第348話 魔石国家ケルト王国編 パート18


 「今、何か言ったか!」



 グリシャはフェニを睨みつけた。



 「お前なんか!リヴァちゃんにやられてしまえですぅー」



 フェニはグリシャを挑発するように口を尖らせて言った。



 「俺を倒すだと?笑わせるな!お前らは俺に触れることさえできないぞ」


 「あなたのような薄汚い男性を触れるなんて、こちらこそごめんだわ!」



 リヴァイアサンは手をかざして水球を放った。


 すると、天井から鉄格子が降りてきて、僕たちは鉄格子に閉じ込められた。そして、水球はグリシャの目の前で弾けてしまった。



 「ここは俺の屋敷だ。どんな客が来るかもしれないので、防衛の魔石具を設置しているのだ」


 「準備がいいのね」


 「俺は逆恨みをかうことがあるからな。だから用心はしているのだよ。俺を襲った事を後悔させてやる」



 『リワインド』



 僕は先程の時間を削って、鉄格子に閉じ込められていない状態にした。



 「なぜ?鉄格子がないのだ???」



 グリシャは困惑している。さっきまで僕たちは鉄格子に閉じ込められていたのに、今は鉄格子がないのである。



 「お前なんか!リヴァちゃんにやられてしまえですぅー」


 「リヴァイアサン、この部屋は攻撃などを感知したら天井から鉄格子が降りてきます。そしてグリシャは攻撃を無効にできる魔石具を持っています。でも、リヴァイアサンが手を抜かなければ問題はないと思います」



 先程のリヴァイアサンの水球は、レベルの低い水球であった。なので、魔石具の効果によって水球は弾けたのであった。



 「リプロ様、『リワインド』を使ったのですか?」



 フェニはすぐに気づいた。



 「そうだよ」


 「時が削られたなんて全然わからないですぅ」


 「恐ろしい能力ですね」



 リヴァイアサンは、フェニの言葉からある程度何が起こったのか察した。



 「お前ら!何をしたのだ。説明しろ!」



 グリシャは怯えながら大声で叫ぶが、悪党に教えることなど何もない。グリシャは手元にある非常ベルを鳴らした。屋敷内に大きな警報音がなり響いた。そして、それを聞いた屋敷内の兵士たちがすぐさま駆け込んできた。



 「グリシャ様、何があったのですか?」


 「わからん。しかし、おかしいのだ。おかしいのだ!」



 グリシャは、時が削らた事は気づいてないが、鉄格子がなくなったことはわかっている。なぜ急に消えたのかわからないが、何か異常自体であるとグリシャは察知したのであった。



 「おかしいと言われても・・・私たちはどうすればいいのですか?」


 「あいつらを拘束しろ!」



 グリシャは命令を出した。



 「私に任せてね」



  リヴァイアサンは両手をあげて、素早く両手を振り落とした。すると滝のように水が溢れ出て室内を水で覆い尽くしたのであった。しかし、僕とフェニは空気の玉に覆われて水中をぷかぷかと漂っているのであった。



 「すごいですぅ。海の中に潜っているみたいですぅ」



 フェニは嬉しそうにニコニコしているが、グリシャと兵士たちは水の中で息ができなくてもがき苦しんでいる。屋敷の中が水族館のように水で覆われているので、防御の魔石具も意味をなさないのである。しばらくするとグリシャたちはぐったりとして動かなくなった。


 リヴァイアサンは水を吸収して意識を失ったグリシャだけを担いだ。



 「死んだのですか?」



 フェニが声をかける。



 「死んではいませんよ。気を失っただけです」



 「グリシャをどうするのですか?」


 「グリシャも地底人の法で裁きますので地底国家に連れて行きます。グリシャにはきちんと罪は償ってもらいますわ」


 「他の兵士はどうしますか?」


 「悪事に関与はしていますが、首謀者だけを連れて行きますわ」


 「グリシャにお金を返してもらいたいので、回復させてもいいですか?」


 「そうね。勝手にお金を持っていくことはできないわね」


 

 リヴァイアサンは、グリシャを床に降ろした。



 僕は回復魔法をかけてグリシャの意識を取り戻させた。



 「水が・・・水が・・・」



 グリシャは動揺している。



 「もう水はありませんよ」



 「た・た・助けてくれ」



 グリシャは怯えて目をして僕にしがみついて来た。



 「ポーラさんから騙し取ったお金を返してもらいます」


 「お金ならいくらでもやる。だから命だけは助けてくれ!」



 グリシャは僕にしがみ付いて命乞いをする。



 「あなたが私とポーラさんから奪い取ったお金だけで結構です。それに、僕はあなたを助けることはできません」


 「お金ならいくらでも出す。レアな魔石具もあげようではないか?俺だけは助けてくれ」


 「あなたには、井戸を毒でおかした罪も償ってもらわないといけません。この国では、あなたを裁くこと出来ないでしょう。しかし、あなたが迷惑をかけたのはイベリアの村だけではありません。地中に住む地底人にも迷惑をかけたんです。きちんと罪を償ってください」


 「地底人・・・そんな者いるわけがない」


 「いるかどうかは、リヴァイアサンが教えてくれるでしょう」


 「そうよ。私が地底国家に連れて行ってあげるわ。イベリアの村の村長が先に待っているわ」


 「俺は悪くない。村長の頼みを聞いただけだ」


 「村長も同じような事を言っていたわ。どちらの意見が正しいか公平な法のもとで判断してもらうわ」


 「俺に何かすればオグマ様が黙っていないぞ!それでもいいのか?」


 「次はオグマを回収しますので、仲良く地底国家に行くといいわ」


 「助けてくれ・・・」


 「あなたは同じことを言われたら助けるのかしら?絶対にあなたは助けないでしょうね」



 リヴァイアサンはそう言うと、グリシャを魔法で眠らせた。



 「ちょっと、地底国家に行ってくるわ。すぐに戻るからここで待っててね」



 リヴァイアサンはドラゴンの姿になって、地面に潜って消えていった。


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