第338話 魔石国家ケルト王国編 パート8


 「目立つので、ここからはアバオシャには普通の馬のサイズになってもらうね」


 「はーーい」


 「わかりました。私は歩いて町へ向かいます」



 アバオシャを普通サイズに戻して、僕とフェニはアバオシャに乗って、レオは歩いて町へと向かった。ガリアの町の門に着くと身分証の確認を求められたが、『ホロスコープ星国』からの魔法の研修にきたとレオが伝えると、身分証の確認もしないで町の中へ入れてもらえた。そして、研修施設に行くように言われた。


 ガリアの町には、ハイレベルな魔石具を使いこなすための研修施設がある。そこで、『ケルト王国』の魔石具団の兵士たちの研修が行われている。そして、『ケルト王国』が魔法国家と勘違いした遠方の国の魔法を覚えたい男性達がガリアの町に訪れるのである。その勘違いした男達を研修施設に招待して、『ケルト王国』の兵士になることを条件にして、魔石具の使い方を教えている。



 「ここが研修施設です。受付を済ませてきます」



 レオが1人で研修施設に入って行く。


 研修施設は、大きな円形の闘技場のような施設であり、闘技場のような場所で魔石具の使い方を学ぶ。


 しばらくすると、レオが研修施設から出てきた。



 「予定より早く着いたので、私たちを担当してくる予定のダグザさんが不在です。なので、明日に来るように言われました」


 「リプロ様に魔法を学ぶから研修はキャンセルしたいですぅ」


 「僕はフェニと一緒に魔石具の研修を受けたいよ」


 「リプロ様が受けるのなら私も受けたいですぅ」



 僕は、自分の目で『ケルト王国』がどのように魔石具を使っているか確かめたいと思った。魔界でもブラカリの町への魔石具の販売と技術提供はしている。しかし、お父様の考えで一般生活の向上が目的の技術提供であり、軍事目的ではない。しかし、『ケルト王国』は明らかに軍事目的で魔石具の運用がされている。これが本当に天界からの技術投与ならば、協定に違反する行為である。



 「明日、また研修施設に伺うことにしましょう」


 「はーーい」



 フェニは元気よく返事をした。



 「キャンサーが泊まっている宿屋へ向かいましょう」


 「僕は少し町を見学してくるよ」



 僕は魔石具屋に行って、情報収集することにした。



 「私も一緒に行きたいですぅ」



 フェニは僕にべったりとくっ付いて離れようとしない。



 「わかりました。先に宿屋へ向かいます。あまり遅くならないようにしてください」


 「はーーーい」



 フェニは嬉しそうに返事をした。



 「リプロ様、これからどこへ行くのですか」



 フェニはニコニコしている。



 「魔石具屋に行こうと思ってるよ」


 「何か欲しい魔石具でもあるのですか?」


 「そうだね。病気が治る魔石具を探しているよ」


 「私も一緒に探してあげますぅ」


 「ありがとう。一緒に見つけようね」


 「はーーい」



 僕はフェニと一緒に魔石具屋へ向かった。しかし、町にある魔石具屋には生活用品の魔石具しか置いていなかった。



 「ここにもありませんでしたね」



 フェニが落胆した表情を浮かべた。


 僕たちは3件の魔石具屋を見たが、思ったより低レベルな生活用品の魔石具しか置いてなかったので、天界の介入の証拠もお姉ちゃんの難病を治す魔石も見つからなかった。




 「君たち、どんな魔石を探しているのかね?」



 フェニが店を出て落胆した表情で落ち込んでいるところに、1人の男性が声をかけてきた。男性は黒いマントを羽織って顔をフードで隠して、いかにも怪しそうな雰囲気のする男性であった。



 「病気が治る魔石具が欲しいのですぅ」



 フェニはか細い声で言った。



 「治癒魔石具ですか・・・予算はいくらあるのですか?」


 「えーーと、えーーと」



 フェニはアタフタしている。



 「いくら必要なのですか?」



 ここはフェニに任せるわけにはいかないので僕が答えることにした。



 「これくらいです」



 男はかなり額を請求してきた。



 「ギリギリ用意できる額だと思います」



 男が提示した金額のお金は十分持っている。ブラカリに定期的に魔石具を提供しているので、人界の共通のお金は持っているのである。


 男はニヤリと笑って、僕たちを自分の知り合いの店に案内すると言った。



 「わかりました。案内してください」


 「今から案内する魔石具屋は、一部の限られた者しか入ることができない闇市です。入場料も必要になるので、それでも構いませんか?」


 「わかりました」



 僕は『ケルト王国』の魔石具の実態が確認できると思って、喜んで返事をした。



 「着いてきてください」



 僕たちはフードの被った男性の後をついて行った。しばらくすると大きくて綺麗な家が並ぶ貴族が住む住宅街に着いた。



 「この屋敷が、医療を専門にした魔石具店です。まずは入場料をいただきます」



 僕は男性に入場料を渡した。男性は入場料と言っているが、僕が思うには紹介料であると思った。男性はお金を受け取ると嬉しそうに懐にしまったからである。


 僕は闇市と聞いたから、もっと汚らしい場所に案内されると思っていたが、僕がこれから入る魔石具屋は、豪邸のような建物であった。一般の人が見たらここが魔石具屋とは誰も思わないであろう。



 「すごい建物ですぅ。ここがお店なんて信じられないですぅ」



 フェニは建物を見て少し興奮している。



 「そうだね。立派なお屋敷ですね。でも、ここには治療の魔石具が置いてあるみたいなので楽しみです」


 「ここになら絶対にありそうですぅ」



 僕とフェニは立派なお屋敷の魔石具屋に入っていった。

 


 

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