第221話 神守聖王国オリュンポス パート30



 「だから、俺はサクラという女性は知らないと言っているだろう」


 

 ジュノはジュピターの意見を突っぱねた。




 「サクラ、手を休ませないでフッシュフライを販売するのよ・・・・あっ間違えましたわ。今はジュノと名乗ってるのよね」



 フレイヤがほくそ笑みながら言った。



 「やっぱり、サクラなのか!」



 ジュピターは歓喜の声を上げた。



 「フレイヤ様、こんな時に冗談はやめてください」



 ジュノは大声で叫ぶ。



 「テヘヘ、間違えちゃったわ」



 フレイヤは可愛い笑顔で誤魔化した。



 「ジュノさん、正式に俺と結婚してください。俺はあなたのことを真剣に愛してしまったのです」



 ジュピターは出店の前で跪き、ジュノにプロポーズをした。



 「ちょと待った!そのプロポーズに意義を申し立てます」



 ジュピターのプロポーズに意義を唱えるものが現れた。それは・・・アレスではなくイージス伯爵であった。イージス伯爵は全身を包帯で巻いた状態で王都に来ていたのであった。


 イージス伯爵は『天からの鉄槌』事件で重傷を負っていたが、王都で『グルメ祭り』を開催すると聞いて、ジュノに会えると思い、全身を包帯に包まれた状態で王都に来ていた。



 「ジュピター王子様、先ほどからずっと拝見していましたが、ジュノ殿は王子様のこと好きではないと感じました。王子様という立場を利用して、無理やり婚姻を要求するのは、問題だと思います」



 全身包帯男のイージス伯爵が大広場に響き渡るくらいの大声で言った。


 ジュノは、包帯男が誰なのかわからないが、救いの手を差し伸べてくれる包帯男に、心から嬉しく思った。



 「王子様からの婚姻は、国民は心よく受け入れるのが慣わしですわ。ジュピター王子は、とても聡明でかっこいい男性です。ジュノが断る理由など全くありませんわ」



 フレイヤが楽しそうに言う。



 「俺が聡明でカッコいい・・・嬉しいではないか。お前も俺に興味があるのか?」



 ジュピターは嬉しそうに言った。



 「私は、王子様には全く興味はありませんわ」



 フレイヤはキッパリと言った。



 「そ・そ・そうなのか・・・」



 ジュピターは少し凹んだ。



 「今、あわよくば、フレイヤ様にも結婚の申し出をしようとしたのではないのですか?そんな中途半端な気持ちでジュノ殿に求婚したのですか!」



 イージス伯爵がジュピターを問い詰める。



 「うるさい。俺は王子だぞ。第二夫人を用意する権利はあるのだ」



 ジュピターは大声で弁明をする。



 「ジュノ殿、今のジュピター王子の言葉を聞きましたか?結婚する前から、第2夫人の準備をするような人と結婚するのはお辞め下さい」



 イージス伯爵はジュノに嘆願する。



 「俺は初めからジュピター王子と結婚する気はない!」



 ジュノはキッパリと言った。



 「そうよ、ジュノチンにはアレスという婚約者がいるのよ」



 アレスがたまらず参戦した。



 「アレスは死んだはずだ。ジュノと結婚するのは俺だ!」



 ジュピターが堂々と言う。



 「元王国騎士団の副団長のアレスは死んだ。しかしアレスには双子の弟がいるのだ。そして俺が双子の弟のアレス2世だ」



 アレスはゾンビであることを隠すために、双子の弟いう設定を思いついた。



 「アレスに双子の弟がいるとは知らなかったぞ。しかし、いくらアレスの弟と言っても、ジュノとの結婚は譲ることはできん」



 「ジュピター王子、アレス2世、ここはきちんとジュノ殿の本心を聞いてみるのが1番だと思います」



 イージス伯爵はある作戦に出たのであった。



 「ジュノチン、はっきりと言って、あなたが愛しているのはアレス2世だと」



 アレスは真剣顔でジュノを見つめる。



 「サクラ・・・ではなくジュノよ。さっき俺とは結婚しないと言ったのはテレ隠してであろう。本当のお前の気持ちを俺に教えてくれ」



 ジュピターは諦めの悪い男である。



 「俺が好きなのはイージス伯爵です」



 イージス伯爵は声マネが得意であった。なので、自分のことを好きであるという事実を作るために、ジュノの本心を聞くようにと導いたのであった。



 「ジュノチン・・・本当なの」



 アレスはまんまと騙されて動揺している。



 「俺への愛は嘘だったのか」



 ジュピターも騙された。



 「ちが・・・」



 面白そうなのでフレイヤがジュノの口を塞いだ。



 「ジュピター王子、アレス2世・・・2人の気持ちはとても嬉しいです。でも俺が愛しているのはイージス伯爵だけです。なのであなた方とは結婚もできないし、2度度会いたくありません」



 イージス伯爵は2人に追い討ちをかけるように声マネをした。



 「ひどい。俺の心もて遊んだのだな!デレク王に言いつけてやる」



 ジュピターは泣きながら走っていった。



 「俺はそんな言葉には騙されない。ジュノチンの思いは俺が1番知っている」



 アレスは耳を塞いでしゃがみ込んだ。


 イージス伯爵は、作戦が成功したと感じてさっと出店から離れていった。



 「フレイヤ様、手を退けてください」



 ジュノがフレイヤの手を払い退ける。



 「これで、邪魔なジュピターが消えたからよかったじゃないのかしら」



 フレイヤは満面の笑みで言った。



 「確かにジュピターがいなくなったのは良かったけど、また新たな誤解ができてしまいました」



 ジュノはうなだれるように言った。


 この3角関係の修羅場のやりとりを見ていたお客たちは、広場に戻るとみんなにこぞって報告したので、王国騎士団副団長ジュノと東の領主イージス伯爵が、結婚するとの話題が王都中に広まるのであった。


 イージス伯爵の作戦は成功したのであった。



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