第38話 ブラカリの町パート2

  


 「なんか、やばくね」


 「大丈夫でしょう。さすがに襲っては来ないでしょう」


 「ならロキお前が先に行けよ」



 ロキさん達が、誰が門兵のとこに行くか揉めている。そんな3人を尻目に、私は馬車から駆け降りて、トラの獣人めがけてダイブする。あの胸のモフモフぐあいを見て、私のモフモフ魂を抑えることができなくなったのである。



 「モフモフしてとても気持ちいいです」


 

 私は満面の笑みを浮かべる。ロキさん達は唖然としている。



 「ルシス・・・殺されるぞ・・・」



 トールさんが呟く。


 ロキさんは、馬車から飛び降りて、トラの獣人に頭を下げる。



 「私の仲間が失礼なことをしてすいません」


 「ハ、ハ、ハ、気にするな。怒ってなどいないわ。こんな反応されたは初めてだ。とても面白い子だな」



 そう言うと、私を大きな手で抱き上げて地面に下ろしてくれた。



 「もっと、モフモフを触らせてください」



 私はこの世界に来て初めて獣人を見て興奮している。トラの獣人は3mはある巨漢な体で、筋骨隆々のたくましい体つき、オレンジ色の体色に黒と白のしま模様の毛並みである。口からは鋭い牙が生えており、見た目はかなり恐ろしいが、あんなモフモフ・フサフサの毛並みを持つ獣人に、悪い人はいないと感じたのである。



 「変わった子だな。後で触らせてあげるからまずは手続きを済ませよう。この町へ入るには身分証はいらない。この町は誰でも歓迎する。しかし、一部の者はこの町で、トラブルをおこす者もいる。そのトラブルをおこした時は、この町の規則で処罰するという署名にサインしてもらうことだ」


 「それはこちらにとって、不利な処罰をすると言うことですか」


 「確かに、そのように考えるのは妥当であろう。しかし、この町の方針は、全ての種族が協力して、仲良く暮らす世界を目指すことだ。まずは、お前達が獣人の俺を信じてサインすることをねがっている」


 「私はサインします。そして、早くモフモフさせてください」


 

 私はすぐにサインして、獣人さんの胸にめがけて再びダイブする。獣人さんは、私の頭を撫でてくれる。



 「君はルシスというのかい?」


 「はいそうです」


 「俺のこと、怖くはないのか」


 「はい、とても可愛いです。そしてモフモフで気持ちがいいです」


 「可愛いなんて初めて言われたぞ。ここにくる者は皆、俺を見て恐怖に慄いて呆然とする。しかも逃げ出す者も少なくはないはないぞ」


 「そうなんですか。皆さんはこのモフモフの良さがわからないのかしら?」


 「本当におもしろい子だ。俺の名はティグレ。お前は気に入ったぞ、何かあったら俺のとこへ来い。俺のカミさんがお前を助けてくれるはずだ」


 「ティグレさんじゃ、ないんですか?」


 「俺はただの門番だ。でもカミさんは、この町では力があるからな!紹介しとくぜ」


 「ありがとうございます」


 「サイン終わったぜ、町に入れもらっていいかな」


 「3人とも、覚悟は決まったみたいだな。それでは、ブラカリの町へようこそ。ここはあらゆる種族が共存する町です。トラブルのないように心掛けて下さい。何かわからない事があれば、冒険者ギルドに行けば町の案内もしてくれます。これが町の地図になりますので、存分とブラカリの町を楽しんでください」



 私は、モフモフと離れたくなかったが、ロキさんに引きずられるように町へ入っていった。



 「緊張したなー」


 「そうですね。いきなりあんな大きな獣人が出てくるなんて・・・」


 「確かに、想定外だったわ」


 「はい。想定外でよかったです」


 

 私だけ、テンションが違った。



 「これからどうする」


 「そうだね、アメリア様達は、私たちと違ってこの町に来たことがあるから、すんなり町へ入ってきたみたいだし、どうするのか確認してくるわ」



 そう言うと、ロキさんは、アメリア様の馬車へ向かった。ちなみにアメリア様達は、ロキさん達がディグレにビビっていたため、少し離れたところで私たちの手続きを待っていたみたいだ。

 

 しばらくすると、ロキさんが戻ってきた。



 「とりあえず、今日は宿屋で休む事になったわ。明日は、オリビアさんがこの町で用事があるので、私たちは、町の観光でもしたら良いとのことだったので、出発は明後日になるわよ」


 「明日はどこに行きますか?」


 「そうだね。とりあえず、冒険者ギルドに行って、観光場所を教えてもらいましょう」


 「そうだな。この町は初めてで、何があるのかわからん」


 「今日は、宿屋の食堂で、美味しい物でも食べてから寝ることにしましょう」


 「そうしようぜ」




 

 「やっと手続き終わったみたい。それにしても、あの子の行動にはビックリだわ」


 「そうですね。あの門番を見たら、普通はビックリして動けなくなるものです。私も初めて来た時は、怖くて、震えが止まりませんでした。それに今でも緊張します」


 「それが普通ですわ。私も緊張しますわ。しかし、これであの子はこの町は、初めてだと確認できたわ。門番も、あの子のはしゃぎように、ビックリしていた様子だったしね」


 「私も同じ意見です。でもこれで、ますますあの子が何者かわからなくなりました。明日は、あのお方との待ち合わせです。あのお方なら何かご存知かも知れません」


 「そうですね。それに期待しましょう。それではなかに入りましょう」







 

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