第39話 ブラカリの町パート3



 翌朝、私たちは、冒険者ギルドへ向かった。ティグレさんの話しだと、冒険者ギルドへ行けば、観光スポットを教えてもらえるらしい。


 冒険者ギルドは、すぐに見つかった。地図もあるのだが、この町で一際大きな建物が冒険者ギルドなので、とても目立つのである。


 ここの冒険者ギルドは本当に広くて大きい。しかし、それには理由がある。ここの冒険者ギルドは、複合施設なのである。冒険者ギルドの中に商業ギルド・飲食店・観光課など様々な施設がある。


 私たちは、まず、観光課へ向かった。



 「ブラカリの町へようこそ」



 翼の生えた美しい鳥の姿をした獣人が観光課の受付嬢みたいだ。



 「私は、観光案内を担当しているイザベラと申します。今日はどのような観光をお望みですか」


 「美味しいお酒が、飲める店はどこにあるのか」


 「それでしたら、この町のドワーフも絶賛する『大食館』をおすすめします。お酒が美味しいのはもちろんのこと、全てのお酒・食べ物のボリュームがすごいのです。あなたは、暴食のトールさんですよね。あなたの胃袋を満足させること間違いなしです」


 「それは、たまらね〜ぜ」



 そう言うと、トールさんは、すぐに飛び出していった。いつものパターンなので、誰も追いかけはしない。



 「この町のことは、詳しく知らないので、おすすめはありますでしょうか?」



 ロキさんが尋ねた。



 「そうですね。1番人気は魔石具販売所ですね。この町で精巧に細工された魔石具は、とても生活が便利になりますからね。今おすすめなのは魔獣よけの魔石具です。冒険者なら必ずお役に立つことでしょう。次にお勧めなのはドワーフの鍛冶屋です。ドワーフの作る武器・防具は絶品でございます。また、武器・防具の手入れもしておリますのでぜひお立ち寄りください」


 「ドワーフの鍛冶屋には行ってみたいわ。武器の手入れもしたいので鍛冶屋にいくことに決めたわ。ポロン、ルシスちゃんはどうしますか?」


 「私は、この町にはエルフがいると聞いたことがありますので、同族の方に会いに行きますわ」


 「この町でエルフの方といえば、ギルドマスターのティア様のことだと思います。同族の方ならお会いしてくれるでしょう。後で私が連絡しときます」


 「私は150年前に、この町を救った魔王様のお話しが聞きたいです」


 「それでしたら、教会へ行かれるといいでしょう。教会では聖魔教会のことを詳しく説明してくれるツアーがあります」



 私たち3人は、行きたいところがバラバラだったので、各自別々に行動する事になった。



⭐️ポロンさん視点になります。



 私が、エルフの国を出て旅をする理由がある。それは、精霊神様の加護をもらう為である。エルフは魔法を使う時に、魔力以外に妖精(精霊)の力を借りることによって、さらに強力な魔法を使えるようになる。


 ほとんどのエルフは、微精霊の力を借りて魔法を強化しているが、一部のエルフは、妖精と契約して微精霊よりも、強大な力を借りることができるのである。


 そして、一部のエルフとは、『アルムヘルム妖王国』の王族の血を引くものである。私は『アルムヘルム妖王国』の第3王女であり、妖精と契約する資格があるのである。


 『アルムヘルム妖王国』には、妖精が住む山があり16歳の誕生日に、1人で妖精の山に入り妖精と契約することになっている。妖精の契約は、儀式的なものであり、王族の血を引くものなら誰でも契約することができるのである。


 契約は、妖精が契約者を選ぶものであり、魔力の高い者ほど上級の妖精と契約できる。


 私は5人兄妹で、その中でも2番目に魔力が高い。1番上の姉には劣るが、かなり家族にも期待されていた。しかし、私はものすごくプレッシャーに弱い。あなたなら大丈夫と言われるのが1番辛い。私は大事な事がある時は、いつも不安で夜眠れなくなり寝不足で失敗をしてしまう。


 そう、あの妖精との契約の日も、私は失敗してしまったのである。






 「明日は、妖精との契約の日ですね」


 「はい。お母様」


 「あなたは、少し緊張しすぎるところがあるから、あまり考え込まずに、気楽にいけばいいのよ」


 「はい」


 

 気楽に考えられないから、困っているのである。



 「あなたの実力なら、問題ないわ。ヘラにも負けないくらいの、妖精と契約ができるはずよ」


 「はい」



 ヘラとはこの国の第一王女である。姉はジャック・フロストという雪と氷の妖精と契約している。私は、姉と比べられるのが1番のプレッシャーになる。



 「妖精の山は、16歳の誕生日の朝にしか妖精の住む大地への扉を開けることが出来ないから、寝坊しないように気をつけるのよ」


 「はい」


 「明日は早いから、すぐに寝るのよ」


 「はい」



 私には、お母様の話しはほとんど入ってこない。それは、私はあることをずっと考えていたのである。それは、いつもお父様が美味しそうに飲んでいるブドウ酒である。お父様は、ブドウ酒を飲むと、すぐに眠れるといつも言っていた。


 私は、明日で16歳だからお酒を飲んでも大丈夫なはず・・いや0時を過ぎたら問題ないはず。もし0時までに眠れなかったら、ブドウ酒が保管されている地下の保管庫にこっそり入ろうと決めていた。【この世界では16歳からお酒が飲める設定です】


 やっぱり、緊張で全く眠れない。0時になったので、私は地下にあるブドウ酒の保管庫にこっそり侵入した。


 保管庫に入ると甘くフルーティーな匂いがした。私はブドウ酒の瓶を一つ拝借して、部屋に戻ろとした。しかし、あまりにもブドウ酒が美味しそうなので、私は部屋に戻る前に一口だけ、飲んでみることにした。



「何これ、ブドウのあまーい香りが、口の中に広がって体全体を癒してくれるわ。これは絶品ですわ!もう一口だけ飲みますわ。ダメーーー、ブドウの甘みが、私の骨を溶かすかのように染み込んでいく・・・・」


 私は一口だけ飲んで、部屋に戻るはずが、気付いたらブドウ酒を3本も飲んでいた。その結果、私は保管庫で、お昼まで眠ってしまったのである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る