第349話 魔石国家ケルト王国編 パート19


 リヴァイアサンが戻ってくるまで、僕は失神していた兵士の1人目覚めさして、状況を詳しく説明した。



 「これが、今この屋敷にある全財産です」



 兵士は、お店にある金庫からお金を持ってきた。



 「これは貰いすぎです。適正な額だけ貰います」



 僕はお金を盗みに来たわけではない。しかも人界のお金なんて貰ってもあまり嬉しくはないのである。



 「残りは私がもらうですぅ」



 フェニは、大金を目にして目がハートマークになっている。



 「フェニ、強奪はいけないよ!」


 「これは迷惑料ですぅ」



 確かにグリシャはそう言ってお金を騙し取ってきた。それなら、同じ事をされても文句は言えないはず。



 「そうだね。迷惑料だけもらってもいいかもね」


 「ポーラちゃんとアネモネさんへの慰謝料も必要ですぅ。それに村の人への迷惑料に、慰謝料に、バクちゃんの食事代に、私への労い料に・・・」



 フェニはあれこれと言い出して、結局グリシャノ屋敷にある全てのお金を収納ボックスにしまったのである。



 「ちゃんと村の人にも配るんだよ」


 「はーーい」



 フェニは元気に返事をした。



 「俺は、これからどうなるのですか?」



 兵士はビクビクと震えている。



 「君たちはグリシャの悪行に手を貸していたけど、この町ではそれは正当な行為となっているので、僕は何もしないよ。それにきちんとお金も返してもらったしね。でも、グリシャはもう帰っては来ないと思うよ。あとは君たちの好きにしたらいいよ」


 「助けてくれるのですか?」


 「無駄な殺生はしないよ。そうだ!教えて欲しいことがあるのだよ」


 「何でもお答えします」


 「白炎のオグマはどこに行けば会えるのかな?」


 「オグマ様は研修施設で新たな魔石具の試験をしている聞いています」


 「研修施設かぁ・・・」


 「リプロ様、今日は研修施設に行く日ですぅ」


 「そうだったね。ライさんのところへ戻ろうか」


 「はーーい」


 「私も着いていくわ」



 リヴァイアサンが戻ってきた。



 「そうだね。一緒に黒幕を退治しないとね」


 「そうよ。オグマも地底王国へ連れ行って裁きを受けさすわ」



 僕たちは、グリシャの魔石具屋を出て、レオとキャンサーが泊まっている宿屋へ戻った。



 「このことをオグマ様に知らせないと」


 「待て!」



 意識を取り戻した別の兵士が止めに入った。



 「余計なことはしない方が良いと思うぞ」


 「しかし、グリシャ様が誘拐されたのだぞ」


 「どこへ誘拐されたのだ?」


 「あの男の子の話だと地底国家らしい」


 「地底国家だと・・・そんな話を信じてもらえると思っているのか?俺は信じられない。グリシャ様がどこへ連れ去られたわからないが、俺たちの身の安全を確保するためにも、しばらくは様子を見た方がいいと思うぞ」


 「しかし、このままだとオグマ様に迷惑がかかるかもしれないぞ」


 「俺たちには関係のないことだ。それにオグマ様ならアイツらを倒してくれるかもしれない。だから、ここでおとなしくしていた方がいいと思うぜ。もし、オグマ様が倒される事になったら、変に動いた俺たちの命はないはずだ」


 「そうだな・・・余計な事はしない方がいいな」



 グリシャの屋敷の兵士たちは意識を取り戻したが、僕たちを見逃すことにしたのであった。




 「ライちゃん、ただいまですぅ」


 「フェニちゃん、おケガはありませんか?」



 レオはフェニの事を心配していた。



 「大丈夫ですぅ。それよりも魔石具の研修を受けてにいくのですぅ」


 「わかりました。今から研修施設に向かいましょう。フェニちゃん、そちらの美し女性は誰なのですか」



 レオは、リヴァイアサンを見て少し緊張しているみたいである。



 「初めまして、私は竜人族のリヴァイアサンと言います。私もフェニちゃんと一緒に研修施設にお伺いする予定ですわ」


 「わかりました。ご案内します」



 レオは、魅惑的なリヴァイアサンの姿をうっとりと眺めながら丁重に答えた。



 「嬉しいわ」



 リヴァイアサンは優しく微笑んだ。



 「リヴァイアサン様、私が研修施設まで運んであげます」



 レオは『ライオンモード』を発動してライオンに姿になって、リヴァイアサンを背中に乗せた。



 「僕たちは、アバオシャで行こうね」


 「はーーい」


 「私はお留守番をしています」



 キャンサーはおとなしく宿屋に残ることになった。



 「少し揺れますので、しっかりと掴まっていてください」


 「わかりましたわ」


 

 レオは、リヴァイアサンを乗せて研修施設へ向かった。僕たちもアバオシャに乗って後を追いかけた。レオは、リヴァイアサンに少しの揺れも感じさせないように、慎重に慎重に進んでいく。いつもなら豪快に進んで、研修施設にすぐに着くはずが全然前に進まないのである。



 「ライちゃん、遅いですぅ」



 レオの後ろを追いかけているアバオシャに乗っているフェニが愚痴りだす。



 「リプロ様、先に行くのですぅ」


 「それはやめておいた方がいいかもね。ライさんのペースに合わせてあげよう」


 「でも、いつもならもっと豪快に進んで早いのに・・・今日は遅すぎですぅ」


 「たまにはのんびりと進むのもいいことだよ」


 「わかったですぅ」



 フェニは渋々了承した。



 「リヴァイアサン様、振動はございませんか?」


 「大丈夫ですよ」


 「喉は乾いておりませんか。もし必要ならすぐに飲み物を用意します」


 「大丈夫ですよ」


 「お腹は減っていませんか。もし必要なら食堂に寄ります」


 「大丈夫ですよ」



 リヴァイアサンはレオの過度な心配に、微笑みながら対処するのであった。


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