第333話 魔石国家ケルト王国編 パート3
僕が人界へ行くことが許されたが期間は5日間だけである。天界と魔界の協約により長期の滞在は禁止されている。特に魔王の子供である僕が人界へ行くのはかなり危険視されている。他の魔界の魔人が人界へ行くのとはわけが違うのである。
僕が向かうのは魔石国家と言われるケルト王国である。ケルト王国の魔石具は人界のレベルを超えるハイスペックな魔石具が使用されている。なので、魔界では天界の介入があるのではないかと睨んでいる。しかし、何度かナレッジが捜査に行っているが、天界の介入はなかったとの報告だった。
僕はナレッジのことがあまり好きではないので、ナレッジの報告は信用することができない。だから、お母様には内緒で、天界の介入がないのか調べてみようと思っている。
僕がケルト王国に行くことを決めた理由は、お姉ちゃんの魔石が白く濁っているのは、天界の力で浄化されてしまったのでは?と考えているからである。色々調べたが魔石が黒から白になるのは浄化されたと考えるのが1番妥当である。しかし、ルシスお姉ちゃんの魔石は、その辺の魔人の魔石とは格が違う。お姉ちゃんの魔石を浄化するなんて不可能であるお母様は言っていた。
お母様の話では、全ての神が現れてお姉ちゃんの魔石を浄化しようとしてもできることはないと言っていた。しかし、お姉ちゃんが自ら魔石の浄化を望めば浄化は可能であるとも言っていた。しかし、それは絶対に考えられないのである。魔石の浄化は魔族にとっては死を意味するからである。
僕なりに色々と考えた結果・・・浄化に近い何かがお姉ちゃんの体を蝕んでいるのだと推測した。なので、天界と繋がりのあるケルト王国なら、浄化を無効にする魔法もしくは魔石具があるのではないかと僕は思った。しかし、それは僕だけの考えではなくカァラァお兄ちゃんも同じ答えに至っていた。天界に行くのはかなり危険なので、天界は僕より強いカァラァお兄ちゃんが行くことになった。
お母様も僕たちの考えは知っていた。しかし、お母様の立場的に天界・人界の力を借りることはできない。それに、もしもお姉ちゃんの魔石の浄化に天界が関わっていたら、それは魔界と天界の戦争につながってしまうのである。だから、お母様は魔界の平和のためにも確信が持てるまでは動けないのである。
「リプロ、魔人だとバレてはダメよ。人間への変化の魔法を使っていくのよ」
「もちろんです」
魔人は人界へ行く時は、人間の姿で行動しないといけない。しかし、人間の姿だと自由に力を発揮できないので、以前人界へ行った時は人間の姿に変化しないで行動していた。しかし、今回は天界の介入があるかもしれないので、慎重に行動しないといけない。
「魔剣ティルヴィングも持っていきなさい。ティルビングがあれば力を出さなくても身を守ることはできるわ」
「はーい」
魔剣ティルヴィングは絶対に攻撃を外さない魔界の暗黒秘具の一つである。しかし、ただの剣と勘違いしていた僕は、人界で出会った男の子、今は女の子になっているがフェニにあげたのである。まさかそんなに大事なものであるとは知らなかったので、お母様には内緒にしている。
「期限は5日間よ。それ以上は滞在は認めないわ。それと、余計なことはしなくていいのよ。あくまでルシスの難病を治す方法を探すのよ」
「はーーい」
僕は元気よく返事したが、天界の介入も調べようと思っている。ナレッジに虚偽の報告があれば嫌いなあいつを追い出すことできるはずだ。
「私が転移の魔法で近くまで送りましょう」
ナレッジは魔界参謀長官であり、魔界でNo.2の権力を持つ人物である。昨日のカァラァお兄ちゃんの実力を知って、かなり怯えていたが、僕たちの動向を気にしているのであろう。
「大丈夫です。僕も転移魔法は使えるので自分で行くことができます」
「失礼しました。少しでも力になれればと思った所存でございます。気をつけて行ってきてください」
ナレッジは頭を下げる。
魔界から転移魔法を使ってどこでもいけるわけではない。魔界と人界をつなぐ場所は決まっているのでケルト王国に1番近い場所に僕は転移した。
「アルイ様、リプロがケルト王国へ向かいました」
「大丈夫なのか?」
「問題ないと思います。リプロはまだ子供ですので、天界があの国へ介入していることに気づくとは思えません」
「なら、何しにリプロはケルト王国へ行ったのだ?」
「ルシスの難病を治す方法を探す為に、魔石具の発展しているケルト王国を選んだみたいです」
「でもルシスは死んでいるのだろう?」
「はい。ルシスは神の力によって魔石が浄化されていました。しかし図太いことに5年の歳月がたっても死ぬことはなかったので、私が魔獣の森に転移させたので、確実に死んだと思います」
「そうか・・・ルシスはあまりにも強大な魔力を持って生まれたので、魔界にも天界にとっても驚異であった。3世界を制圧する大魔王など誰も望んでいないのだ。ずば抜けた力は、災いをもたらすはずだ。しかし、ルシスは死んだがカァラァとリプロはどうする?あいつらはルシスが死んだと知ったら俺らの命はなくなるぞ」
「問題ありません。カァラァは天界へ行くそうです。すぐに神に報告して、カァラァを天界侵入罪で拘束してもらいます」
ナレッジは嬉しそうにほくそ笑んでいた。
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