第48話 王都パート4



 私たちは、闘技場を後にして冒険者ギルドに戻った。冒険者ギルドに戻るとCランク冒険者証を受け取った。これで、私たちはC3ランク冒険者になることができたのである。『Cランクの冒険者はC3から始まって、C2・C1とランクが上がるのである』


 冒険者ギルドでは、誰も私たちに文句を言うものはいないが、逆に歓迎する者もいなかった。


私たちは、冒険者ギルドを出ると宿屋に戻ることにした。



 「スッキリしないぜ」


 「そうね」


 「もっと強くなりたい・・・ぜ」


 「私もよ」


 「このままだと、Cランク冒険者として恥ずかしいぜ」


 「そうね」


 「くそーー強くなりたい・・・」


 「・・・」



 2人はかなり悔しそうだ。確かに試合には勝てたが、実力的には完全に負けていた。作戦がうまくハマったことと、ソールが手を抜いていたから勝てたが、ソールが本気を出していたら、2人の実力では勝てなかっただろう。そして、それを2人が1番理解している。


 ポロンさんも、何を言って良いのかわからず黙っている。


 

 「2人とも、いえ3人とも、まだまだ強くなれますよ」


 「気休めはよしてくれ」


 「強くなれます。3人とも、まだ魔力のコントロールが上手く制御できていません。なので無駄に魔力を消費しています。きちんと魔力を制御すればまだまだ強くなれます」


 「本当か」


 「はい。それに装備も良くした方が良いと思います。魔力を存分に流せる装備が必要だと思います。せめて、ミスリル製の装備をした方が良いと思います」


 「それなら、アトラス山脈に行くのが良いと思いますわ。アトラス山脈にはミスリル鉱石があると言われていますし、私の目的のイディ山もあります。また、近くにドワーフの国があるので、ミスリルの装備もかなり揃っているかもしれませんわ」



 ミスリル鉱石とは、かなり貴重な鉱石のうえ加工も難しい。この王都にもミスリルの装備は、数えるほどしかないだろう。



 「それなら、修行をしてからドワーフの国へ行こうぜ。少し出発が遅れるがポロン許してくれ」


 「かまいませんよ。私も強くならないと、精霊神様の加護を授かることができませんからね」


 「そうと決まれば、明日王都を出ようぜ。修行は、ラディッシュの町を拠点としてディービルの森へでやればいい、それに、ドワーフの国はラディッシュの町からのが近いはずだ」






 「教皇様、金玉が負けました。それにより、亜人の子が在籍する冒険者が、この王都でCランク冒険者になることが決まりました」


 「なんだと。それはこの国にとって恥ずべき結果だ。バッカス、ゾーイは何をしている」


 「その2人が、負けたことにより金玉が負けました。特にバッカスは、終始戦局を有利に運びながらも、油断してしまい破れました」


 「神の子の威厳を踏みにじり追って・・バッカスを捕えて、牢にでもぶち込んでおけ」


 「はい。承知しました。それと、ゾーイ、バッカスは敗戦により、金玉より契約を解除されましたが、後の3人の処分は、どうしましょう」


 「ゾーイの支援魔法は、役に立つから元の役職に戻しておけ、金玉の2人は監視を続けておけ。結局、金玉と聖魔教会との繋がりはわからなかった・・・」


 「わかりました」



 神守教会の教皇ドウェインの指示により、バッカスとゾーイは金玉のメンバーになり、スパイ活動をしていた。金玉が聖魔教団と繋がりがあるとの情報を得た教皇が、教会の権力で金玉へ2人を送り込んだのである。



 「リアムの方は、どうなっている」


 「援軍の方は難しいとのことです。なので物資の支援のみとなります」


 

 ブラカリの町を襲撃するときは、南からパースリ・トメイトの兵を送り込み、リアムは物資の支援をし、北からは王都の神守教会の兵で、挟み撃ちをする形を当初は考えていた。


 しかし、パースリの町が壊滅状態になり、トメイトの村のみの支援となり、南からの援軍は乏しくなってしまった。なので、リアムに援軍要請を出したが、リアムにはそれができなかったのであった。


 しかし、パースリの悲劇により、神守教会の支援を申し出る者も増えまた大義名分もできたことにより、襲撃の予定も早くなり、当初の予定よりかは規模は大きくなったのであった。



 「ディーバが邪魔をしているのか。あいつさえいなければ、南は我が教会が支配できたのにな」



 神守聖王国オリュンポスは、王都を中心に4つの大領主の勢力で成り立っている。南のクリフ伯爵、北のアポロ公爵、西のネプチューン侯爵、東のイージス伯爵の4大勢力である。


 北のアポロ公爵は、神守教会の支持派であり、今回の襲撃に援軍を送る予定である。ネプチューン侯爵、イージス伯爵は様子を見ている感じである



 「アポロ公爵の支援もある。今回は、王国騎士団の副団長のアレスが指揮をとるから、クリフの援軍はなくても問題ないだろう」






 

 「アレス、お前の可愛がっていたバッカスが、闘技場の試合で負けたみたいよ」


 「フレイヤ様、嬉しそうですね」


 「そうね。神の子だと調子に乗って訓練もろくにせずに、偉そうなことばかり言っていたからね。アレスも神の子の動詞として恥ずかしくないのかしら?」


 「人は、大きな力を授かれば慢心になるものです。だから、仕方のないことです。同じ、神の子として、彼の敗北のショックを和らげることをしてあげたいです」


 「アレスは優しいのね。しかし、バッカスは自分が馬鹿にしていた、他の国の冒険者に敗れ、しかも、そのパーティーには亜人の子もいたらしいのよ。神守教会派の人間としてはかなりの屈辱ね」


 「そんなことはないでしょう。バッカスも神守教会の者ですが、そこまで、悪い人ではありません。負けた悔しさをバネに、さらに強くなると思います。では、私は訓練がありますのでこれで失礼いたします」





 「あのバカめ、あれほど敵を甘く見るなと、毎回言っていただろう。俺ら神の子は、絶対に負けるわけにはいかないのだ。神から選ばられた俺たちは、最強でなければいけない。女どもは魔法を使えない男たちをバカにする。魔法を使える女性に唯一対抗できるのは俺たち神の子だけだ。だから、日々訓練し、強くならないといけない。しかも、亜人のいるパーティーに負けるとは・・・人間以外の種族は、敵でしかない。俺がそのパーティーを潰してやりたいが、表立って行動することはできない。数日後には、聖魔教団を潰す予定があるし、今回は見逃してやろう」



 アレスは席を外した後、ブツブツと愚痴っていたのである。





 「団長様、またアレス副団長をいじめていたのですか」


 「いじめてなどいないわ。ただ、腹の探り合いをしていただけよ。アレスが動き出すのももうすぐだからね」




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