第427話 スカンディナビア帝国編 パート15
⭐️時はロキさんのお母さんが死ぬ間際に遡ります。
「ロキ、アーサソール家を恨んではいけないわ」
「なぜですかお母様」
「特殊な力を授かることは諸刃の剣と同じことなのよ。もしヴァナヘイム家が逆の立場だったら同じに結果を辿っていたでしょう」
「そうかもしれませんが、今までヴェナヘイム家の男系は殺されてきたのです。私はアーサソール家を許すことはできません」
「そうなのね・・・それならあなたはトールちゃんを殺すつもりなの?」
「それは・・・」
「トールちゃんは、あなたを姉妹のように接してくれる心優しい子に育っているわ。私もドンナー王の姉君であるカレン王姉殿下には良くしてもらっていたわ。カレン王姉殿下は、私を家族のように優しくしてくれていましたが、ドンナー王の怒りに触れて、辺境の地へ追いやられてしまったのよ。トールちゃんも私たちヴァナヘイム家のためにドンナー王に楯突いて地下牢に閉じ込めらることも多いわ。そんな優しいトールちゃんをあなたは憎むことができるの?」
「できません。私はトールお嬢様が大好きです」
「それでいいのよ。ヴァリは私たちを王族に戻すために色々と働きかけてくれていましたが、最近は自分がこの国に王になると言うようになったわ。ヴァリはいつの間にか家族のためではなく、自分自身の野望を叶えるためにビューレイストを利用して、この国を乗っ取るつもりなのよ」
「お父様や兄上は、私たち一族のために頑張っていたのではないのですか?」
「最初のうちはそうだったのよ。でもね、人間は弱い生き物なのよ。正義のために頑張っていたけど、次第に自身の欲望のために動くようになってしまったのよ。だから私はアーサソール家を責めることはできないの。特殊な力などなければみんな仲良く暮らせたのかしら・・・」
「お母様・・・」
「ロキ、あなただけは今の気持ちを忘れずにトールちゃんを大事にしてね。私はあなたとトールちゃんが仲良く暮らせる未来を望んでいるのよ。トールちゃんは特殊な力を持っていないけど、潜在能力は兄妹の中でもずば抜けているわ。そしてあなたもよ。2人で力を合わせて呪われた二つの家系を救ってほしいのよ。ゴホン・・ゴホン」
ロキさんの母親は、ベットの上で横たわりながらロキさんに訴える。
「お母様、大丈夫ですか?あまりご無理をなさらないでください」
「大丈夫よ。少し疲れているのかしら?」
ロキさんの母親は生まれつき体が弱くベットで横たわってる時間のが多い。
「城の掃除は私がするのでお母様はゆっくりと休んでください」
ロキさんの母親はその後体調を悪化させてそのまま息を引き取るのであった。しかし、ヴァリは妻を失ったのに涙ひとつも流さず葬儀すら執り行うことように訴えることはしなかった。ロキさんの母親が死んだと知って、辺境の国から駆けつけたカレン王姉殿下によってロキさんの母親はひっそりと埋葬されたのである。
⭐️時は戻ります。
「私の使命は、トールと一緒にスカンディナビア帝国を正常の状態に戻すこと。もう少し力をつけてから、スカンディナビア帝国に戻りたかったわ」
「そうだな。でもヴァリの計画が思ったより早く動き出したみたいだから悠長なことは言ってられないぜ。オリュンポス国に迷惑をかけるわけにはいかないし、特に同盟国であるポロンには関わってほしくないから、2人であいつらの計画をぶち壊してやるぜ」
「そうね。ルシスちゃんやポロンには迷惑をかけれないわ」
「本当にマグニを逃してよかったのか?あのバカ兄貴は何をするかわからないぞ」
「私は誰にも死んでほしくないのよ」
「でも王都で捕まっている俺の家族を助ける予定だったから、それからでもよかったのじゃないか?」
「何か悪い予感がしたのよ。王都に着く前にマグニが殺されるような気がしたのよ!」
「よく気づいたな!」
ロキさん達の馬車の中を覗く大きな赤い一つの目があった。
「巨人族はマグニを追ったのではないのですか?」
大きな赤い目の持ち主は単眼巨人のキュクロプスであった。キュプロクスは大きな手で馬車を掴んで持ち上げ左右に振って、馬車の中からロキさん達を振るい出した。
「グオーーー」
「キャーーー」
ロキさん達は悲鳴をあげて馬車の中から放り出されて地面に落ちていく。
「何をするんだ!めちゃ痛かったぞ」
トールさんは不意を喰らったので頭から落ちたのである。一方ロキさんは体を反転させて地面に綺麗に着地した。
「4人の『神の血縁』者の魂を捧げれば魔王が降臨するのだ。あの男さえいれば魔王を降臨できたはずだ!」
キュクロプスは大きな棍棒を振りかざしてロキさん達に目掛けて振り落とした。
ロキさんは魔剣ティルヴィングを振りかざして空間を削って後方へ退く。トールさんも隠し持っていたミョルニルを地面に叩きつて、その反動で後方へ退いた。
大きな棍棒は、誰もいない地面に向かって振り落とされた・・・いや、誰かいる!
「キュクロプスの相手は私がしてあげます。ロキさんとトールさんは、私の大きな背中に隠れて、生まれたの子羊のように震えながら、私の活躍をその瞳に焼き付けてください」
キュクロプスの前に立ちはだかったのは小ルシス2号であった。
『ワールド・チャンピオン・エクストラ・ジャイアントパンチ』
小ルシス2号はキュクロプスが振り落とした棍棒目掛けて、体を回転させながらパンチをした。
『グチャ』
三階建ての建物くらいの大きさのキュクロプスが振り落とす棍棒の破壊力は、鉄の塊が高層ビルから落ちてきたほどの衝撃がある。なので、体長10cmほどの小ルシス2号のパンチで跳ね返すことなど不可能である。
キュプロクスが棍棒を振り落とした場所には、大きなクレーターのような穴が空き、そこにプレス機で挟まれたかのようにぺったんこになった子ルシス2号の悲しい姿があった。
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