第367話 竜人国家ユグドラシル編 パート3
「世界樹のてっぺんに行ってみたいですぅ」
パンを食べ終えたフェニが世界樹の頂上に行きたいと駄々をこねる。
「世界樹の頂上は、ユグドラシルを統治する竜人の王ヨルムンガンド様が、世界を管理する場になっています。世界の平和を見守るように世界樹から世界の光景を見ているのよ。なので、部外者が行くことは禁止されているわ」
「行きたいですぅ。世界の光景を見てみたいですぅ」
フェニは手足をバタつかせて大袈裟に駄々をこねる。
「リヴァイアサン、頂上に登るにはヨルムンガンドさんの許可がいるのかな?」
僕は、フェニのわがままを聞いてあげようと思って、リヴァイアサンに尋ねた。
「世界樹の番人であるファフニールの許可をもらえれば、行く事は可能ですが・・・」
「ファフちゃんに許可をもらうのですぅ。この美味しいパンをお土産に持っていけば問題ないのですぅ。それにヨルちゃんにも美味しいパンを届けてあげたら絶対に喜ばれるのですぅ」
フェニは無邪気に言った。
「フェニ、そんな簡単に世界樹の頂上に行けるはずがないよ!」
世界樹は人界の為に植えられた神聖な木だと聞いたことがある。そして、世界樹にはとても不思議な力があり、特殊能力を手入れることができる不思議な果実が実っている。この不思議な果実を守るのも竜人族の役目であり、その不思議な果実が実るのが世界樹の頂上である。そして、それを守るのも竜人族の王であるヨルムンガルドの役目である。
「ファフニールは、全身から猛毒を放つ危険なドラゴンですわ。竜人族でもファフニールの猛毒に触れると命の危機に瀕するのよ。人間のフェニちゃんがもしファフニールの毒に触れたら一瞬で死んでしまうわ」
リヴァイアサンが心配をする。
「それでも行きたいですぅ。この大きな木に登りたいのですぅ」
フェニは、セキランの町に入る前に見た大きな大木・世界樹の頂上が気になってしょうがないのである。
「仕方がないわ。こんな美味しいパンを作れる窯を作ってくれたお礼に私が、ファフニールのところへ連れて行ってあげるわ」
話を聞いていたエキドナが笑顔で言った。
「エキちゃん嬉しいですぅ」
フェニはニコニコと笑って喜んでいる。
「本当に危険はないのですか!」
レオは、フェニの心配をしているのだろうか?それともエキドナに同行したいので、自分の心配をしているのか?どちらかは一目瞭然でわかった。
「危険がないとは言い切れないわ。もしファフニールを怒らせたらフェニちゃんはファフニールの猛毒で死んでしまうわ」
エキドナは淡々と語る。
「フェニちゃん、それでも行くのですか!」
レオは、フェニにビクビクと震えながら問いかける。
「もちろんですぅ。世界樹の頂上に登って景色を堪能したいのですぅ」
フェニはワクワクしている。そしてレオは恐怖でオドオドしている。
「大丈夫だよ。僕がフェニを守ってあげるよ」
フェニは『フェニックス』の能力があるから死ぬ事はない。しかし、猛毒で苦しむような事にさせるわけにはいかない。
「誰が俺を守ってくれるのですか・・・」
レオは涙目になる。
「レオさん、そんなに怖がらなくてもいいのよ。あなた達は美味しいパンを作る窯を作ってくださった客人ですわ。だから責任を持って私が守ってあげるわ」
と優しくエキドナは微笑む。
「エキドナ様・・・私はあなたに一生ついてきます」
レオはエキドナに忠誠を誓う。その光景を呆れた顔でフェニとリヴァイアサンは見ている。
「ありがと」
エキドナはレオに微笑みかける。
エキドナに微笑みかけられたレオは、俄然やる気が出るのである。
「今すぐに世界樹の頂上を目指しましょう。そして世界の絶景をフェニちゃんに見せてあげましょう」
とかっこよく語り出したが、誰も聞いてはいない。
「たくさんパンを買っていくのですぅ」
フェニは焼き立ての美味しいパンをたくさん買い付ける。フェニの収納ボックスにはどれくらいのパンがあるのか気になるところである。
フェニのパンの準備を終えると僕たちは、一旦セキランの町から抜けて世界樹のの前に立つ。
「私の背にお乗りください」
エキドナのドラゴンの姿は、上半身は美しい姿のままの美女で下半身が蛇に翼が生えた姿になっている。
リヴァイアサンは、綺麗な水色のドラゴンである。リヴァイアサンはドラゴンの姿でも大きさを自由に調整できるので、今回はフェニと僕を乗せるので少し小さめのドラゴンに変身した。
レオは顔を真っ赤にしてエキドナを強く抱きして嬉しそうにしている。レオに気を使って、僕とフェニはリヴァイアサンに乗せてもらうことにした。
「ワクワクですぅ」
「温もりを感じます」
「行きますよ!」
エキドナは声をかけてから、全速力で上空に飛び立った。その後を追うようにリヴァイアサンが追走する。
世界樹の上空を目指して、垂直に猛スピードで飛ぶ2人のドラゴンのスピードから発生する風圧が全身にのしかかる。しかし、そんな状況ですらフェニは嬉しそうにニコニコとはしゃいでいる。
「リヴァちゃん、エキちゃんに負けるなですぅーー」
フェニはさらに加速するようにリヴァイアサンを応援する。
「限界です・・・」
レオはエキドナのスピードに耐えきれずに白目を剥いて失神した。しかし、エキドナはしっかりとレオを押さえ付けて落ちないようにする。
「スキができましたね」
リヴァイアサンは、エキドナがレオが落ちないようにした瞬間、スピードをさらに上げて、エキドナを追い抜いた。
「リヴァちゃん、すごいですぅ」
フェニは嬉しそうにはしゃぐ。
「私の勝ちですね」
フェニの煽り行為によって、いつしかリヴァイアサンとエキドナのスピード勝負になってしまった競争が幕を閉じたのである。
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