第150話 妖精王パート20
「いくら探しても見つからないぞ。サラ、お前の嗅覚で見つけることはできないのか」
「さっきまではこの部屋から匂いがしたはずなのにおかしいわ。どこへヤミー様は消えてしまったのかしら」
「仕方がない。俺も鍋を食べるとするか」
「私も食べるわ」
トールさんとポロンさんが、ヤミークラブの探索をやめて歓迎会用の鍋を食べ始めた。
「ヤミークラブはないけど、この鍋は美味しいぞ」
「出雲山から取れる新鮮な野菜がいい出汁を出して美味しいのですわ」
「この家に来て正解だったな」
「本当ね。でも、ヤミークラブはどこへいったのかしら?」
トールさん達が鍋を囲んでワイワイしていると、地面が急に大きく揺れだした。
「地面が激しく揺れているぞ」
「トール、虹蛇が動き出したのかもしれませんわ」
「そうだな。フワリンを呼ぶから急いで逃げるぞ」
「まだ、鍋が余っていますわ。私は最後の一滴たりとも、鍋のお汁を残す事はしないのよ」
地面が激しく揺れて今にも家が倒壊しそうだが、サラちゃんは落ち着いて鍋を食べている。食事を残さないサラちゃんの精神は尊敬に値するが、今は、呑気に食べている場合でない。
「俺たちは先に逃げるぞ」
トールさんとポロンさんは、フワリンに乗って上空へ逃げた。上空から出雲山を見てみると、さっきまで大きな山だっと思っていた出雲山は、大きな蛇がトグロを巻いている姿であった。
「なんて、でかい蛇なんだ!!」
「あり得ないわ。こんな蛇が存在するなんて・・・」
「おい、目が開いたぞ」
出雲山の山頂が虹蛇の顔になる。大きな瞼が開いて、鋭い赤い目がトールさん達を睨みつける。
「おい、こっちを見てるぜ、サラ、早く逃げろ」
サラちゃんは、鍋を持って残りの汁を啜っている。
「ちょと、待ってよ。後少しよ」
虹蛇がゆっくりと動き出した。虹蛇の体から生えている木々や地面が崩れ出し、宍道湖を一瞬にして埋め尽くす。
オロチの家も崩れて落ちていく。サラちゃんは、とっさに鍋に飛び乗ってサーフィンのように、土砂崩れをうまく乗りこなす。
「サラ、何をしている。早く上空に逃げろ。土砂に巻き込まれるぞ」
サラちゃんは、軽快に鍋サーフィンを楽しんでいたがすぐに飽きてしまい、翼を広げて上空へ避難した。
「大きな蛇だわ」
「さすがにサラでも、あの大蛇に勝つのは難しいだろ」
「私は精霊神最強ですわ。あんな大蛇なんて楽勝よ」
サラちゃんは、真剣の目つきで虹蛇を見ていた。
「もしかしたら・・・・かもしれないわ」
「サラ、何か言ったか?」
「間違いないわ」
サラちゃんは、虹蛇を見てある事を確信したみたいである。
「サラ、どうしたんだ」
「私があの大蛇を退治してあげますわ」
「どう考えても無理だろ。どうやってあんな化け物を倒すんだ?」
「そうよ、サラちゃん。無理しないで」
トールさんとポロンさんがサラちゃんを引き止める。
「問題ないわ。あの大蛇のお腹には必ずあるはずよ」
サラちゃんは2人が引き止めるのを振り払って虹蛇へ突進した。
「大蛇のお腹の中・・・・そういうとこか。サラ、お前を1人危険なところへ、行かせるわけにはいかないぞ。ポロン、俺は行くぞ」
ポロンさんは考えた。あの2人が正義感で虹蛇を倒しに行くなんて絶対にあり得ない。何か事情があるに違いない。ポロンさんは少ない脳みそをフル回転して考えた。
「そういうことなのね!トール、私も行きますわ」
ポロンさんは頭をフル回転したが、結局何も分からなかった。なので、わかったフリをしてついていくことにした。
「サラ、どうやって虹蛇を倒すのだ」
「口の中からお腹の中に入るのよ」
「大丈夫なのか?」
「問題ないわ。ヒュドラもそうやって倒したわ」
「わかった。お前を信用するぜ」
トールさん達はゆっくりと動き出す虹蛇の頭を目指して飛んでいく。
虹蛇はゆっくりと地面を沿うように動いていく。
トールさん達は虹蛇の顔付近まで近づいた。虹蛇は顔だけでも50mはある。虹蛇は大きな目を見開いて、トールさん達を見るが、虹蛇からしたらあまりにも小さな生き物に見えるので相手にしない。虹蛇はそのままゆっくりと前に進んでいく。
「ドッキとしたぜ。目があったから食われると思ったぜ」
「でも、今から食われにいくのですわ」
「確かにそうだったな。俺たちはあの虹蛇の口から体内に入るのだな」
「行きますわ」
サラちゃんはサラマンダーに変身して、巨大な炎を虹蛇の顔に向けて吐きつけた。
虹蛇は炎にビックリして大きく口を開ける。
「入るわよ」
「わかったぜ」
トールさん達は虹蛇の口の中へ入っていった。
サラちゃんは考えていた。ヒュドラにはあんなに美味しい幻魔のコアがあったので、こんな大きな蛇の体にはヒュドラの数十倍も大きな美味しいコアがあるに違いないと。
トールさんは考えていた。この虹蛇は調理されたヤミークラブをたくさん食べていと!なので、体の中にはヤミークラブがたくさんあるに違いないと。
ポロンさんは考えていた。2人についていけば何か美味しいものにありつけるに違いないと・・・でも、どうみても虹蛇の体内は異様な雰囲気である。ポロンさんは、なぜ付いて来てしまったのかと、後悔していたのであった。
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