第412話 ボルの人界征服編 パート25



 「クラーケンさん、ポセイドン達をあのまま行かせてもよかったのですか?」


 「あらミカエルさん。あの2人を止めても無駄だと思いますわ。あまりにも人界のことを馬鹿にしすぎているのですもの」


 「そうですね。神は全ての頂点に君臨する存在なので致し方ありません。しかし、あの2人に何かあれば、いくら人界に関心を示さないウーラノス様でも、ルシスさんを倒しに行く可能性があると思います」


 「そうね。でも、ミカエルさんは、ルシスちゃんにウーラノスを倒してもらいたいのではありませんか?」


 「まさかこんなに神がすぐに人界に行くとは思ってはいなかったのです。私はルシスさんに人界を旅してもらって、人界の全てのことを見てたから、神に力を貸すのか?人界に力を貸すのか?それとも魔族として人界・天界を滅ぼすのか決断して欲しかったのです」


 「そうだったのね。ポセイドンが余計なことをするから予定が狂ってしまったのですね」


 「そういうことです。あの2人の実力ならルシスさんは、簡単に倒すことができるでしょう。しかし、神を倒したなると裏天界の神達が黙って見過ごすことはしません。そして裏天界の王であるウーラノス様が動くことになるでしょう」


 「おもしろそうではありませんか?」



 クラちゃんは目を輝かせて嬉しそうである。



 「クラーケンさん。いくらルシスさんでも全ての神を相手するのは不可能です。もう少し時間をかけて神たちの切り崩しをしたほうがいいのです」



 ミカエルは額から汗を流しながら必死に訴える。



 「それは、あなたの仕事でしょ!ルシスちゃんは人界に干渉する者を撃退するだけよ。3世界の未来を考えているのなら、あなた達も手を尽くさないといけないわ」


 「それはわかっています。何人かの神様はウーラノス様のやり方に不満を抱いている者もいます。今はそれの切り崩しの段階です。だから、まだまだ時間がいるのです」



 神たちも一枚岩ではない。なので、いろんな派閥があるので、反ウーラノスの神をミカエル様は手を尽くして味方にしようと尽力を尽くしているのである。



 「時間がないのならもっと頑張るしかないと思いますわ。私はポセイドンが美味しいパンを用意してくれるのを楽しみ待っているわ」



 クラちゃんにとって1番大事なのはもちろん食事である。



 「クラーケンさんも協力してくださいませんか?」


 「無理よ。神は傲慢で自分勝手な方が多いですわ。身分が格下である神獣の話など聞くことはないでしょう。それに、私は3世界がどうなろうとどうでもいいのよ。でもルシスちゃんには美味しい食べ物をことをたくさん教えてもらったので、その借りを返さないといけないわ。だから、私はルシスちゃんの選んだ未来に協力することにしているわ」



 私はクラちゃんの餌付けに成功しているみたいである。



 「わかりました。私達もルシスちゃんの選んだ未来を尊重するつもりです。その未来を守るためにも神達の切り崩しに頑張ります」





 一方、芸術的な体になったヘファイストスはポセイドンと一緒に天界城にいるウーラノスの面会の許しを乞うていた。


 天界城とは裏天界の王であるウーラノスためにダイヤモンドで作られた悪趣味なお城である。人界にある90%のダイヤモンドはこの天界城を作るために搾取された。お城は外観だけでなく床も柱も壁も天井も全てがダイヤモンドでできている。そのためこの城はダイヤ城とも呼ばれている。


 ダイヤ城にはウーラノスとウーラノスが強引に呼び寄せた女性の天使と数人の女性の神が住んでいる。


 ダイヤ城には女性以外は入ることが禁止されていて、ウーラノスに面会したい時は、城の庭にある平凡な集会場のような建物で面会するのである。



 「どのような御用件でしょうか?」



 金色の長い髪をした丸くかわいい羽が生えた美しい天使の女性が、ポセイドンを出迎えてくれた。



「ヘファイストスの体を見てくれ。ちょっとした手違いでこんなことになってしまったのだ!」



 ポセイドンは、口で説明するよりも見た方が早いと思い、ヘファイストスの体を見せる。



 「これは・・・ひどい有り様ですね。何をしたらこのようなことになるのですか?」


 「説明をすると長くなる。理由は後できちんと説明するので、ウーラノス様に治してもらいたいのです」


 「わかりました。すぐに確認してきます」



 天使は、羽をバタつかせて空を飛び、入り口の門を使わずに空からダイヤ城の最上階を目指した。


 しばらくすると、地鳴りがするほどの大きな笑い声がダイヤ城の最上階から聞こえてきた。そして、笑い声が止まったと思った瞬間にポセイドンの前にウーラノスが姿を現した。



 「ほほう!これはなかなかの良い作品ではないか」



 ウーラノスは全身の震えを無理矢理に抑え込んで、今にも笑いたい気持ちを全力で抑えるのである。



 「ウーラノス様、お願いします。ヘファイストスの体を元に戻してください」



 ポセイドンは両手をつき頭を地面に擦り付けてお願いをする。ヘファイストスがこのような体になったのは、ポセイドンが上手にヘファイストスの体を貼り付けることが出来んかったのが原因であるので、ポセイドンは責任を感じている。



 「ヘファイストス!いい体を手に入れたではないか。この姿なら合コンではモテモテだぞ」



 ウーラノスは、ヘファイストスの肩を叩きながらニヤけた顔で言う。



 「本当ですか?この体・・・そんないイケてますか?」



 ヘファイストスは、少し嬉しそうに微笑みながら答えた。



 「もちろんだ!絶対に合コンでは注目の的になるはずだ。今から合コンの予定があるがお前も来るか?」


 「もちろんです。やっと私にもモテ期が来たのですね!」


 「そうだとも!今日の合コンの主役をお前に決定だ」


 「やっと俺の時代がきたぞーーー」



 ヘファイストスは大きく手をあげて空に向かって叫んだ。




 「ヘファイストス・・・騙されているぞ」



 ポセイドンの心配する声は、盛り上がっている2人の熱気にかき消されるのであった。


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