第95話 鬼の島パート3



 私は、ロキさん達と別れてクラちゃんが見えた対岸の方へ急いで飛んでいった。そして、クラちゃんを見つけることはとても簡単であった。


 なぜかというと、何体ものオーガが空に舞っていたからである。クラちゃんの邪魔をしたオーガが、クラちゃんに投げ飛ばされたのであろう。私は、オーガが舞っているところへ向かった。




 「邪魔をしないでくれる。私は雷光石を探しているのよ」


 「お前はどうやって鬼の島に上陸したのだ。鬼の島に上陸するには、西の桟橋を渡るしかないはずだ。しかし、西の桟橋にはジャイアントトロールが守っているから侵入することはできないはずだ。そして、この島の周りの海には、デスシャーク、ヘルオクトパスがいるので、海を渡って侵入するのも不可能なだはずだ」



 デスシャークとは、体長5mの獰猛なサメの魔獣で鋭利なツノを持っていて、そのツノで船に穴を開けて沈めて、鬼の島への上陸を阻止している。


 ヘルオクトパスは、体長20mの大きなタコの魔獣で、8本の足で船を襲い鬼の島への上陸を阻止している。


 この2種類の魔獣が、鬼の島の海を支配しているので、海からは上陸できないのである。


 しかし、デスシャークもヘルオクトパスもクラーケンの前では、借りてきた猫のようにおとなしくなって簡単に上陸できたのであった。



 「とても穏やかな海でしたわ。魔獣などいたのかしら?見かけなかったわ」


 「そんなバカなことがあるか」




 私は、クラちゃんを見つけることができた。クラちゃんはメガオーガと話しをしているみたいである。


 

 メガオーガとは、オーガをまとめるボス的な存在のオーガである。オーガは体長2mの鬼の魔獣であり、討伐難度はDランクでありそこそこ強いのである。そのオーガをまとめるボスのメガオーガは、普通のオーガよりも大きく体長3mもあり、討伐難度もC2でありかなりの強敵である。


 しかし、相手があのクラちゃんである。メガオーガなど相手にならないのであった。



 「もう、うるさいわね」



 クラちゃんが、軽くパンチしただけで、メガオーガは空高く消えて行ってしまったのであった。



 「クラちゃん、こんなところで何をしているの」


 「あれ、ルシスちゃんじゃないの。ルシスちゃんに、教えてもらった雷光石を取りに来たのよ」



 クラちゃんに、『世界の絶品珍味大事典』を見せたのは失敗であったと、今更ながら後悔した私であった。



 「私も、雷光石を取りに来たのです」


 「一緒だね。どちらがたくさん取れるか勝負だね」



 これは、困った事になった。食いしん坊のクラちゃんのことだから、見つけた雷光石は全て持って帰るだろう。これは、競争なんてしてしまったらえらいことになりそうである。



 「一緒に協力して探そうよ」


 「えーーーーーー。全部私が欲しいのに」


 「一緒に、探してくれるなら、クラちゃんに、雷光石より美味しい食べ物をあげますよ。もちろんクラちゃんの好きなお酒も用意しているよ」


 「ぜひ協力しましょう。私も、ルシスちゃんと一緒に探索したかったのよ」



 この手の扱い方には、慣れている私であったので無事に解決したのであった。



 「ところでクラちゃん、雷光石は鬼の島のどこにあるのかな?」


 「雷光石は、血の池地獄と呼ばれる大きな湖の近くと、その湖から流れる三途の川の河口付近のレアフラッシュフライを、倒すと手に入ると書いてあったはずよ」



 あ・・・思い出した。確かにそう書いてあったはず。しかも血の池地獄には、トロールキングが支配していて、三途の川の河口付近には3鬼神がいると書いていた。



 「でもどこに、血の池地獄があるかわからないわ」


 「あそこに隠れているオーガに聞けばいいと思います」



 メガオーガがワンパンチで、吹き飛ばされたのを見て、他のオーガ達はびびってしまって、岩陰などに隠れてしまっている。



 「オーガさん、血の池地獄はどこにあるのですか」


 「ここから東南の方向にあります。血の池地獄からは多くの湯気が出ていますので、遠くからでも確認できると思います」



 オーガはガクガクと震えながら素直に答えた。



 「3鬼神がいる三途の川の河口はどこにありますか?」


 「ガキが偉そうに俺に声をかけるな!」


 

 オーガは私を子供だと思って、顔を真っ赤にして怒鳴り出した。



 「ポカーーーーン」



 クラちゃんに殴られて、オーガが舞い上がった。



 「ルシスちゃんに失礼よ」


 「仲間が失礼な対応をして申し訳ありません」



 別のオーガが顔を青くして謝ってきた。私をただの子供だと思って、失礼をはたらいたオーガが、流れ星のように飛んでいく姿を見て、仲間が侵した誤ちを反省している。



 「鬼の島の南の果てが、三途の川の河口になっています。大きな岩がたくさんあるので、すぐにわかると思います」


 


 私は、クラちゃんに今回の雷光石の探索計画を説明した。クラちゃんと私で、血の池地獄に行って、ロキさんとトールさんに、三途の川に行ってもらうことにした。そして、血の池地獄の雷光石は、クラちゃんが持ち帰り、三途の川の雷光石は、私たちが持って帰ることを、クラちゃんに了承してもらった。


 私は、一旦仲間のもとへ戻るとクラちゃんに告げて、クラちゃんには、先に血の池地獄に行ってもらう事にした。



 「先に雷光石を探しておくね」


 

 とクラちゃんは嬉しそうに言った。クラちゃんには、前払いとしてプリンを10個ほど渡したので、上機嫌になっていた。



 トロールキングは、この世界では、討伐不可と言われるくらいの強い魔獣である。討伐不可と言われるのは、その強大な力だけでなく、無限に細胞が再生されるので討伐できないと言われているのである。


 そんな魔獣のもとへ、ロキさん達を行かせるわけには行かないのである。私も血の池地獄に行くのは、クラちゃんを監視しとくためである。もし、気が変わって、三途の川にまで雷光石を取りに来たら、大変なことになるからである。


 それに、クラちゃんの存在は、ロキさん達には知られるわけにはいかないのである。


 私は、急いで飛んでロキさん達に合流した。



 「ルシス、どうした。待ち合わせ場所はここじゃないだろ」


 「雷光石の場所がわかりました」


 「本当か。それでどこにあるんだ」


 

 私は、2人に場所と魔獣の説明をした。



 「トロールキングがいるのですか、ルシスちゃん1人で行って大丈夫ですか」



 ロキさん達がものすごく心配している。



 「私なら、大丈夫です。ロキお姉ちゃん達も、3鬼神がいてるので気をつけてください」


 「もちろん、慎重に行くわよ」


 「無理はしないぜ。やばいと思ったらすぐに逃げるぜ」


 「そうしてください。命を大事に作戦で行きましょう」


 「もちろんだぜ」



 私は、ロキさん達と別れて血の池地獄へ向かったのであった。

 



  

 

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