魔法でポロンさんを回復してあげた。



 「ありがとう。じゃぁ次は私が2人を回復させるね。でもさっき回復させたから、全回復は無理だけどね」


 「しかたないぜ」



 この世界では、1度回復すると、12時間は、全回復はできないのである。しかし全く回復できないのではなく、2回目は7割、3回目は5割と回復量が減っていく。


 ゲームのように、すぐに何度も何度も回復できないのである。


 しかしそれは、魔法の質が悪いからであり、私なら何度でも全回復できてしまうのである。


 

 「ルシス、捕らえられている20人の町の人はどこにいるのだ?』


 「町の端にある大きな建物です。たぶん捕らえられているのでなく、結界があるので、ゴブリン達は、入れなかったのかもしれないです」


 私達は、教会からさらに奥に進み、緑色の屋根の大きな立派な屋敷にたどり着いた。そこは孤児院であった。



 「誰かいてますか?」

 


 ロキさんが扉を叩く。



 「返事はないみたいだな。中へ入ってみよう。それにしても、孤児院にしては立派な建物だな。さすが領主様が建てた孤児院だ」



 孤児院の中に入ると、大きな広間になっている。しかしそこには誰もいない。



 「たぶん地下があるとおもいます」



 私は地下の方から人間の気配を感じた。しかし、二階に上がる階段はあるが、地下は降りる階段はどこにも見当たらない。



 「おーい。誰かいないのかぁ」


 「ゴブリンは、討伐したから安心だからいるのなら出ておいで」


 「もう大丈夫ですよ。安心して出ておいで」


 「はよ、出てこいやー」



 トールさんがイライラして怒鳴る。



 「トール脅かしてどうするの?出てこなくなるじゃないの」


 「階段がみつからねえーし、イライラするぜ」



 たしかに、地下があるのに、階段を隠すなんておかしい。もしかしたら非常用通路なのかな?でも孤児院にそんなの必要無いと思う。



 「バタン」



 奥の部屋から5歳くらいの小さな女の子が出てきた。



 「もう、ゴブリンいないの?」


 「ああ、大丈夫だぜ。他には誰かいないのか?」


 「地下にみんないるよ」


 「地下って、どこから行くんだ?」


 「あのお部屋からいけるよ」



 私達は、奥の部屋に向かった。たしかに部屋の真ん中から地下へ下る階段があった。私達は、地下へむかった。


 地下の部屋は、コンビニくらいの大きさで、薄暗くてお世辞にも綺麗な部屋とは言えない場所だ。なぜこんなに立派な孤児院に、こんな部屋があるのだろう。非常時の貯蔵庫なのかもしれない。


 地下の部屋に、たくさんの子供達がいた。いや、子供しかいない。たぶんここの孤児院の子供だろう。この孤児院の子供以外の町の人は、殺されてしまったのであろう。



 「もう、大丈夫だよ。私達がゴブリンを倒したから、この部屋からでても大丈夫だよ」


 「本当ですか?」


 「本当だよ」



 私達の話しを聞くと、恐る恐る子供たちは、地下室から出て行くのであった。

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