第24話 バードクの町へ

                    


 私たちは、トールさんの美味しい食堂へ行きたいというくだらない理由の為、休む暇もなくバードクの町へ向かう事になった。



 「ルシスなんか不服そうだな?早くバードクの町へ報告した方が、良いと言ってたじゃないか?」


 「たしかに、そうですけど・・・」



 なんか納得はいかないが諦めるしかないのである。



 「そうですね。食堂も楽しみですね」



 私は気持ちを切り替えて美味しい食堂のことを考えることにした。



 

 「ああ、そうだな。紹介状がないと入れないお店だから、よほど人気があるのであろう」


 「でも、ついた頃には、食堂は満席で入れないかもしれないですよね」


 「それはやばいぜ。ルシス、お前の持てる全ての力で、この馬車を最強最速の馬車にしてくれ」



 私はトールさんの話しをスルーした。



 「本当にお願いします。ルシス様」



 あのトールさんが、泣きそうな顔で、真剣にお願いしている。そんな姿を見て、ポロンさんとロキさんは今にも笑い転げてしまいそうだ。


 急いで、バードクの町へ行くために、カミラ男爵様からは特別な馬を譲り受けていた。


 基本は、馬車用の馬は、体力重視の馬が使われる。しかし兵士が乗る軍馬は、スピード重視の馬が使われるのが一般的だ。

 

 私の支援魔法を使えば、軍馬を馬車で使用しても問題はない。むしろ、その方が効果的である。


 軍馬を使用することにより、かなりの時間短縮ができるのである。


 だから、想定以上に早く着くのが私はわかっているので、少しトールさんをからかってみたのである。



 「冗談ですよ。予定より早く着くとおもいますので安心してください」


 「本当なのか?信じていいのか?」



 目に涙を浮かべながら、私に問いかけるトールさん。



 「本当ですよ。道中に盗賊など邪魔する者が現れなければですけどね」


 「なにーー!盗賊だと。盗賊など俺が退治してやる」



 そういうと、トールさんは、馬車内から出て運転をポロンさんから代わりまわりを警戒するのであった。


 道中は、特に何事もおきることはなく、日が暮れる頃には、バードクの町へ着くとができたのである。


 私はカミラ男爵から、身分証を発行してもらったので、門での手続きは問題はなく入る事ができた。


 キャベッジの町では、冒険者ギルドがなかったから、まだ冒険者証は持っていない。だから、この町で登録して行く予定だ。


 入ったチームが、いきなりDランク冒険者なので、これで、どこの国にも行けることになるのである。



 「俺が、食堂を確認してくるぜ」



 というと、トールさんはカミラ男爵から、もらった紹介状と案内の地図を持って消えて行った。



 「ロキ、私は宿屋をとってきますわ。泊まる場所がなかったら、困りますしね。冒険者ギルドへは、二人で行ってきてくださいね」


 「わかったわ。ポロンに宿のことはお任せするわ。宿が取れたら、トールと合流してくれたらいいわ。場所はわかるよね」


 「はい。地図は確認して場所は覚えていますわ」



 そして、私はロキさんと2人で、冒険者ギルドに向かうことになった。


 冒険者ギルドは、基本24時間営業である。不測の事態を考慮して、いつでも対応できるようになっているのである。


 冒険者ギルドは、入るとすぐに大きなホールになっていて、ホールの中心に、さまざまな依頼書が貼ってある。そしてホールの奥に、受付と事務所があり、そこで、依頼を受けたりまた依頼完了の報告をする。


 そして、ホールの一角には、お酒や軽い食事ができる、スペースがある。そこで、冒険者同士が情報交換をするのである。


 冒険者ギルドの2階は、職員の居住エリアになっている。24時間対応な為冒険者ギルドの職員は、休みの日以外は、冒険者ギルドで生活をしている。



 日が暮れると、どこの冒険者ギルドでも居酒屋状態になる。討伐を終えた冒険者達が、自慢げに討伐内容を他の冒険者に自慢するのである。だから、夜の冒険者ギルドはかなり騒がしい。



 しかし、私たちが冒険者ギルドに、入るとお通夜のようにすごく静かである。


 冒険者の姿は見かけるが、みんな大人しくお酒を飲んでいる。そんな中、受付では2人男女が頭をかかえている。



 「ギルマス、なかなか人が集まりませんね」



 ギルマスとはギルドマスターの略で、冒険者ギルドで1番偉い人である。



 「そうだな。みんなビビってしまって、なかなか参加してくれなさそうだ」


 「どうしましょう。明日には領主様からの討伐隊が来るとおもいますが・・・」


 「この町からも、兵をだ出す予定だが、パースリの町を占拠しているとなると、ジャイアントゴブリン以外にも、強大な魔獣がいるはずだ。そうなると腕利きの冒険者が必要なる」


 「たしかに、そうですよね。しかし、この町には下級冒険者か、強くてもE級冒険者しかいないですよね。最低でもDランク冒険者がいてくれたらよかったのに」


 「あのーすいません」


 「Dランク以上の冒険者は、王都の町を拠点にしているから、領主様が王都へ応援を出してもらえるようにしているだろう」


 「あのーーすいません」


 「そういえば、ギルマス、確か暴食の冒険者が、この町で依頼をうけてキャベッジの村へ行ったではありませんか?」


 「あのーーお話し中すいませんが、大事な話しがあるのですが・・・」


 「悪いが、こちらは深刻な事態なんだ、明日にしてくれないか」


 「そうだったな。暴食のチームがいるな。キャベッジなら、パースリへはすぐに行けるはずだ。さっそく、明日にでも、暴食に討伐に参加してもらうように掛け合ってみよう」


 「あのー、暴食じゃなくて、ラスパなんですけど・・・」


 「明日にしてくれと言ってるのが、わからないのか。今は忙しいから、邪魔をするのなら出て行ってくれ」



 ギルマスは、かなり機嫌が悪いみたいである。



 「・・・ギ・・ル・・マス・・そちらの方は、暴食のリーダーです」


 「えーー!えーー!」



 


 

 

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