第224話 ホロスコープ星国 パート1


 『グルメ祭り』は大成功で幕を閉じ、油料理の宣伝に大いに役立った。そして、数ヶ月後には、王都の町では、どこのお店でも油料理が食べれるようになるのであった。


 私たちは『グルメ祭り』が終わって、数日後、ディーバ伯爵から、新たな依頼を受けることになった。



 「ルシスちゃんのくれた油の原料になる植物の苗のおかげで、パースリの町は活気を取り戻しているわ。本当にありがとうね」



 ディーバ伯爵が深々と頭を下げる。



 「こちらこそお役に立ててよかったです。



 私はさらに深々と頭を下げる。



 「ディーバ伯爵様、依頼内容を教えてくれ」



 私とディーバ伯爵のお辞儀バトルを邪魔するようにトールさんが話にわって入ってきた。トールさんはC1ランクになって、早く戦いたくてウズウズしているのであった。



 「そうね・・・本題に入りましょう。キャベッジの町の南の森を抜けると、ホロスコープ星国があるわ。ホロスコープ星国とオリュンポス国は、南の森の魔獣の存在によって、争いが起こることなく、お互いの領土を維持することができていたのよ。しかし、最近南の魔獣の勢力が激減して、ホロスコープ星国が、南の森を支配下に置いてオリュンポス国に攻め入る準備をしているとの情報が入ってきたのよ」


 「それは、私たちがキマイラを倒したの原因ですか」



 ロキさんが訪ねた。



 「南の森はかなり大きな森だわ。キマイラを倒しただけで、魔獣が激減するとは思えないわ。だからその原因を見つけて欲しいのよ」



 ディーバ伯爵はいつになく緊張した顔つきである。かなり深刻な問題なのかもしれない。



 「ロキ、俺らは他の国の人間だ。国家間の争いには関与しない方がいいぜ」



 冒険者は、魔獣の退治や素材集め、国内のトラブルの対処がメインである。なので他国間との争いには基本関与はしない。関与するときは、その国の冒険者であることがほとんどである。



 「トールさんのおっしゃる通りです。なので、南の森の魔獣の状況を確認して欲しいのです」



 ディーバ伯爵もそのことは理解していた。なので、ホロスコープ星国を調べるのではなく、南の森の探索を依頼したのであった。



 「わかりました。その依頼を受けさせてもらいます」



 ロキさんは快く承諾した。



 「魔獣の森の探索なら問題ないな」



 トールさんも納得した。



 「ルシスちゃんと初めてパーティーを組んで戦った思い出の森ですわ」



 ポロンさんが懐かしそうに言った。


 南の森は、私が魔界から追放されて転移された場所である。あの時、間違って森の奥へ行っていたら、私はキマイラに殺されていたであろう。私にとって南の森は因縁のある場所でもある。


 私たちは、ディーバ伯爵の屋敷を出てキャベッジの町へ向かった。今回はかなり危険な探索になると思って、サラちゃんにもきてもらう事にした。



 「サラちゃん、キャベッジの町まで運んでもらえるかしら」



 ロキさんがサラちゃんにお願いする。



 「私の力が必要なのね。1人、ブドウ5房で手をうつわ」



 サラちゃんは運賃を請求してきた。



 「サラ、運賃を取るのか?」



 トールさんの額の血管がピクピクと動いている。トールさんが怒りを爆発する寸前である。



 「もちろんよ。今までタダ乗りをしていた分も、随時請求するわ」



 サラちゃんは、どこかで運賃という概念を知ったのであろう。面倒な事である。



 「サラちゃん、それなら今まで私があげたお食事の料金も請求するね」



 私は、サラちゃんに笑顔で言った。



 「オホホホ、冗談よ。運賃なんて取るわけないわよ。さぁみんな!私のカゴに乗ってちょうだい」



 サラちゃんの顔はスッと青ざめて態度を一変させた。


 私は、今までずっとサラちゃんに、お礼の気持ちとしてたくさんの食料をあげていたので、その食料の請求額はどえらい金額になる。そのこともサラちゃんもわかっていたのである。


 トールさんの怒りが爆発することなく、私達はサラちゃんのカゴに乗ってキャベッジの町へ着いた。


 キャベッジの町に着くとカミラ男爵が出迎えてくれた。カミラ男爵は、ディーバ伯爵から『ラスパ』に依頼を出すことを伝えられていたので、私たちが来るのを待っていた。



 「『ラスパ』の皆さんお久しぶりです。しばらく見ない間に、さらに強くなりましたね」


 「ありがとうございます。ルシスちゃんのおかげで私たちは強くなることできました」



 ロキさんが嬉しそうに言った。



 「今回は、依頼を受けて頂いてありがとうございます。やっとパースリの町の復興が順調に進みつつあったのに、次はホロスコープ星国の脅威が迫っています。住人の中には不安で逃げ出す者もいます。なので早期の解決を期待しています」



 「カミラ男爵様、私たちはあくまで南の森の探索に来ました。残念ながら、ホロスコープ星国の対応まではできません」


 

 ロキさんは、唇噛み締めながら言った。



 「わかっています。南の森の状況次第では、オリュンポス国の騎士団達が応援に駆けつけてくれるでしょう。なので、南の森の探索はとても重要なのです」


 「そういことなら、私たちに任せてください」



 ロキさんは笑顔で言った。


 この南の森の探索は非常に難しいのである。それは、魔獣を倒すことを依頼していることではないのである。魔獣を倒すなら簡単である。しかし魔獣を倒さずに、魔獣の状況を確認することが目的なのである。南の魔獣の存在が、ホロスコープ星国のオリュンポス国へ攻め込む壁になっているので、私たちが魔獣を倒したら本末転倒になってしまうのである。



 「南の森の魔獣は俺が殲滅してやるぜ」



 トールさんはそれを理解していない。



 「私の炎の矢で、森ごと消し去ってしまったのいいのよ」



 もちろんポロンさんも同じである。



 「美味しいコアはあるのかしら」



 サラちゃんは、当然は何も理解していない。


 この後、ロキさんが1日がかりで説明するのだが、3人とも最後まで理解できないのであった。




 

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