第281話 ホロスコープ星国 パート58
「ヴァンピー、緊急事態だ!」
血相を変えて、王都の門へプカプカと飛んできたアリエルは、ヴァンピーに助けを求める。
「アリエル、どうしたのかしら?」
「兵士どもが暴動を起こしている!俺が相手をしてもいいのだが、可愛い部下を殺すことはできない」
パンとリンゴジュースがもらえず、暴動を起こしている兵士の中には、アリエルの部下である黄騎士団の兵士もいる。
「兵士が暴動?どういうことなのかしら?」
私が、兵士たちの楽しみしているパンとリンゴジュースを全て盗んだことをヴァンピーは知っている。
「それが・・・朝食のパンとリンゴージュースが無くて、暴れ出したのだ!」
スコーピオが、予測した以上の事態になっているのであった。そして、ヴァンピーも暴動が起こるまでの大きな事態になるとは想定していなかったのであった。
「それは、大変だわ。すぐに私が抑えてくるわ」
ヴァンピーは焦っていた。私たちの計画では、兵士をヴァルゴの『魅惑』で魅了して、兵士たちを城から追い出してからジェミニを倒す予定であった。しかし、このままだと、兵士たちは怒りに身を任せて、ジェミニ王と戦う可能性も出てきたのであった。
ヴァンピーは、兵士たちが危険なことをする前に、みんなに状況を知らせて、兵士たちの怒りを止めないといけないと思ったのであった。
「俺もついて行こうか?」
アリエスは、本当は行きたくないが、プライドが高いので逃げたと思われたくないのである。
「私1人で大丈夫よ。アリエルは、ウルフキングが現れないか、王都の門を監視してちょうだい」
「わかった」
アリエルはホッとした。
「ヴァンピー、1人で大丈夫なの?」
シーシェとグェイが不安そうにしている。
「問題ないわ。兵士たちは、私の魅力にメロメロよ」
ヴァンピーは笑って言った。確かに城の兵士たちは、ヴァンピーの美しさにメロメロである。なので、アリエルはヴァンピーなら、兵士を鎮めることができると思って、助けを求めにきたのであった。
ヴァンピーは急いで、自分の屋敷に向かった。
「フェニちゃんが、余計なことをするから、作戦がおかしくなっているじゃないの」
ヴァンピーはプンプンに怒っているのであった。
ヴァンピーは、屋敷に着くと、真っ先に私を起こすのであった。
「フェニちゃん起きなさい」
「はーーい」
いつもはなかなか起きない私だが、今日の私はいつもと違うのであった。ヴァンピーが私を起こすと同時に返事をして起き上がったのであった。
「・・・」
いつもはライトシールドを張って、完全安眠体制をとる私が、さっと起きたので、ヴァンピーはびっくりしているのであった。
「パンの時間ですぅ〜」
私がすぐに起き上がったのは、ちゃんと理由があった。それは、今日は王都で1番おいしいパン屋さんに行くからである。私たちは、王都へ攻め込む前にパン屋さんに行く予定になっているのであった。
「フェニちゃん、パン屋さんには行かないわよ!」
ヴァンピーが大声で叫んだ。
「フェニちゃんが、シリウス城で兵士たちのパンとリンゴジュースを盗んだから、大変な騒ぎになっているのよ」
「パン屋さん、パン屋さん、私のパン屋さん・・・」
ヴァンピーの言葉は私の耳に入ってこない。それほど王都で1番おいしいパン屋さんに行かないと言われてショックを受けているのであった。
「ヴァンピー、フェニ王が混乱しているではないか!まずはパン屋さんに行くべきだろ」
ヴァンピーの大きい声で、レオが目を覚まして、私たちのいる部屋に現れた。
「レオ、ちょうどよかったわ。私の話を聞いてくれるかしら」
ヴァンピーは、私を救出した際の詳細を説明した。そして、そのせいで、兵士が食堂で暴れていることを伝えたのであった。
「そんなことになっているのか・・・それなら、すぐにヴァルゴを連れて、兵士どもを落ち着かせよう」
レオは、ヴァルゴの『魅惑』を使って、兵士たちをコントロールしようと思ったのであった。
「私もそう思っていたのよ。すぐにヴァルゴを起こしてくるわ」
ヴァンピーはヴァルゴの眠っている部屋に訪れた。
「ヴァルゴ、大変よ。すぐにシリウス城に向かうわよ」
「ちょっと待ってくれるかしら。いきなり私を起こして、すぐに出かけろなんて、無理に決まってるわ」
ヴァンピーに起こされたヴァルゴは、今すぐ出かける事に反対をしているのであった。
「緊急事態なのよ。今すぐ兵士たちの暴動を止めるのよ」
ヴァンピーは、ヴァルゴに事情を説明して、すぐにシリウス城に向かうようにお願いした。
「それは大変なことになっているみたいね・・・でも、すぐに行くことはできないのよ」
ヴァルゴは、シリウス城に、すぐに行けない事情があるのであった。
「なぜなの?」
ヴァンピーは、尋ねた。
「朝は、少し肌が荒れているし、顔も浮腫んでいるわ。それに、髪の手入れもあるし、色々と身だしなみの準備が必要なのよ」
ヴァルゴは真剣な目をして言った。
「そんなことどうでもいいわ。すぐに、兵士の暴動を鎮めるのよ」
ヴァンピーは呆れた顔をして言った。
「大事なことなのよ!!」
ヴァルゴは、大声で叫んだ。
「私の『魅惑』は、私の美貌で効果を最大限に発揮するのよ。今の私のポテンシャルでは、7割程度の能力しか発揮できなわ。私は常にベストを尽くしたいのよ。中途半端な美貌で『魅惑』を使いたくないのよ」
ヴァルゴはそう言うと、ヴァンピーを部屋から追い出して、肌の手入れを始めたのであった。
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