第17話 町へ戻る
「ローガン、あの冒険者は町に帰ってこないだろう」
「それはいいことだ。あの冒険者は気に入らねぇ。エルフもいてるが、なによりもあの亜人をかばい仲間にしたみたいだからな。町長の子である俺に、逆らうなんて魔獣の餌になればいいのだ」
「お前の願いは叶うだろ。実は、あのベアーウルフの討伐依頼には、新しい情報が報告されていない」
「そうなのか?ルーク」
この2人は、町の門兵達だ。町長の息子がローガン。そしてもう1人の門兵がルークである。
「討伐依頼書には、ベアーウルフ3体が町の周囲で目撃された。となっているが、その後の調査で、10体の群れのベアーウルフが、目撃されている」
「本当なのか、そんなのがこの町にきたら、この町は大混乱になる」
「いや、本当にやばいのは、キマイラが目撃されたと言うことだ」
「本当なのか」
「間違いないと思う。ベアーウルフが目撃されたのは、この町だけではない。俺の前に住んでいた町でも、ベアーウルフは目撃されていて、討伐依頼が出されていたんだ。しかし討伐は、失敗に終わったらしい。10体のベアーウルフの群れを確認後、キマイラがあらわれて、逃げて帰ってきたみたいだ。今は、王都の冒険者組合に依頼をだして、上級冒険者を探しているところだ」
「そうか、上級冒険者が来てくれるなら安心だ」
「だから、あの中級冒険者では勝てるはずはない。殺されるか、逃げ出すだろう」
「それは面白い。逃げ帰った奴らを笑い飛ばしてやろう。それにこの町には、もうあの冒険者は必要ないから追い返してやろう。」
「それは面白いな」
私たちはやっと町に戻ってきた。
「帰りが早いな。魔獣から逃げて帰って来たのか!」
門兵は、笑いながら私たちに話しかけてきた。
「依頼通り、きちんとベアーウルフを倒してきました。町に入らせてください」
「なんだと、そんなわけないだろう。それに、討伐したには早すぎるぞ」
「証拠ならあります。魔石を確認してもらったらわかるはずです」
ロキさんは、門兵の言いがかりに冷静に答えている。町に戻る途中に、ロキさんは、こうなることは予想していたみたいで、トールさんには大人しく我慢するように伝えてあった。
「そんな話し信じられるか。あの森には、ベアーウルフが10体もいるはずだ。しかもキマイラの目撃情報だってある。Dランクの冒険者が無事に討伐できるなんてありえない」
「なんであなたは、ベアーウルフの数、しかもキマイラの存在も知っているのですか?」
「そんなことお前らに関係ないだろ」
「討伐依頼を出したのはこの町の町長です。森の中の詳しい情報を知らせるのは、この町に住む者の義務のはずです。あなた方は報告の義務を怠った罪人です」
「うるせぇー、お前たちをこの町に入れさせるわけにはいかない。ベアーウルフを討伐しようが、亜人やエルフのいる冒険者は俺は認めない。この町から出ていけー」
「それはこの町の代表として言っているのですか?冒険者に依頼を出しておきながら、依頼を達成した冒険者を追い出すとどうなるかわかっているのですか?」
「俺はこの町の町長の息子だ。俺の決定がこの町の決定だ。破滅の象徴の亜人に、汚らわしい血が流れるエルフなど、俺がいる限りこの町には入らせない」
「てめら、ぶち殺すぞ」
我慢していたトールさんが、キレてしまった。ハンマーを握りしめて、門兵に今にも襲いかかりそうだ。
「仲間を侮辱するのは、絶対にゆるさん」
「俺に手を出すのか?町長の息子だぞ。門兵をしているが、俺の身分は貴族だぞ。貴族に手を出したらこの国では死罪に値するんだぞ」
「はぁー。お前は町の規則を破った。それに対して制裁しても罪に問われるかよ!」
「うるせぇー、冒険者と貴族の話しどちらを信用すると思う。俺に手を出したら必ず死刑にしてやる」
「望むところだ。お前はこの場で叩きのめす。ロキ止めるなよ」
ロキさんもポロンさんも静かに縦に首を振った。2人の怒りも頂点に達していた。
その時…
「出ていくのは、ローガンあなたのほうよ」
町から1人の女性が現れた。
「冒険者の皆様、まことに申し訳ございません。私の息子が、たいへん失礼な対応してしまって・・・いくら謝っても足りません」
その女性は、このキャベッジ町の町長のカミラ・スペンサー男爵である。
「あなたは、なんてことをしてくれたの。今まであなたがしてきたことは、たいていのことは目をつぶって我慢してきました。でも今回の件は見逃すことはできません」
「どうしてだよ。あんな亜人やエルフのいる冒険者なんて、どうなってもいいはずだろう」
「黙りなさい。あなたのその偏った考えは間違っているのです。この国では、いかなる種族も差別することは許されません」
「なぜお母さんはわかってくれないんだ。神守教会の教えでは、亜人もエルフも人間に害を及ぼす魔物なんだ」
「だから、その教えは間違っているのよ。あなたのような考えの子は、この町に住ませるわけにはいけません。だから出ていきなさい。出ていかないのなら、衛兵に頼んで、今回の件であなたを拘束しないといけません」
「くそー。おぼえとけお前ら、この借りはかならず何倍にして返してやるからな」
そういうと門兵2人は走って逃げていった。
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